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2021年10月30日12:48

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映画「燃えよ剣」

以前のレヴューにも書いたが、近年の岡田准一には武士と軍人のオファーばかりくると
聞いている。本人は少々嘆いている様子だったが、この作品の出来栄えを見れば
無理もない話だと思えてくる。これは上質な剣劇映画である。上映時間の半分ぐらいは
白刃の煌めきを眺めていたような気がする。
武士にばかりキャスティングされる岡田准一はストイックな役者としても知られ、
殺陣やアクションでもあまりスタントを立てないと云う。エンドロールでは
土方関連殺陣のスタッフとしてクレジットされている。

新選組に興味を持った際に、最初に読んだのが司馬遼太郎の原作小説。情報が増えた
今になってみるとフィクションの度合いが大きいのが気になるが、熱量の点では
抜群に他の小説より大きい。なので映画化にも大きな期待をしていて、そして
期待以上の感慨をもらった。其の原作との比較で、かなりの変更を発見したような
気がする。群像劇ではないので七里研之助、山崎烝、井上源三郎の描写は限定的な
筈なのだが、どうにもキャラが立っていて興味を惹かれるのだ。特に七里研之助は
陰湿なイメージだったものが、ジェントリーな造形にうなってしまった。因みに
架空のキャラクターで、原作では分倍河原の決闘に於いて止めを刺されることに
なっている。映画化にあたっては別人に設定されたようで、箱館戦争にも顔を出す。
時間があれば先ず原作を読破してから映画に進むと、驚きが倍増するだろう。
若しかすると、一番の収穫だったかもしれない。
井上源三郎は地味で、クローズアップされるようなキャラクターではない。だが、
殺伐とした新選組ストーリーの中では妙に目立つ。これといったエピソードが
ある訳ではないものの、河童の件では泣き笑い必至。

芸人の村本大輔、マギー、金田哲らがキャスティングされていて見事に嵌っている。
山崎役の村本は素晴らしく、従来の山崎像を更新する勢いである。この山崎も
心に残る。
ヒロインの柴咲コウについては、毎回感じるのだがきつそうな顔立ちなのに
憂いたり悲しむ表情が大変魅力的だ。印象的な大きな瞳だけで演技できる役者である。

エンドロールでは動物を虐待していないことが一筆加えられていた。当該シーンは
恐らく、土方の最期。土方と同時に馬も狙撃されている。火薬を使用して
撮影されていたら問題視される可能性がある。ここはVFXに違いなく、違いないのだが
アップになっても嘘くささがない。黙っていると、火薬を仕掛けたとして騒がれると
判断したのかもしれない。

この戦闘では無用な武器だとして隊士たちに刀を捨てさせ自身も短銃で戦った土方が、
ラストシーンでは日本刀を手にして単騎突撃する。ありきたりな表現ながら
時代に取り残されても貫く矜持を目撃し、其れ故の作品タイトルなのだった。

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