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2023年03月30日14:00

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「冬を待つ城」

 「冬を待つ城」(安部龍太郎著 新潮社 2014年10月20日発行)を読みました。

 本書の内容は、豊臣秀吉が、小田原城を落城させた後、奧州仕置きのために奧州に大軍を差し向けるわけですが、それに反対する九戸政実(くのへまさざね)が、わずか3,500程の軍勢で陸奥九戸城に立てこもり、天下の軍勢15万を手玉に取ったという物語です。

 もちろん、九戸政実としても、わずか3,500程の軍勢で15万もの軍勢に勝てるとは思っていなかったわけですけれども、今回の奧州仕置きの真の目的が奧州からの人狩り(人足の徴収)であることを知り、それだけは何としても阻止したいとの思いで、敢えて謀反人となり、天下の大軍に立ち向かったわけです。

 九戸政実としては、奧州から人足を徴収されては、田畑を耕す人々がいなくなり、奧州の地はますます疲弊し、奧州は疲弊のどん底に突き落とされると真剣に憂えたわけですね。

 豊臣秀吉は、近く朝鮮出兵を考えていたわけで、その段取りをしていた石田三成としては、冬の朝鮮半島の地は寒さが厳しいことを知っていたものですから、寒さに慣れている奧州の人足を確保する必要があると考えたわけです。また、寒さ厳しい奧州の地で戦闘を行わせ、冬の朝鮮半島での軍事演習にしようとも考えたわけですね。

 ただ、九戸政実は、最初から、この戦いに勝つとは思っていませんから、何時かの時点で和平交渉に持ち込み、奧州からの人狩りだけは思いとどまらせたいとの思いで臨んでいたわけです。

 冬になれば、補給路を断たれてしまえば、大軍でも全滅しかねないわけで、その頃合いに和平交渉を提案しようと考えたわけですね。

 その作戦を着々と準備し、大軍の進行を遅らせるための妨害工作等を行い、ひたすら冬の到来を待ちます。

 天下の大軍は、とうとうその作戦に引っ掛かり、初冬になってやっと九戸城攻略の布陣を敷くことが出来ましたが、また、補給路を断たれていることも自覚しました。このまま九戸城攻略を続ければ、全軍が全滅しかねないことも悟ったわけですね。

 そこで、九戸政実は和平交渉を提案し、天下の大軍はそれに同意します。和平の条件は、首謀者の打ち首と籠城した将兵300人の首の差し出しでした。

 九戸政実としても、将兵300人の首の差し出しの提案には困りましたが、それは、これまでず〜と九戸政実に反感を募らせてきて、今回も大軍の一角に布陣してる津軽為信の軍勢を騙して城に引き入れて討ち取り、それを代わりに差し出すという方法で乗り切ることとしました。

 見事、騙し討ちは成功し、籠城将兵300人の首の代わりに、討ち取った津軽の将兵300人の首を差し出しました。大軍側も、薄々は、替え玉であることは知っていたようですが、黙認したようです。

 ということで、奧州からの人足の徴収は無くなり、九戸政実の打ち首など、少ない被害で済んだということです。






 
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