最近観た映画、続き。
先々週の金曜、TOHOシネマズ海老名で、
「アイ・アム・まきもと」。
これは、「舞妓Haaaan!!!」「謝罪の王様」に続く、阿部サダヲ主演・水田伸生監督によるヒューマンコメディ
小さな市役所で、人知れず亡くなった人を埋葬する“おみおくり係”として働く牧本壮。
故人に入れ込む余り、周囲とトラブルを起こす事もしばしばだ。
そんな牧本だが、ある日、孤独死した老人・蕪木が、牧本の自宅のアパートの向かいの棟に住んでいた事を知り、密かなショックを受ける――なぜ、気づく事が出来なったのだろうか……牧本は、せめてもの償いにしっかり弔ってやろう、と奔走するのだが……
これ、ウベルト・パゾリーニの小説で、映画化もされた「おみおくりの作法」の日本版リメイク。
元々、生者よりも死者に親しみを覚えていた男を描く、静かな映画を、終盤暴走気味に加速するコメディを得意とする阿部サダヲ+水田監督のコンビはどうするのか、と思っていたら、これが意外にも原作そのままの展開を見せた。
気になったのは、阿部サダヲ演じる牧本が、自閉症など何らかの精神疾患者と見える事……それをコメディとする事に釈然としないものを覚えてしまった。しかも、こうした病理を抱える演技となると、阿部サダヲが上手いものだから尚更だ。
また、終盤の展開も釈然としない……原作では、生者よりも死者の方を向いていた男がある女性との出会いにより、自分の人生を「生きよう」とした途端に死者に手を引かれるような印象を受けたのだが、本作では、その辺りは曖昧なのだ……その癖、死亡フラグだけはしっかり立っており、何とも言えないものとなっていた……まぁ、この辺、オリジナルと比べてしまうからかも知れないが……
何れにしても、この物語に対し、騒々しい展開を得意とする阿部サダヲ+水田監督のコンビは相性がよくないのでは?と思ってしまった。
先々週日曜、ブルク13で、
「四畳半タイムマシンブルース」。
これは、森見登美彦による、TVアニメにもなった小説「四畳半神話大系」と、映画にもなったヨーロッパ企画の戯曲「サマータイムマシン・ブルース」のコラボレーション小説を劇場アニメ化したもの。
監督は、アニメ映画「夜は短し歩けよ乙女」で、湯浅政明監督の主要スタッフとして参加した夏目真悟。
8月12日。京都・下鴨幽水荘で唯一のクーラーのリモコンを水没させてしまった私は、突如現れたタイムマシンで昨日に戻り、壊れる前のリモコンを持ってくることを思いつく。
しかし、悪友・小津たちは勝手気ままに過去を改変。宇宙消滅の危機を予感した私は慌てて回避すべく奔走。果たして、時空を超えた珍道中、そして「私」の密かな恋の行方は……
この映画、予備知識なく見始めたものの、既視感が……銭湯とシャンプーの話で、これが「サマータイムマシン・ブルース」だった事に気づいた。
物語としては、昭和的なボロアパートに巣くう、これまた昭和の生き残りのようなバンカラ人間に振り回される大騒動。物語は基本ドタバタで、タイムパラドックスとか、ややこしい事は言いっこなし。テンポと勢い、そして「私」の無機質な早口台詞で押し切った。
アニメとしては、「夜は短し歩けよ乙女」で湯浅政明監督が見せたような、自在なアニメーションと音楽の織り成すミュージカル部分が失われ、物足りなくもあるが、個性的なキャラクターを揃えて、十分に面白い。
これはこれで森見登美彦原作アニメとして満足の行く出来ではないか、と思う。
先週水曜、109シネマズ湘南で、
「マイ・ブロークン・マリコ」。
これは、平庫ワカによる同名漫画を、「浜の朝日の嘘つきどもと」のタナダユキ監督が、永野芽郁主演で実写化したもの。
共演は奈緒、窪田正孝。
ブラック企業勤めで鬱屈した日々を送るOLシイノトモヨは、幼馴染で親友のイカガワマリコが亡くなったことを知る。
マリコの遺骨が彼女にDVを繰り返し、近親相姦までしていた父の元にある事を知ったシイノは、マリコの魂を救うために遺骨を強奪し逃走するーー
これは女同士の友情を描くシスター・フッドものだが、その片方が死んだ所から始まるのが異色と言えば異色。
タイトルにも「マイ・ブロークン・マリコ」とあるように、マリコの壊れた家庭が、やがて本人も壊して行った、と言う話であると共に、しぃちゃんこと、シイノのまた相当壊れた女なのだ。
相互依存していた、その欠落を埋める為の旅を描く物語には引きつけられるものがあり、それが、シイノのイメージとは大きく異なる永野芽郁をして、これを演じたい、と思わせたものだろう。
その永野芽郁は、かなりイメージを変えてシイノ役に挑んでいる。大股開いてタバコをふかし、酒に酔ってクダを巻く……バンカラぶりは頑張っているものの、それが“頑張っている”と見えてしまう所が、永野芽郁の限界だろうか。
で、本日水曜、TOHOシネマズららぽーと横浜で、
「ソングバード」。
これは、「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイプロデュースによるパンデミック・スリラー。
2024年、致死率の高い変異性コロナウイルスCOVID-23が蔓延するLA。
ウイルスに対する免疫を保有し、現状では自由行動が可能な配達員のニコは、Qゾーンと呼ばれる施設に徹底隔離されそうになる恋人サラを救い出そうと荒廃した街を奔走する。
この映画、アメリカで公開されたのはコロナ禍の最中の2020年。恐らく、新型コロナウィルスのパンデミックにより企画されたものだろう。
コロナウィルスのパンデミックが如何なる事態を引き起こすのか、想像で補っている部分があり、その後の現実とは差異もある。だが、都市ロックダウンと外出規制により人気の消えた大通りなど、その後、現実に目の当たりにしたものと同様の光景を見せられると、これは、現実の延長線上にあるのだ、と感じさせられる。
物語の軸はメロドラマで、コロナ禍で触れ合う事の出来ない恋人たちを描く――そんな恋人たちを引き裂こうとするのがウィルスではなく人間だ、と言うのは卓見だろう。
未知のウィルスによるパンデミックの最中にあっても、一致団結して事態の解決に当たるのではなく、金や権力を求めるのが人間なのだ――そして、それは同時に、お互いの事しか考えていない恋人たちもまた同様であるのだが……
ただ、倒すべき敵をウィルスではなく人間として終わらせたのは、ドラマを矮小化させた感もあるが、コロナ禍の先が見通せない中での企画だっただけに、アフターコロナを描くには至らなかった、と言う事だろうか?
ログインしてコメントを確認・投稿する