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2023年01月04日23:15

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菌類が世界を救う ; キノコ・カビ・酵母たちの驚異の能力 マーリン・シェルドレイク 河出書房新社 2022年01月22日

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p.158
「樹木と庭を愛する……小さな君に」とエルフのガラドリエルがホビットのサムワイズ・ギャムジーに言った。「小さな贈り物を持ってきた……この箱には私の果樹園の土が入っている……これを取っておいてくれたら、いつか君がやっと故郷に戻ったときにきっと役に立つ。不毛でゴミだらけの土地でもこの土を撒けば、君の庭では中つ国のどんな庭よりも花々が咲き乱れるだろう」
p.159
サムワイズ・ギャムジーは、とても美しい場所、愛する木々が倒された場所に苗木を植え、どの苗木の根の周りにもガラドリエルからもらった貴重な土の一粒を撒いた……冬のあいだ、彼はできるだけじっと我慢し、何か起きていないかしょっちゅう見に行かないようにした。春になると想像もしなかったようなことが起きた。種は芽吹いて成長した。まるで時を惜しむかのように、一年で二〇年分育った。
p.160
リンを与えられると、植物はどんどん成長する。…こうして多くの植物が生き、多くの植物が死に、多くの炭素が土壌と堆積物に蓄積される。より多くの炭素が蓄積されると、大気中の二酸化炭素が減る。
…菌根菌は酸と機械的な力によって硬い岩石に穴を穿つ。彼らのおかげで、デヴォン紀の植物はカルシウムやシリカのような鉱物も得ることができた。岩石から抽出されたこれらの鉱物は二酸化炭素と反応し、大気中の二酸化炭素レベルを下げる。こうして得られた化合物――炭酸塩とケイ酸塩――は海に流れていき、それを使って海洋生物が貝殻をつくる。
p.162
菌根菌は植物が必要とする窒素の八〇%、リンにいたっては一〇〇%を与えることができる。菌類は、その他にも亜鉛や銅など重要な栄養を植物に提供する。…お返しに、植物は大気中から得た炭素の最高で三〇%を菌類パートナーに与える。
p.167
菌類は――その動的な微小管「モーター」を使って――リンが足りず代価が高い部分に活発にリンを輸送した。これによって、菌類はより多いリンを有利な為替レートで植物に供給した。その結果、より多くの炭素をもらい受けた(27)。
p.171
ローレンタイド氷床が退行すると、より早く移動した樹木種はもっとも乱婚で、新天地で相性のいい菌類に出あう可能性の高い種だった(33)。
p.172
 つまり、菌類がどの植物がどこで育つかを決めているのだ。…ヒロハケンチャヤシはある菌類と共生したために、アルカリ性のチョーク土壌で生きていけるようになったのだ。しかし、この能力を獲得したのと引き換えに、祖先が生えていた火山性土壌では生きていけなくなった。
p.176
菌糸体は土壌をまとめる粘り気のある生きた継ぎ目だ。菌類を除去すると、土壌は洗い流されてしまう。菌根菌は土壌が吸収する水分を増やし、雨によって土から流れ出る養分を五〇%ほども減少させる。土壌に含まれる二酸化炭素――驚いたことに植物と大気中の量を合わせたよりも多い――のうち、かなりの部分が菌根菌がつくり出す硬い有機化合物に閉じ込められる。
p.189
 ギンリョウソウモドキは「菌従属栄養植物(mycoheterotroph)」として知られる。「myco」は栄養を菌類に依存していることを、「heterotoroph」(「hetero」は「他の」、「troph」は「受容体」を意味する)は太陽光から自分でエネルギーを得るのではなく、どこか別の供給源から得ることを示す。
p.215
セルロース――木材であるか否かにかかわらず、あらゆる植物細胞に含まれる――は、その一成分であり、地球上でもっとも多量に存在する鎖状高分子だ。リグニンがもう一つの成分で、地球上で二番目に多量に存在する。…セルロースがグルコースの連なった直鎖状構造を持つのに対して、リグニンは基本骨格が不定形に酸化重合した樹枝状構造を有する(4)。
