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2023年01月04日15:33

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声劇台本を作成しました!「破岸一笑(はがんいっしょう)。」C

「破岸一笑」C





※ 声劇台本です。金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※

※1 今作自体は小説という体裁で作られていますが、
声劇台本である「二方美人(にほうびじん)。」シリーズのその後を描くスピンオフ作品です。
そちらを知らなくとも当小説単独でもお楽しみいただけますが、 同シリーズ作や派生作品も読んでいただければとても幸いです。

(以下リンク)

「二方美人。」(1:4)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1958862956&owner_id=24167653

「二方美人。」シリーズ及び関連作品のみのまとめ
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964303733&owner_id=24167653

※2 当作品及び今後制作予定のスピンオフ作品群について、世界観や登場人物の説明まとめ(適宜追加予定)。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984088366&owner_id=24167653




小説「破岸一笑(はがんいっしょう)。」A前編
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984088391&owner_id=24167653

小説「破岸一笑(はがんいっしょう)。」A後編
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984088413&owner_id=24167653

声劇台本「破岸一笑(はがんいっしょう)。」B
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984088444&owner_id=24167653





登場人物

遊語 氷夊(ゆうご ひすい):女性。二方美人シリーズ登場人物の雪那(せつな)と緋鳥(ひとり)の間の子。与永4年生まれ。高校二年生。中学時代のある出来事がきっかけで、笑う事ができなくなってしまった。

遙千 紫雨(ようせん しう):男性。与永4年生まれ。高校二年生。物心ついた時から父親と二人暮らしで、小学五年生の頃から家事全般を任されている。氷夊に対して強い憧れを持つ。

※3 台詞部分の下に()でくくった説明文が書かれている箇所がいくつかありますが、そこは声に出して読まない事を想定しています。



想定時間

15分程度







本編



氷夊「おはよう、早いね。」
(チェーンロックの隙間から顔を覗かせる)

紫雨「早すぎたかな……。」

氷夊「良いよ、早い分にはむしろ助かる。道に迷わなかった?」

紫雨「この辺りっていうのは分かってたし、結構すぐ分かったよ。」

氷夊「良かった。まあ上がってよ。」
(ドアを開け、家に招き入れる)

紫雨「お邪魔、します……。」
(おずおずと入り、靴を脱ぐ)

氷夊「こっち。」
(自分の部屋に案内する)

紫雨「うん……。」

氷夊「私の部屋、ここ。座ってて。すぐお茶淹れてくるから。」

紫雨「自分でや……ありがとう。」

氷夊「うん。」

紫雨「……。」
(テーブルの前に座るも、所在なげな様子)



氷夊「お待たせ、どうぞ。」

紫雨「ありがとう。」

氷夊「うん。」
(座る)

紫雨「……氷夊さん。」

氷夊「どうしたの。」

紫雨「ごめんなさい。……俺、もっとちゃんとするよ。氷夊さんの事、ちゃんとまっすぐ見ていたいし、俺自身、俺がこんななのは嫌だ。」

氷夊「……ふーっ……。」
(呆れつつ、目を閉じ何を言ったら良いかと考える)

氷夊「……あのね、紫雨君。」

紫雨「……うん。」

氷夊「確かにね。確かにそれはそう。私だって、出て行ったお母さんの代わりにされるなんて嫌だよ。それは当たり前。」

紫雨「分かってる…。」

氷夊「君が分かってるのも私は分かってる。自分が抱きたい気持ちとまた別に、どうしても生まれてきてしまう気持ちとがあるんだよね。」

紫雨「うん。……でも、それはちゃんと自分の中で折り合いつけないといけない事で、その悩みを表に出して氷夊さんに嫌な思いさせたらいけなかったのに。ごめん、本当に。」
(あまり自罰的な言い方が過ぎるとそれはそれで自己演出に走っている(この場合は悲劇に酔っている)ようになってしまうと思い、言い方に気を付けて言葉を探しながら)

