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2018年11月25日15:11

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声劇台本を作成しました!「珠玉に古瑕(たまにふるきず。)。」※注意書きや配役等はリンク先へ。

「珠玉に古瑕。」

配役や注意書等
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1969313414&owner_id=24167653



本編:

雪那「ただいま……。」

雪那「…」

雪那「………。」

雪那「誰か……鎖鳥(さとり)さん…メール。『鎖鳥さん、おつかれさま。雪那(せつな)です。今日、ちょっとお仕事で色々あってこんな時間になっちゃって。何よりその間ずっとみんなイライラしてるのが伝わってきてたのが凄く怖くて、明日か明後日くらいまでは多分まだこんな感じかも知れないって思うと、今からまた怖くて…。鎖鳥さんの方も色々あるだろうけど、お互いなるべく気に病まないようにね。何かあったら言ってくれて大丈夫だからね。』……いや、長いしこんな時間に迷惑だよね。」

雪那「『鎖鳥さん、お疲れさま。雪那です。お互いお仕事も含めて色々あるだろうけど、お互いになるべく気に病みすぎないよう気を付けよ。私も何か聴いて欲しい事あったらまた言うから、鎖鳥さんも言ってきてくれて大丈夫だからね。』……よし、送信予約だけしてお風呂行こう。」



雪那「……ふぅ、体が冷えちゃう前に早く寝ないと。」



雪那「…。」




梅乃「雪那!!」

雪那「誰の声…?」

梅乃「雪那!なんなのアンタ!」

雪那「…あれ、なんでお姉ちゃんが…?」

梅乃「アンタのせいで…何もかも!!勉強も何も上手く行かないし…なんでこんな事になんなきゃいけないの!!」

雪那(中学生)「ごっ!やめて!ごめんなさい!」

雪那「…あれは小さい頃の私…?中学の制服着てる。」

梅乃「自分の姉の彼氏たぶらかして楽しい!?ガキの癖してなんなの!!大体、アンタなんかの…何が…私より良いって言うの…。」

雪那(中学生)「ち…ちが…」

雪那「…私は何もしてない。ただお姉ちゃんの彼氏さんが家に来た時に…迫られて逃げただけ。なのにこの時のお姉ちゃんは全然信じてくれなくて…。」

梅乃「うるせぇクソガキ!!」

雪那「そっか…あの時の私には、お姉ちゃんが凄く怖く見えたけど……本当に信じて欲しかったけど…お姉ちゃんは彼氏さんが大好きだから、私を信じるわけには行かなかったんだよね。」



高田「なぁ小幸(さゆき)、俺あいつと別れるからよ、そしたら俺と付き合わね?」

雪那「さっきまで家に居た筈なのに…ここは、校舎?この綺麗なのは…高校かな。高校で同じクラスだった高田君も居るし。」

雪那(高校生)「え、その、ごめんなさい…今の彼女さん大事にした方が…。」

雪那「また私だ。多分夢だよね、これ。変な夢…だけど、色々と懐かしい。醒めないで欲しいな…。高校、毎日通うの大変だったなぁ…。距離もだけど…。」

高田「はぁ!?俺がお前に目ぇかけてやってんのにお前はなんなの!?」

雪那(高校生)「え、いやだって…お付き合いするとかそういう事、高田君とは考えられなくて…。」

高田「チッ!死ねブス!もう話しかけてやんねーから!」

雪那「…あんな酷い事言うのは自分が傷ついたからだよね、きっと。」



堀内「ねぇ雪那(せつな)さん、私が和也(かずや)と付き合ってるの知ってるよね?」

雪那(高校生)「うん…知ってるよ。」

雪那「そうだ…それで、高田君の彼女さんの堀内(ほりうち)さん…。この時の堀内さんの顔が怖くて…中学の頃お姉ちゃんに向けられたのと同じ顔……。出来事も似てるから余計と。」

堀内「何?あんたがクラスで孤立しないで居られたの、私が仲良くしてあげたからじゃん!?なのになんでそんな事できんの!?恩とか感じた事ないの?」

雪那(高校生)「え、どうしたの?私何も」

堀内「あんたが和也にちょっかい出すからあいつが!!……『今はあいつの事待ってやらないと』とか言い出して…なんなの?つまりそれはもう、あいつの中じゃ私と別れたって事なの?なんなのこれ!!」

雪那(高校生)「そんな…え、でもちゃんと断ったよ!?」

堀内「黙れ!お前のせいで!!」

雪那「…確かこの後、私が三年生に上がる前に、短期大学を卒業したお姉ちゃんが家を出て行って…結局、仲直りできなかったんだ。それに高田君も堀内さんも…一応、友達だった時期もあった…と思うのに、この後卒業するまでずっと険悪で、教室で大声で悪口言われたり、廊下ですれ違う度にまた悪口言われたり舌打ちされたり…。」





