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2021年08月15日18:42

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声劇台本を作成しました!「相思相生(そうしそうじょう)。」

※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※




※ この作品は声劇台本「二方美人。」のシリーズ作です。
単独のお話としても楽しんでいただけるよう作っていますが、
もし良ければ「二方美人。」はじめ、シリーズ内の他作品にも目を通してくださるとさいわいです。



※「二方美人。」へのリンク。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1958862956&owner_id=24167653





※「二方美人。」シリーズ及び関連作品のみをまとめたリンク。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964303733&owner_id=24167653




※シリーズ内の中でも今作登場人物の登場する作品達へのリンク(時系列)

「珠玉の真面目(しゅぎょくのしんめんもく)。」
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964552701&owner_id=24167653

「珠玉に古瑕(たまにふるきず)。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1969313458&owner_id=24167653

「一事万象、万事一象(いちじばんしょう、ばんじいっしょう)。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972397251&owner_id=24167653

「彩への痕(あや への あと)。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1977792835&owner_id=24167653





【想定人数】
男女1:1


【想定時間】
約20分


【登場人物説明】
相生 宇鏡(あいおい うきょう)……高卒から社会人10年目。手芸サークル『影縫い(かげぬい)』の代表。副代表の葉ノ下 景重(はのもと けいちょう)に約5年前に交際を申し出たが振られている。



葉ノ下 景重(はのもと けいちょう)……大卒から社会人6年目。本作には登場しない小幸 雪那(さゆき せつな)とともに手芸サークル『影縫い』の副代表をしている。昨年12月からサークル参加者の一人、縫(ぬい)と付き合っていた。なおサークル名に両者の名前が入っている事はただの偶然。











「相思相生(そうしそうじょう)。」





景重「……やっべえ、もうすぐ3時か。」

景重「寝ないとなんだがな……寝る気が起きねえ……。」

景重「……ここ一週間で2時前に寝られた試しがねえし、寝てもすぐ起きてで結局毎日3時間も寝てねえ……休みの間に矯正したかったのに、明日…いや今日で休みも最後。まじでぶっ壊れる。」

SE:バイブ音

景重「なんだ、電話?こんな時間に…………っあの馬鹿。」

宇鏡(電話)「出てくれた。」

景重(電話)「何時だと思ってる。さっさと寝ろ。」

宇鏡(電話)「窓の外見てみ。」

景重(電話)「は、お前まさか」

宇鏡「やっほ、葉ノ下(はのもと)君。」

景重「な、ちょっと待ってろ、すぐ行く。」





景重「相生(あいおい)……お前、なんでこんな時間にここに居る。」

宇鏡「さっきまで用事があってね、その帰り。明かりが点いてたから起きてるかなーって。」

景重「……それでお前は俺に何を求めているんだ。」

宇鏡「家まで一緒に付いてきてくれない?こんな夜更けに一人じゃあ、ねえ。危ないでしょ?」

景重「車乗れ。」

宇鏡「それじゃあっという間に着いちゃうじゃないの。夜風を感じながら歩いていきたいのよ。」

景重「……お前って意外と平気で嘘吐くよな。」

宇鏡「平気じゃないし、バレる前提の嘘しか吐かないわよ、私は。」

景重「…行くか。」

宇鏡「ええ、行きましょう。」





宇鏡「見て、星が綺麗よ。良いものでしょ、夜のお散歩って。」

景重「……ああ、普段は見る事もなく寝てしまっている景色だ。」

宇鏡「ふふ。ここが駅前じゃなくて良かったわねえ。そこらに酔っ払いや客引きが居たんじゃ、せっかくの景色が台無しよ。」

景重「まあな。」

宇鏡「あ、自販機。なにか飲み物買ってきましょうか?」

景重「お前の歩調に合わせて歩いてもせいぜい15分か20分だろ、要らねえよ。どんだけゆっくり行く気だ。」

宇鏡「えー。」

景重「えー。じゃねえよ。夏っつってもこの時間じゃまあまあ寒いんだ。さっさと帰るぞ。」

宇鏡「……ちぇ。ふふふ、キミと二人きりなんて何年ぶりか分からないのに。連れないじゃないの、せっかくの機会なんだからゆっくりしましょうよ。」(わざと演技がかった言い方で、わかりやすく妖艶な雰囲気で)

