本作は過去のウルトラマンを現代技術でリビルドし「マン」シリーズにふさわしい展開と構成になっている。「特撮オタむけ作品」としての完成度は一級品。マニアたちはうなるだろう。*1
だがその“贔屓”を排し、純粋な映画として見たとき、本作は庵野秀明と樋口真嗣の作風が対立する。
庵野秀明は実写作品の監督が上手くはない。「式日」を頂点に永遠の自主映画のような色調／画角／編集を好み、俳優の台詞まわしや演技もアニメくさい。監督の好む実写映像とは非常にアマチュアっぼいのだ。*2
一方、樋口真嗣はさすが実写映画のキャリアが長く、映画へと求める様々な技術はプロの手法を好む。この相違に本作は対立する。
マーケティングするにあたって本作は庵野秀明がシテで樋口真嗣がアドだ。制作全体も脚本を代表に庵野秀明の意思を優先した。
ところが本人は『シン・仮面ライダー』で現場関与がうすくなる。樋口監督は「意思の代弁」にがんばるも、結果は両者のプロ的作風とアマ的作風、作劇術と演技術が混在。不幸なかたちになっている。
「ウルトラマン期ビフォー」「ウルトラマン期」「ウルトラマン期アフター」で物語を分け、人間と外星人（異星人）の関係を描く本作は、あらたな解釈と並行世界、ゼットンをふくめ「初代マン」の最初から最後までをなぞる。*3
ただ作風の混乱と「マン」の事前知識によって納得度と共感度が左右されるだろう本作を自分は諸手を挙げ評価できない。*4
※１ あくまでマニアにである。本作のターゲットレンジは「ゴジラ」や「ヱヴァ」にくらべ広くはない。この狭さは「多数の人々が共感を抱くテーマの不在」が原因だが一方において「特撮オタむけ」作品としてはよくできている。ただ「マニアむけ／オタクむけ」の明白さは興行にも関係している。実際、東宝が矢継ぎ早にマーケティングをしかけているのは初動以降が「思ったより伸びないな」と実感している部分があるはずだ。
※２ 「監督単体の実写作品がおもしろかったか？」といえば自身の感想は「ノー」だ。たとえば今回も椅子の間から覗いた素人みたいな不可解なカットがあるが「ああここ撮ったのは庵野秀明だな」とわかる。くわえてそのカットの必要性は意味不明だ。
※３ 映画の構成は“禍特対”が人類の力で怪獣を撃退していた初期�，�66年の「ウルトラＱ」をモチーフになぞる。以降は66年の「ウルトラマン」で中期�△判�期��をなぞる。全体の展開は「�―藉�：前期・人類 vs. 怪獣／人類の知的進化以前」 → 「��中期：超人 vs. 怪獣（マン無敵時代）／人類が超人を神の様に仰ぐ時代」 → 「��終期：後期・人類 vs. 怪獣（マン敗北時代）／人類の知的進化以後）」だ。
※４ 16年の「ゴジラ」には「震災」の象徴だという万人にわかりやすいテーマがあった。21年「ヱヴァ」には「25年続く作品にファンと一緒に幕を引く」というテーマがあった。だが本作にはそういった人々の共感を強く引き出すテーマがない。
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