氷夊「…………あのね。君ってさ、私もお父さんもお母さんだった人も、みんな君に対してすっごく甘えてるって事、分かってる?」
(どこまで根本的なところから話したものか、と考えながら、呆れた気持ちを表に出さないよう、一つ一つ諭すように)

紫雨「甘えてる……?氷夊さんはともかく、父親と母親については言いたい事は分かるというか、どの事言ってるのかは多分分かるよ。」

氷夊「分かってるなら良い。お父さんも、お金だけ入れてれば良いってわけじゃないの。もしかしたら子供との接し方が分からなくなったかもしれないけど、だからって分からない分からないって、それで何年も関係を放置して良い訳が無い。それ以上に私が今思う一番の問題は、それはお母さんもだけど、なんで紫雨君にも大いに関係のある話なのに再婚だの離婚だのって事を何一つ先に教えてくれないで、全部事後報告なの。どう考えてもおかしい。本当に最低な甘え方してる。」

紫雨「そうだね……。」
(力なく、少しの気まずさを覚えながら肯定する)

氷夊「……私もだよ。分かるでしょ、私が付き合ってても全然笑わないの。君から何かプレゼントとかもらっても、いくら口で嬉しいって言ってても、少しも笑わないんだから、普通は嫌に思うもんだよ。」

紫雨「嫌になんて思わないよ。笑えなくても、ちゃんと嬉しいって気持ち伝わるように、手握ってくれたり、あげた物とっても大事そうに抱いたり撫でてたりしてくれてたから……。」

氷夊「それでも、それは君だからよ。君だからそれを受け入れてくれてたの。……中学一年の頃の、あれ。覚えてるよね。あれがあってから、その……。あの時、私の中で色々思うところがあって……うん。響(ひびき)君が亡くなった時、それが悲しいとかじゃなくて私のせいかもしれないって気持ちの方が先に来て、私のせいじゃないって分かったら安心して、そんな自分が嫌で嫌で、こんな私が笑ってたらいけないって……。でもそんな事、別に紫雨君と関係……その出来事と紫雨君は関係ないっていうか、紫雨君が巻き込まれる謂れ(いわれ)は無いでしょ。それは私の甘えなんだよ。なのに私はずっと笑えないままで、紫雨君はそれを受け入れてくれた。」

紫雨「そんな事……無い、っていうか……俺は氷夊さんと一緒に居られるだけで嬉しいし、氷夊さんは俺の憧れだから……。」

氷夊「そう言ってくれるのはとても嬉しいよ。ありがとうね、私の中に良いところ見つけてくれて。でもね、今私が言いたいのは、たまには紫雨君が甘える番が来たって良いって事。紫雨君の再婚したお母さんの話。やっと本当にお母さんだって思えるようになったと思った矢先に出て行った。それで居なくなったお母さんを心のどこかで求めてしまう。その話と私は特に関係が無くて、私はその話に巻き込まれる謂れは無い。だけどその出来事と私は関係無くても、そもそも私と紫雨君は関係あるでしょ。私と紫雨君は知らない同士じゃない。恋人同士。それで私も紫雨君に沢山甘えてる。だから私もね、勿論お母さんの代わりになってなんて言われたら嫌だけど、そういう事で悩んでて苦しいって話くらい聞くし、力になる。少しでも楽にさせてあげたい。これは何も特別な事じゃなくて、当たり前の事なのよ。甘えておいでよ。それはあなたのお父さんやお母さんが紫雨君にしてる、一方的な酷い甘えとは違うものでしょ?」

紫雨「……ごめん、ね。」

氷夊「何が、ごめん。」

紫雨「……自分の中だけで、全部折り合い付けて、全部、なんとかして、表に出さないようにって思ってた。でも、できなかった。」

氷夊「できない時だってあるでしょ、そんなの。吐き出す相手に私を選んでくれて嬉しかったよ。」

紫雨「……ありがとう、氷夊さん。俺はずっとずっと、氷夊さんに顔向けできる人間でありたいって思ってて。中学一年生の時、氷夊さんが……響(ひびき)君の事「皆でのけ者にするのが気に入らない」って言って、響君に話しかけにいって、次第に打ち解けていって、それで自分まで周りからのけ者にされていくのもいとわないで。そんな氷夊さんみたいな強い人になりたかった。だから、弱音なんて……。まして、俺の氷夊さんを好きな気持ちが、母親というか、母性を求める気持ちと混ざって歪んでいくのなんて認めたくなかったし、口にも出したくなかった。自分で自分が気持ち悪かった。」

