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2022年10月26日22:06

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『黒蜥蜴』 と 『パノラマ島奇談』 の公約数 = 井上梅次の灰汁。

仕事帰りに神保町で映画の吉例。

腰痛でも2時間くらい座ってをれる。

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『黒蜥蜴』(くろとかげ)。

江戸川乱歩のエログロを、なぜか、三島由紀夫が気に入って劇化したものを、井上梅次(うめつぐ)が映画化。

これが、昔から解らない。

『パノラマ島』 もそうなのだが、乱歩のエログロというのは、実は好きじゃない。

ことさら、そいつを三島由紀夫が愛したというのが、まったく、どういう感覚なのか、たぶん、激辛タンタンメンが好きで好きでたまらない、という人の感覚と同様に理解できないのである。

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文豪の作品というのは、腑に落ちることもある。太宰治、井伏鱒二、芥川龍之介、安部公房。

一方で、まるで腑に落ちない作家もいる。その代表が三島由紀夫で、腑に落ちない人が、腑に落ちないテイストのものを、まるで腑に落ちない料理に仕上げたら、腑に落ちないどころか、喉も通らない。


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この映画を選んだことには、ある目論見があった。

監督の 【井上梅次】 である。

先立って、井上梅次が乱歩の 『パノラマ島』 をテレビドラマとして監督した作品を視た。

両者を比べると、映画とテレビでは何が違うのか、ということが、判りやすい、と思った。

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結果、井上梅次の演出法は何も変わっていない、ということに、若干 呆気に取られている。

まず、何より違うのは、16ミリと35ミリである。

奥行きや、シャープネスが違うだろう。

しかし、セットの質や、ロケハンの丁寧さなど、多少は差があるとしても、驚くほどではなかった。

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つまり、映画の 『黒蜥蜴』 と、テレビの 『パノラマ島』 は、地続きであることを確認した。

それも、驚くほど距離は近い。

むしろ、映画の中のヘリコプターの模型など、笑ってしまうほどチャチいのである。実際、映画館で笑った客がいる。当然である。あそこまで露骨だと、ワザとだとしか思えない。

テレビの 『パノラマ島』 のカラスが同じようなレベルだった。

井上梅次には、リアルにしようという意図がまるでない。

冗談としか思えない変装、というのも同じデンである。

そういえば、どちらにも、義眼で変装したニセモノ、というモチーフが重複する。

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『黒蜥蜴』 は、おそらく、井上梅次の映画の中でも、名作には数えられていないだろう。

それにもかかわらず、テレビ時代に同じことをやっているのである。

つまり、名作に数えられない 『黒蜥蜴』 のような表現を、彼は好んでやっていたのかもしれない、と、ふと思うんである。

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何も、映画の評論は、名作について書かなければいけない、というものでもないし、映画鑑賞というのも、名画をありがたく拝見しなければいけない、というものでもない。


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