景重「……。」

宇鏡「……。」

景重「相生。」

宇鏡「うん。」

景重「縫(ぬい)、どんな感じだった?」

宇鏡「すんごい怒ってた。半年で別れるなら最初から付き合わなければ良かったとか言って、あとサークルも抜けるってさ。」

景重「…そうか。」

宇鏡「正確には8か月だけどね。……あの子が言うには、キミすっごく酷い奴らしいじゃん。」

景重「……。」

宇鏡「違うんでしょ。」

景重「そりゃあな。」

宇鏡「まああの子については、言いたい事全部言わせてあげて、それで落ち着いたかな。サークルはその場で正式に書類も出して脱退しちゃった。キミとは二度と会いたくないけど、私とは今後も仲良くしたいってさ。」

景重「お前には気まずくさせるな。」

宇鏡「気まずいのなんて今に始まった事じゃないっての。」

景重「そうだな。去年、俺と縫が付き合い始めた時……。」

宇鏡「よりも前、そもそも振られた時からずっと気まずかったわよ。5年間ずーっとずーっと。」

景重「そこはお互い様だ。」

宇鏡「私、人生で初めて断られたんだからね。この引く手あまたの私がよ。あー、傷ついた傷ついた。」

景重「はっは。」(心のこもっていない笑い)

宇鏡「で、キミは?キミもあれこれ言いたいんだったら私は聴くけど。」

景重「どうしても悪口になるから言わんよ。」

宇鏡「そっか。」

景重「……と言うかな……悪いんだが、やっぱりできるだけ早く行こう。さっさとお前を送り届けて、さっさと解散しよう。……でないとお前に八つ当たりしそうだ。」

宇鏡「別に、八つ当たりでも私は良いのよ。キミが少しでもすっきりするなら。」

景重「……だめに決まってんだろ。」

宇鏡「ああ、もし弱ってるからって優しくされすぎて私に惚れちゃっても大丈夫だから。その時はちゃんと『頭冷やしなさい』って言って小突いて振ったげる。」

景重「お前はよ……。」

宇鏡「私はサークルの代表でしょ。副代表、部下であるキミを気遣うのは当たり前の事よ。」

景重「違うだろうが…。」

宇鏡「違わない。」

景重「そうじゃねえよ!八つ当たりされても良いってのが違うっつってんだよ!」

宇鏡「ちょ、音量。あそこに公園あるから、そこでね?」

景重「……悪い。」





宇鏡「……ま、ここ座りなよ。早朝ランニングのお爺さんお婆さん達もまだこの時間なら来ないでしょうし、ここでならちょっとくらい大きな声出しても多分大丈夫よ。」

景重「…別に大声出すつもりは無かった。」

宇鏡「分かってるって。」

景重「悪い。……なあ相生。」

宇鏡「うん。」

景重「お前はどうして夜の散歩なんかに誘ったんだよ。」

宇鏡「少しでもキミの気晴らしになったらなあって。……どうせ眠れてないだろうし。」

景重「……。」

宇鏡「まあ、下心が無い事は無いけどね。そうやって優しくした結果キミが私にさ、良い奴だ、こいつが居て良かった、自慢の友人だ、みたいに思ってくれたら良いなあなんて。そんな健全な下心は大いにありました。当然でしょ。」

景重「……はは、なんだろうな、なんて言うんだろうな…。」

宇鏡「まあ、でも本当に、居てくれて良かったとは思われたくっても、弱ってるとこに優しくしてキミに惚れてほしいなんて思ってはいないよ。というかキミにはそうであってほしくない。」