…たいていの酵素――生きた生物が化学反応を起こすときに使う生物学的触媒――は、特定の形の分子に結合する。リグニンに対しては、この方法は仕えない。リグニンの化学構造があまりに不規則だからだ。この問題を解決するため、白色腐朽菌は基質特異性の低い酵素ペルオキシダーゼを使う。この酵素はきわめて反応性の高い分子(フリーラジカルまたは遊離基として知られる)を続々と放出する。
p.216
フリーラジカルを放出する能力にちなんで、白色腐朽菌がつくるペルオキシダーゼは「ラディカル化学(radical chemistry)」として知られる仕事をする。「ラディカル」〔ラディカルには「急進的」、(化学の)「基」などの意味がある〕はまさに言い得て妙だ。…今日、菌類による分解――その多くは木材の分解――が最大の炭素放出源の一つであり、一年につき約八五ギガトンの炭素を大気中に放出している。二〇一八年に人間が化石燃料を燃やして排出した炭素は、約一〇ギガトンだった(5)。
…人間の産業革命は菌類による分解を経ていない植物体によって可能になったのだ(機会さえあれば、多くの菌類種は石炭を容易に分解する。「ケロシン菌類」として知られる種は航空機の燃料タンクの中で生きられる)。
p.219
「radical」という語はラテン語で「根」を意味するradixに由来する。字義通りに解釈すれば、ラディカル菌類学の関心事は菌類の菌糸体あるいは「草の根」にある(12)。
p.220
放射性栄養菌――放射性粒子が放出するエネルギーを食べる菌類――は、廃墟となったチェルノブイリ発電所で繁栄し、「菌類とヒトの長きにわたる核のプロジェクト」の最新の主役となった。
p.221
マッコイは段階的に他の食物を減らすことでヒラタケ属菌を煙草の吸殻に慣らしていった。しばらくして、ヒラタケは煙草の吸殻のみを食べることを「学習」した。
p.222
「その菌株が除草剤を分解できるようになるには一週間かかりました」とマッコイは語った。
p.224
その化学物質――メチルホスホン酸ジメチル(DMMP)――はVXガスの致死性成分の一つだった。…六か月後、それらの菌類のうち二種がDMMPを主要な栄養源として摂取することを「学習した」。カワラタケ属(Trametes)とシビレタケ属(Psilocybe)の菌だった。
p.225
菌類による濾過マイコフィルトレーションは、大腸菌など感染症の病原体を除去し、重金属をスポンジのように吸収する。
p.231
たいていのシロアリと同じく木材を食べるが、じつは木材を消化することはできず、オオシロアリタケ属(Termitomyces)の白色腐朽菌を育てて、自分の代わりに木材を消化してもらう。オオキノコシロアリは木材を噛んでねばねばした状態にし、ハチのハニカム構造のような「菌類ハニカム構造」に吐き出す。オオシロアリタケはラディカル化学によってねばねばの木材を分解する。そこでオオキノコシロアリが菌類の分解産物を食べるのだ。
p.267
 ニュートンのリンゴの逸話が信ずるに足るものでないのは、ニュートン自身がそのような記録を残していないからだ。それでも、ニュートンの同時代人が残した話がいくつかある。いちばん詳細なのがウィリアム・ステュークリの手になるものだ。彼は当時、先史時代の遺跡研究に熱心だった王立協会の若きフェローで、現在はイギリスのストーンヘンジの研究でもっともよく知られる。
原註
p.7
(9) ハキリアリはこれらの菌類に食べ物と巣だけでなく薬も与える。ハキリアリは菌類を単一栽培し、1種の菌しか育てない。したがってヒトの単一栽培に似て、菌類は弱い状態に置かれる。とりわけ脅威となるのは特殊な寄生性菌類で、この寄生性菌類はハキリアリが育てている菌類を殺してしまう恐れがある。ハキリアリは表皮内の精巧な空間で細菌を飼い、特殊な分泌器官からの分泌物を与えている。個々の巣では固有の細菌株を育て、たとえ近縁株があってもそれとは区別される。これらの細菌が抗生物質を産生し、寄生性菌類を強力に抑制するとともに栽培菌の成長を促進する。この細菌がいなければ、ハキリアリとそのコロニーはそれほど大規模に繁殖できない。Currie et al.(1999), Currie et al.(2006)およびZhang et al.(2007)を参照のこと。