氷夊「つらいよね。君は私の事が大好きだものね。その気持ちが歪んでいってしまうのなんて、すごくつらい事だよね。きっと自分で自分が許せないって気持ちにもなったと思う。」

紫雨「……うん。」
(力無く。ただ、少しだけ嬉しそうに)

氷夊「私ね、自分の気持ちも、他の人の気持ちも、何が本当で何が嘘で、何をどれだけ信じて良いのか分からなくなっちゃったんだ。……そんな私でも、紫雨君が私の事好きな気持ちと、私が紫雨君の事好きな気持ちは、安心して信じていられてるんだよ。私に対して、生まれてほしくない気持ちが生まれてしまうのも本当だけど、その気持ちを嫌だって思ってる気持ちも本当なんでしょ。」

紫雨「うん……。本当に、付き合い始めた時の気持ちのままで居たかった。」

氷夊「その頃はまだ新しいお母さん居なかったものね。知ったものを知らなかった頃には戻れない。今の君は今の君なりに、また新しく私に対する気持ちを見つけていかないといけないんだよ。でも大丈夫。それは絶対、私を蔑ろにする、自分勝手な愛情になんてならない。君の愛情は、絶対に私をまっすぐ見てくれて、私を大切にしたものになる。」

紫雨「……ありがとう、嬉しい。」

氷夊「私を信じさせてくれたのは紫雨君だよ。」

紫雨「氷夊さんが信じてくれるなら、俺も俺の事、信じる。」

氷夊「良い子。……紫雨君、隣に座って良い?」

紫雨「……え、隣?良いよ。」

氷夊「……っお邪魔するね。」

紫雨「氷夊さん……どうしたの?」
(思った以上に近くに座ってきたので少し驚く)



氷夊「こっち向いて。」

紫雨「え、うん……。」

氷夊「……少し待ってね。」

紫雨「?……分かった。待ってる。」

氷夊「……。」
(二〜三回深呼吸)

氷夊「……いっ」
(いびつに笑ってみせる)

紫雨「ひすいさっ」
(「氷夊さん」と言おうとして、途中で抱き締められて言葉が止まる)

氷夊「……恥ずかしいから、このまま。」

紫雨「……氷夊さん。」

氷夊「良いね。抱きしめてると、お互い顔見えないから。」

紫雨「うん、そうだね……。俺も今の顔見せられないや。」

氷夊「温かいね。」

紫雨「温かいね。……ありがとう。氷夊さんが笑えないの、受け入れてたつもりだったけど……それでもいつか、笑ってくれたら嬉しいってずっと思ってた。」

氷夊「……変じゃなかった?」

紫雨「変なわけないよ。……っ綺麗だった。」
(「かわいかった」と言おうとするも、直前で「綺麗だった」に変える)

氷夊「……うん。」
(照れて少し抱き締める力が強くなる)

紫雨「えへへ。」

氷夊「……あのね、紫雨君。私はあなたが大好きだよ。」
(諭すように)

紫雨「肝に銘じます。俺もあなたが大好きだよ、氷夊さん。」




(暫くの時間が流れて)




氷夊「忘れ物、無いね?」

紫雨「大、丈夫。持ってきた物も少ないから。」

氷夊「良かった。……ぅわ、風すごいね。」

紫雨「本当だ。それじゃあ、今日はお邪魔しました。」

氷夊「待って。……やっぱり私も行く。」

紫雨「え」

氷夊「今日もこれからお買い物でしょ?」

紫雨「まあ、それは」

氷夊「一緒に行こうよ。」

紫雨「……そうだね、一緒に行こう。」




―完―
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