景重「期待してくれてんな。」

宇鏡「そりゃそうでしょ。」

景重「ったくなあ……。」

宇鏡「…。」

景重「……相生。俺はお前の……なんだか自分の存在意義を作るのに必死で、そのためにあれこれあれこれ人に尽くそうとするところが……そういう必死で……なんかいつも泣いてるみたいな……そういうところが気に入らなかった。」

宇鏡「知ってる。だから振ったんでしょ?」

景重「ああ。やった、私の頑張りを認めて、サークルの仕事手伝ってくれるって言ってくれた。私の存在意義を認めてくれた。だから好き。付き合ってください。そんなんおかしいだろって、本当に、すっげー気に入らなかった。……でもなあ、なんだか……今のは、なんか良かったよ。」

宇鏡「今の?」

景重「お前の言う『健全な下心』?…っはは、俺を気遣ってくれてんのも本当だけど、その陰で実は自分が自慢の友人だって思ってほしくてやってる事だって。……なんだろな、俺が気に入らないってずっと思ってたのと何が違うのか分からねえけど……。なんか今のは、なんだこいつすげえ自分本位な野郎だなって思って、少し嬉しかったって言うか…安心した。」

宇鏡「……なんでかしらね。」

景重「……お前は昔から、良い奴だったよ。だからこそ嫌だった。どうでも良い奴ならともかく、なんでお前ほどの奴が、なんでそんな必死に『あなたに尽くすから私の存在価値を認めてください』なんて媚びへつらって回ってんだって。なんで自分から周りに都合良く利用されに行ってんだって。……ああそうだ、何が違うのか多分分かった。だってお前、それ本人に言ったらだめだろ。」(最後、弱弱しく笑いながら)

宇鏡「それ?」

景重「『あなたに優しくはするけど、その見返りに自慢の友人だと思ってね』なんて、本人に言ったらだめだろ普通は。」

宇鏡「あー、確かに。」

景重「だからだな。だからなんか、安心したんだ。」

宇鏡「お、惚れた?振ってあげようか?」

景重「惚れねーよ。」

宇鏡「振りたかったのに。」

景重「……じゃあ嘘で言ってやろうか。」

宇鏡「来なさい。」

景重「惚れました。付き合ってください。」

宇鏡「やなこった。べーっ。」

景重「くっはは。そりゃどうも。嬉しいねえ。」

宇鏡「あーあーっ、惜しい事したわね、こんな良い女中の良い女、他に居ないでしょうに。最初に振ってなければ付き合えたのにねえ。」

景重「そーかそーか。」

宇鏡「……ただねえ。」

景重「どうした。」

宇鏡「私って今まで付き合ってきた男達、5人居るんだけど。その5人全員、ぜーんぜん覚えてないのよね。」

景重「そりゃなんでまた。」

宇鏡「さあねえ。ほんと、色んな思い出があって、色んな良いところがそいつらにもあった筈なのに、驚くほど覚えてないの。……もしそうなってたらキミの事もそうやって、良いとこ全部忘れちゃってたのかなって。」

景重「……防衛のためってやつか。」

宇鏡「そうそう、多分そう。良いとことか思い出すとつらいからって。逆にね、嫌な事はいっぱい覚えてるの。……ふふふ、なんだかなあ。弱くて、ずるいなあ。」

景重「……俺も縫の事、そうなっていくのかね。」

宇鏡「キミは私じゃないし、縫ちゃんの良いとことか、どんな良い事してもらったとか、ちゃんと覚えながら未練だけ無くしていけるでしょ。」

景重「……難しい注文をするもんだ。」

宇鏡「だってキミだよ。できるよ。」

景重「……分かった分かった。」

宇鏡「キミだって私に難しい注文しまくってきたんじゃん。」

景重「気まずいってやつか。」

宇鏡「そうそう、自分を振った相手とずっとずっと一緒にサークル運営してさ、その間なんか酷い事して嫌いにさせてもくれないし、なんかドン引きな事して冷めさせてもくれないし。キミの一個一個の言動にどんだけ私の心がしんどかった事か。」