(10) ローマ神ロービーグスについてはMoney(2007), ch. 6およびKavaler(1967), ch. 1を、菌類のスーパーバグについてはFisher et al.(2012 and 2018), Casadevall et al.(2019)およびEngelthaler et al.(2019)を、両生類の菌類による病気についてはYong(2019)を、バナナの病気についてはMaxman(2019)を参照のこと。動物では、菌類より細菌による病気の方が脅威となる。これに対して植物では、細菌より菌類による病気の方が脅威だ。このパターンは病気にかかっているときにも健康なときにも見られる。動物のマイクロバイオームはおもに細菌から成るが、植物のマイクロバイオームはおもに菌類から成る。とはいえ、動物が菌類による病気にまったくかからないわけではない。Casadevall(2012)は、恐竜を全滅させた絶滅イベント――白亜紀‐古第三紀(K-T)境界における絶滅――後の哺乳類の繁栄と爬虫類の衰退は哺乳類が菌類による病気に対する抵抗力を持っていたことに起因するという仮説を立てている。爬虫類に比べれば、哺乳類にはいくつかの弱点がある。温血動物であることはエネルギー面から見れば代償を伴い、授乳や熱心な子育てが必要となれば代償はさらに大きくなる。ところが、支配的な陸生動物として温血動物が爬虫類に取って代わることができたのは、まさに哺乳類の体温が高かったおかげかもしれないのだ。高い体温が病原性菌類の繁殖を抑制したのである。病原性を持つ菌類は、K-T境界に樹木が大量に死滅してできた「地球規模の堆肥の山」のおかげで繁殖したと考えられている。今日に至るまで、哺乳類は爬虫類や両生類より一般的な菌類による病気に対する抵抗力が高い。
p.9
(18) リンネが体系化し、1735年に著書『自然の体系』で発表した生物分類の枠組みは、今日でもその改良版が使用されていて、生物のヒエラルキーを人類にも広げた。ヒトの最高位は「きわめて賢く、独創的で、全身を衣服で覆い、法を重んじる」ヨーロッパ人だった。次点は「習慣を重んじる」アメリカ人で、その次は「意見を重んじる」アジア人だ。最後に来るのが「ものぐさで……ずるく、鈍重で、不注意で、脂ぎって、むら気な」アフリカ人とされた(Kendi[2017])。異なる人種を階層的に分類するこの体系は人種差別と言えよう。
p.10
じつは、イネ苗立枯病菌が使う主要な毒素はその菌糸内に暮らす内生菌によって分泌される。…実験的にイネ苗立枯病菌内の細菌を「駆除する」と、イネ苗立枯病菌は胞子をつくれなくなる。
p.12
(18) トリュフの生殖についての詳細はSelosse et al.(2017), Rubini et al.(2007)およびTaschen et al.(2016)を、動物の世界における間性〔雌雄あるいは男女の中間の形質を示す個体〕についてはRoughgarden(2013)を参照のこと。トリュフ栽培家が栽培に成功するためには、トリュフの生殖について知る必要がある。問題は彼らがその知識を持っていないことにある。トリュフ菌の生殖行為は観察されたことがない。すぐ近くで見られるような生態ではないのだから、それは驚くまでもないだろう。それより不思議なのは、誰も父親役の菌糸を見たためしがないことだ。研究者は懸命に探してはいるが、「プラス」あるいは「マイナス」のどちらにしても木の根や土壌中で成長している母親役の菌糸しか発見できていない。父親役のトリュフ菌は短命で交配後に消えてしまうらしい。「誕生、セックス、あとは無」なのだ(Dance[2018])。
p.14
(6) 菌類の菌糸は、(たいていは)明確な境界がある動植物の細胞とは異なる。事実、厳密に言えば、菌糸は細胞と呼ぶべきではない。
p.15
多くの菌類は「隔壁」と呼ばれる境界を持ち、これらの境界は開閉させることができる。開いているときには、菌糸内の物質は「細胞」間で流れるので、菌糸体ネットワークは「超細胞」状態に置かれる(Read[2018])。菌糸体ネットワークは多くの同様のネットワークと融合して成長「群」を形成する。この群れの中では、あるネットワーク内の物質は他のネットワークと共有される。では一つの細胞はどこで始まり、どこで終わるのだろうか。これらの問いには答えのないことが多い。群れにかんする最近の研究については、Bain and Bartolo(2019)およびOuellette(2019)の評論を参照のこと。この研究は群れを、局所的な法則に従って振る舞う個々の動因の集合体ではなく一つの実体として扱っている。群れを流体の流れのパターンとして扱うことで、その挙動を効果的にモデル化することができるが。群モデルを使うのではなく、局所的な相互作用にもとづいてこのトップダウンの「流体力学」モデルを用いれば菌糸端の成長をモデル化できる可能性がある。

