落とした土鍋ぐらい底が割れているよね。
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うら若き乙女とは、ベイビーガールのことである。
ついでのお土産に、今日 見かけた、はた目には愉快だが、ママには絶望的なガールの話。
ママより先にクルマを降りた元気いっぱいの子。
小雨降るなか、まず、運動靴で手近な、というか、足近の大水溜まり2つ、障害の水濠のごと、連覇。
ママのおしゃれなトートバッグを振り回しながらの暴挙である。
もちろん、トートバッグのおけつは、水泥だらけ。
それでも楽しいんだね。しあわせだ。
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ベイビーがだっこしてもらっていると、パパは前を向いているのに、ベイビーだけ、パパの肩越しに後ろを向いていることがある。
彼女と眼が合った。
たいていのベイビーは知らない人と眼が合うと、首を方向転換してそ知らぬ振りをする。
彼女は妖艶な笑みを浮かべると、バイバイをお見舞いしてくれたのである。
彼女の斜め上には吹き出しがあって、パパにはナイショだよ、とネームが入っていた。
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オジサン、内心 興奮なのである。このコーフンを誰に伝えよう。何となく、手嶌葵のような清らかな瞳でオトメチックになっていた。
オトメフェロモンは、ベイビーガールには敏感にわかるらしい。
ほどなくして、パパの左手につかまって、ときどき、体幹なく地球ゴマのようにフラフラ歩みを進めていたベイビー。
振り向くと、やはり、妖艶に微笑んで、バイバイをくれたのである。
周囲を見回して、他ならぬ、このポンコツにくれたのにポーッとしてしまった。
あわてて、バイバイ倍返し。
すると、少し歩いてから、あやうい体幹の地球ゴマで振り向いて、また、バイバイ。
こんな幸せがあろうか。
このベイビーガールは、角を曲がるまで、ずっと振り向いてはバイバイをくれたのである。
パパはマイドータァが、どこの馬の骨だか、牛の骨だかわからないシロモノに愛嬌を振り撒いているとは思わなんだであらう。
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話はこれだけである。
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