景重「どうもありがとな。」

宇鏡「でも私はちゃんと頑張ったよ。キミの嫌いなとこ34個言えるけど、だからって嫌いじゃないし、私が最初に抱いたのがなんか違うものだって事はちゃんと理解してるつもり。……サークル運営手伝ってくれてありがとう!私の頑張りを認めて、私を大事にしてくれてありがとう!……キミは私の自慢の部下だし、自慢の友人よ。」

景重「凄い奴だよお前は。」

宇鏡「ちょっとは、強くてずるくない人になれたのかしらね。」

景重「少なくとも俺にはそう見える。凄い奴だし、自慢の上司で自慢の友人だ。」

宇鏡「…良かった。って、ああもう、いけないいけない。キミのための時間の筈なのに、なに私の方がすっきりしちゃってんのよ。」

景重「…別に、なんか俺の方も色々力が抜けた。助かる。」

宇鏡「そう…?」

景重「ずっと手間取ってた課題がやっと片付いたような気分だ。」

宇鏡「ふぅーん。」(少し意地悪そうに、わざとらしく)

景重「こっちはこっちで、すぐにってわけには行かないだろうが……どうにか気持ちを整理できるよう頑張るわ。」

宇鏡「それに役立ちたかったんだけど。」

景重「いやあ、今はちょっと元気出たんがな。後でまた色々思い出して落ち込むだろうから、そん時は頼む。」

宇鏡「ええ、お願い。」

景重「じゃあ、そろそろまた歩くか。」

宇鏡「そうね。実は正直言うとね、一秒でも早く寝たい。」

景重「……ありがとな。」

宇鏡「こちらこそ?」









宇鏡「はー、愛しき我が家。やーっと着いた。」

景重「それじゃ、またな。」

宇鏡「ええ。キミも早く寝なよ?今日は夕方まで寝ても許す。」

景重「おう、ありがとな。お前も早く寝な。」

宇鏡「もちろんそのつもり。」

景重「なあ、相生。」

宇鏡「ん?」

景重「俺はお前が。相生 宇鏡(あいおい うきょう)が居て、ほんと良かったよ。それじゃあな。」

宇鏡「…待て。」

景重「なんだよ。」

宇鏡「あっと…ね……待って。」

景重「一秒でも早く寝たいんじゃなかったのか?」

宇鏡「待て。キミが柄にもない事言うから、驚いてなんか解散の仕方を見失ったんでしょうが!……えっと、ちょっと待って。どうしよう。えっと、えっと」

景重「……そういう事か。……なら拳(こぶし)出せ。」

宇鏡「拳(こぶし)?こう?」

景重「んっ」(拳を合わせる)

宇鏡「うぁっ?」

景重「それじゃあ今度こそ、またな。」

宇鏡「ッ待てこら!」

景重「またかよ!俺もさっさと帰って寝たいんだっての!」

宇鏡「許可なく女性に触るのは痴漢って言ってね!」

景重「拳(こぶし)同士突き合わせるのにも適用されんのかよ!」

宇鏡「適用されるっての!手のひら出せ!パーな!」

景重「ん?あ、ああ。」

宇鏡「くらえ!」

景重「いってぇ!」

宇鏡「これでお相子(あいこ)!それじゃあ!今度こそ今度こそ!またね!」

景重「あ、ああ……ったく、手ぇいってぇ。……お前の方こそ、そんな力いっぱいひっぱたいて痛くないのかよ。」

宇鏡「ふんっ!また次回のサークルで!」

景重「ああ、どうも。またな。」







宇鏡「……はぁ。」(溜息)

宇鏡「……まったく、あの馬鹿、痴漢、セクハラ。葉ノ下 景重(はのもと けいちょう)。」

宇鏡「あーあ、お化粧落とすの面倒くさ。」

宇鏡「もうほとんど徹夜じゃないのよ、世話が焼ける。」

宇鏡「…………あったかい。」






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