(15) イネ苗立枯病菌がかける圧力についてはHowqrd et al.(1991)を、8トンのスクールバスという数字および病原性の菌類の聖鳥にかんする概論についてはMoney(2004a)を参照のこと。これほどの高圧をかけるには、植物に侵入した菌糸はしっかりとその表面にへばりついて剝がれ落ちるのを防がなくてはならない。
p.16
このためにこれらの菌類は10メガパスカルを超える圧力に耐える接着剤を生成する。このスーパーグルー(強力接着剤)は15〜25メガパスカルの圧力に耐えられるが、植物の葉は表面が臘質(ろうしつ)なのでおそらくその力は発揮できないだろう(Roper and Seminara[2017])。
p.18
(30) 一部の研究者によれば、菌糸は突然の収縮やねじれによって情報を送るのかもしれないという。しかし、こうした振る舞いは継続して利用するには一貫性に欠ける。McKerracher and Heath(1986a and 1986b), Jackson and Heath(1992)およびReynaga-Pena and Bartnicki-Garcia(2005)を参照のこと。情報は流れのパターンを変えることによってネットワーク内で伝達できると考える人もいる。たとえば流れの方法を一定のリズムに合わせて変えるのだという(Schmieder et al.[2019]およびOrper and Dressaire[2019])。これは有望な提起であり、菌糸体ネットワークを一種の「液体コンピュータ」と見なすのに役立つかもしれない。
p.19
液体コンピュータの多くの形態が実際に構築され、戦闘機から原子炉制御システムにまで実装されている(Adamatzky[2019])。しかし、菌糸内の物質の流れは多くの現象を説明するには遅すぎる。菌糸体ネットワーク全体に達する代謝活動の規則的なパルスは、ネットワークの振る舞いを協調させる可能性を秘めているが、やはり多くの現象を説明するには遅すぎる(Tlalka et al.[2003 and 2007], Fricker et al.[2007a and 2007bおよび2008])。ネットワークを形成するモデル生物はパズルを解く粘菌である。粘菌は菌類ではないものの、大きな面積に成長し形状を変えられる身体を持つため、菌糸を形成する菌類が直面する困難や機会について考える有用なモデルとなる。また菌類の菌糸体より成長が速く研究がはかどる。粘菌は自身の異なる部分間で定期的なパルスを使ってコミュニケーションを図っている。このパルスは収縮が海の波のようにネットワークの分枝を通過することで伝達される。食物を発見した分枝は信号分子をつくって収縮の強度を増幅させる。強い収縮が起きると、より多くの細胞材料がネットワークのその分枝に沿って流れる。ある収縮に呼応して、長い経路より短い経路により多くの物質が流れる。経路に多くの物質が流れると、その経路はさらに補強される。それは生物がさほど「成功しなかった」経路より「成功した」経路に細胞材料を再度流すことを可能にするフィードバックループなのである。ネットワークの異なる部分からのパルスは互いに組み合わさり、互いに干渉し、互いを増幅する。このようにして特別な制御部分がなくとも、粘菌は種々の分枝からの情報を統合して複雑な経路問題を解決することができるのだ(Zhu et al.[2013], Alim et al.[2017]およびAlim[2018])。
p.19
(31) ある研究者が1980年代なかばにこう述べている。「菌類の電気生物学〔電気生理学とほぼ同義〕は今日の生物学の主流が到達するところまでしか発展しないだろう」(Harold et al.[1985])。ところがその後、菌類は電気刺激に対して驚異的とも言える反応を示した。菌糸体に電流を流すとキノコの収量がかなり上がるのだ(Takaki et al.[2014])。貴重なマツタケ――これまで栽培に成功していない菌類種――の収量を宿主周辺の土に50ボルトの電気パルスをかけることで2倍近くに増やすことができるという。研究者らはマツタケ狩りに行った人の話を聞いて実験をしたという。これらの人びとによると、落雷のあった場所に数日後行ってみたらマツタケが豊作だったというのだった(Islam and Ohga[2012])。植物の活動電位についてはBruner and arendt(2015)を、菌類の活動電位にかんする初期の報告についてはSlayman et al.(1976)を、菌類の電気生理学全般についてはGow and Morris(2009)を、「ケーブルバクテリア」についてはPfeffer et al.(2012)を、細菌における活動電位様の波動についてはPrindle et al(2015), Liu et al.2017), Martinez-Corral et al.(2019)およびPopkin (2017)の要約を参照のこと。
(32) オルソンは、刺激と反応の時間差を調べることで伝搬速度を測定した。この測定速度は菌類が刺激を感知する時間、刺激がA点からB点に移動する時間、反応が微小電極に検知される時間を含む。実際のインパルスの移動速度はこの推定値よりかなり速いはずだ。菌類の菌糸体で測定された大きな流れの最高速度は毎時約180ミリメートルだった(Whiteside et al.[2019])。オルソンが測った活動電位は毎時約1800ミリメートルで伝搬した。
p.21
(6) Sapp(1994), ch. 1.「センセーショナルなロマンス」についてはAinsworth(1976), ch. 4を参照のこと。ビアトリクス・ポターの一部の伝記では、ポターは二種複合体説に賛同しているとされているが、彼女が人性のどこかの時点で意見を変えた可能性がある。それでお1897年に田舎の郵便配達人でアマチュアの博物学研究家チャールズ・マッキントッシュ(Charles MacIntosh)に宛てた手紙で、彼女はこの問題に明確な立場を取っているようだ。「おわかりでしょう、私たちはシュヴェンデナーの仮説なんて信じません。古い本には、地衣類は葉片種になり、やがてゼニゴケになると書いてあります。私は大きくて平べったい地衣類の一種の胞子と真正ゼニゴケの胞子を発芽させ、2種の発芽状態を比較したいと強く思っています。名前はなんでもいいのです。乾燥すれば同じになるでしょうから。季節が変わって地衣類とゼニゴケの胞子をもっと私のために入手してくださるなら、とても嬉しく思います」(Kroken[2007])
…フランクは当初「symbiotismus」(字義通りの意味は共生主義〔symbiote+ism〕)という語を使用した。
p.22
(17) 細菌のDNAは哺乳類のゲノムで見つかっている(概論についてはYong[2016], ch.8を参照のこと)。細菌と菌類のDNAは植物や藻類のゲノムに見ることができる(Pennisi[2019a])。菌類のDNAは地衣類を形成する藻類で観察される(Beck et al.[2015])。遺伝子の水平伝播は菌類で頻繁に見られる(Gluck-Thaler and Slot[2015], Richards et al.[2011]およびMilner et al.[2019])。ヒトゲノムの少なくとも8%はウイルス由来である(Horie et al.[2010])。


