夏休み3日目。
熱は下がったが、やっぱり何もする気が起きずで、午前中ぐうたら、午後になって映画を観に出かける。
映画は、T−JOY横浜で、
「タング」。
これは、デボラ・インストールのSF小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を、物語の舞台を日本に移して実写映画化したもの。
尚、「ロボット・イン・ザ・ガーデン」は、劇団四季でミュージカル劇にもなっている。
主演は、2年ぶりの映画出演となる二宮和也。監督は、「今夜、世界からこの恋が消えても」「アキラとあきら」と、この夏3本の映画が立て続けに公開される三木孝浩。
春日井健は、訳あって無職で人生に迷子中。そんなある日、健は庭に迷い込んで来た記憶を無くしたロボット、タングと出会う。
朝からゲーム三昧、仕事も家事もしない健に愛想を尽かした妻に家を追い出された健は、妻の機嫌を取ろうとタングを下取りに出して最新の家事ロボットを手に入れようとするが、それが健を思わぬ冒険の旅へ誘う事になる……
lこれは、青春映画を得意とする三木孝浩にとっては、昨年の「夏への扉 −キミのいる未来へ−」に続くSF作品。
主人公を、トラウマを抱えた中年(?)男性とし、その人生の再スタートを絡めて描く、バディものでロードムービー、と言う展開は、子供向けと言うよりも大人向け。想定される観客層だって、「嵐」の二宮和也ファンとすれば、成人女性と言う事は明確なのに、物語の幼稚さと、登場人物のボンクラぶりには呆れるばかり――タングの反応から、恐れや驚き、好奇心の発露など、機械では持ち得ない“感情”が見えているのは明確なのに、医師や弁護士、ロボット工学者と言う知識や洞察力を持つはずの人物が揃いも揃って気づかない、と言う体たらくで、これではSFとして、話が進んでいかないではないか、と思ってしまう。
健を演じた二宮和也は、やっぱり巧い、ゲームオタクのポンコツ青年、と言うのも二宮和也にアテ書きしたように思える程で違和感がない。脇を固める俳優陣も、まずは豪華と言えるもの。特に、武田鉄矢の悪役と言うのは、これが意外にも凄みがあってよかった。ただ、役柄までいつもの漫才通りと言うかまいたちのふたりは勘弁して欲しかったが……
また、タングの造形と特撮は見事で違和感なし。登場する様々なロボットもまずまずのリアリティがあって、特撮関連の出来はなかなかだっただけに、“お子様ランチ”のような内容だけが残念……
「タング」を観た後、夕食を済ませ、シネマジャック&ベティで、
「アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台」。
これは、刑務所の文化活動で演技を教えることになった俳優が、囚人たちと共に、「ゴドーを待ちながら」の外部公演を成功させた’80年代のスウェーデンの実話をフランスで映画化したヒューマンドラマ。
監督は、バイプレーヤー俳優でもあるエマニュエル・クールコル。
囚人たちの文化活動として演技のワークショップ講師として招かれた、売れない俳優のエチエンヌ。彼は囚人らと過ごすうち、前任者のような寓話ではなく、本格的な劇を演じさせる事とし、サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を演目と決める。
最初は茶化すばかりで真面目に取り組まなかった囚人たちも、エチエンヌの情熱は次第に囚人たち、更に刑務所長の心も動かして、難関だった刑務所の外での公演に漕ぎ着ける。素人の囚人たちだが、エチエンヌの狙い通り、彼らの人生そのものを舞台に曝け出した芝居は、観客やメディアから予想外の高評価を受け、次々に出演依頼が舞い込んで……
この映画、実際に運営されている刑務所で撮影したのだ、と言う。あまり見る事のない、フランスの刑務所の様子は興味深い……特に、刑務所の建物までも美しくデザインしてしまい、殺風景なものとしていないのは、さすがフランス人と言う所だろうか?
映画は、1年余りの時間経過を描くが、これをテンポよく描いてダレる所がない。
演技経験がなく、教養も、文学的素養もない囚人たちが、演劇に取り組み、それが劇場で喝采を受けてしまうのは痛快でもあるし、ひとつの事を成し遂げる達成感もあって気持ちよく観られる。
気になったのは、やはり最後の展開だ。
それが実話の通りだから仕方ないのだが、これを美談とさえ言えるように美しく描くのはどうしたものか、と思う。最後に思わぬ大舞台でひとり芝居を打つ事になったエチエンヌも、あれが晴れ舞台ではなく、裏切られた男の悔恨ではないのだろうか?このラストには釈然としないものが残った。
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