(21) 18キログレイのガンマ線を照射しても、キルキナリア・ギロサの試料は光合成が70%減少したのみだった。24キログレイでは、95%減少したものの、完璧になくなることはなかった(Meeben et al.[2017])。これらの結果を総合すると、これまでに調べられた生物の中でもっとも高い放射線耐性を持つのは、深海の熱水噴出孔から分離されたテルモコックス・ガンマトレランス(Thermococcus gammatolerans)というそのものずばりの名称〔gammatoleransは「ガンマ線に耐える」という意〕の藻類で、30キログレイまでのガンマ線照射に耐えることができる(joliver et al.[2003])。
p.28
中央アジアでは、ガガイモ科の蔓植物ソーマの樹液からつくった聖酒「ソーマ」を使う例が見られる。ソーマは人を恍惚の状態に導き、ソーマに捧げる賛美歌が紀元前約1500年の正典リグ・ヴェーダに載っている。…
…樹液を吸って生きる多くの昆虫の例に漏れず、セミは共生細菌によって数種の不可欠な栄養素とビタミンをつくってもらっていて、これらの細菌がいなくては生きられない。しかし日本のセミの数種では、オフィオコルディケプス属菌が細菌にとって代わった。…しかも、それはセミの異なる系統で少なくとも3度も起きている。…
…機能する神経系が発達する前に若いマウスの腸内細菌を殺してしまうと、認知障害が起きる。障害には記憶や物の認識の困難などがある(de la Fuente-Nunez et al.[2017])。…「小心者」のマウス個体に「正常な」マウス個体の糞を移植すると、神経質な性格が消える。同じように、「正常な」マウス個体に「小心者」のマウス個体の糞を移植すると、マウスは「異常なほどの慎重さと逡巡」の行動を見せるようになる(Bruce-Keller et al.[2018])。
p.29
またマウスの腸内細菌の相違によって痛みの記憶をなくす能力に違いが出るという(Pennisi[2019b]およびChu et al.[2019])。多くの腸内細菌が神経系に影響を与える化学物質(神経伝達物質や短鎖脂肪酸(SCFAs)など)を産生する。私たちの体内のタンパク質の90%以上――分泌量が多ければ幸福感を抱き、少なければ落ち込む――が腸内に分泌され、その分泌の調整はおもに腸内細菌がしている(Yano et al. 2015)。


“きのこ”の驚異に迫るドキュメンタリー『素晴らしき、きのこの世界』Blu-ray&DVD3月25日発売
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=25&from=diary&id=6866438

ドキュメンタリー映画『素晴らしき、きのこの世界』のBlu-ray&DVDが3月25日(金)よりディスク・オンデマンド・サービスによるAmazon限定で発売されることが決定。3月4日(金)より予約が開始される。




本作は、ナショナルジオグラフィックやディズニーネイチャーのドキュメンタリー作品を手掛け、“タイムラプス映像のパイオニア”と呼ばれる映像作家ルイ・シュワルツバーグが、きのこ・菌類の秘めたる力に迫ったドキュメンタリー。きのこ好きだというアカデミー賞俳優ブリー・ラーソンがナレーションを務めている。

本国アメリカでは20週にわたる超ロングラン上映が行われるほどの大ヒットとなり、映画批評サイトRotten Tomatoesでも100%を獲得するなど高評価を受けた。日本でも全国の熱烈な「きのこファン」はもちろん、「きのこ」という不思議な題材に惹かれ劇場に足を運んだ人たちから熱い支持を得た。

きのこへの見方が変わるかもしれない、きのこ好きなら手元に置いておきたい驚異のドキュメンタリーだ。

『素晴らしき、きのこの世界』Blu-ray&DVDは3月25日(金)より発売。


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