くるみ「ねえ雪那さん、サークル次回いつだっけ?水曜?」

雪那(大学生)「あ、次の水曜日は教室使えないから、来週の月曜日だって言ってたよ。」

くるみ「あぁ、そっかぁやっぱり。眠くって、そんなような事言ってたような気はしてたんだけど。」

雪那「今度は大学…。この辺りまで来ると記憶もけっこう鮮明かな。…くるみさんと仲良いって事はまだ入りたての頃…。くるみさん、せっかく仲良くなれてたのに。一年生の夏にくるみさんに恋人ができた頃から…中学と高校での事が怖くなって、私の方から段々距離を取っていって…。」



雪那「恋人達や恋をしてる人達が…怖くて。そんなの外からじゃ分からないし、友達になった後でその人に恋人ができたり恋をしたりするかも知れないから、結局誰とも仲良くなろうとできなくて。…一人に慣れるしかないのかななんて思い始めて。」





雪那(大学生)「…暇だなぁ…。」

雪那「この場面は…お昼休みや講義の空き時間に、一人で空いてる講義室で時間潰してた時の私だ。」

鎖鳥「すみません、清掃で失礼しますね。」

雪那(大学生)「あ、はい!…教室から出た方が…?」

鎖鳥「そのまま居てもらって大丈夫ですよ。」

雪那(大学生)「わ、分かりました!」

雪那「…頑張れ。」

雪那(大学生)「あの!えっと、遊語(ゆうご)さん…ですよね?」

鎖鳥「…はい、遊語(ゆうご)ですが。えっと?」

雪那(大学生)「私、教養英語とかの講義を一緒に受けてる小幸 雪那(さゆき せつな)って言います!大学内のお掃除、募集があるのは知ってましたけど……えっと、その…え、あの、ありがとうございます!」

雪那「…うん、よく頑張ったね。一年生は必修講義が多いから一緒に受けてる講義が結構あって、鎖鳥さんの事は入学したての頃から存在は知ってたんだ。背が高くて頭も良くて格好良いなぁって。本当はもっと前に声かけて仲良くなりたかったんだよね。……でも、せっかく仲良くなれても、また恋愛のいざこざで険悪になる…たった二回の経験でそういうの過度に怖がって、一年生の終わり頃までずっと声かけられなかった。」

鎖鳥「何をそんなに怖がってるの。私は遊語 鎖鳥(ゆうご さとり)。小幸 雪那さんね、話すのは初めてだけど何となく見覚えはあるよ…ありますよ。よろしくね。」

雪那(大学生)「はっ…はい!!よろしくお願いします!ありがとうございます!」

鎖鳥「……良かったら、付いて来ます?もうすぐ清掃終わるからその後教務課(きょうむか)行くんだけど、今回応募者私以外居なかったみたいで、もし雪那さんも興味あるのなら今でも追加で応募できるし時給も出るよ。」

雪那(大学生)「…え、できるのなら…したいですけど、良いんですか?」

鎖鳥「良いよ。後で行こ。あと同い年でしょ、敬語じゃなくて大丈夫だから。私もやりづらい。」

雪那「…ありがとう、雪那。あの時頑張ってくれたお陰で、卒業した後でも支え合える最高の友達ができたよ。…怖かったのにね。あの時の私にとっては…友達を作るのが本当に怖かったのにね。」



鎖鳥「ほらね、簡単に申込みできたでしょ。明日からお昼ごはんの後一緒に大学回って掃除するから、とりあえず明日のお昼落ち合お。連絡先教えて。」

雪那(大学生)「う、うん…ありがとう。よろしくね、鎖鳥さん。」

鎖鳥「別に、私も負担減るし。…あ、次の講義、303(さんまるさん)の情報?」

雪那(大学生)「うん!一緒だよね。」

鎖鳥「ならこのまま一緒に…ん。」

燦花「鎖鳥さん、こんにちは!その方は?」

雪那(大学生)「小幸 雪那です!…えっと、鎖鳥さんと先ほど…お話しまして」

燦花「ふふ、そんなに怖がらないでだいじょうぶよ?私は生徒世 燦花(いくとせ さんか)と言います。私も鎖鳥(さとり)さんのお友達なの。よろしくね?」

鎖鳥「私にとっては友達っていうか恩人だけどね。」

燦花「嫌。友達が良い。」

鎖鳥「はぁい。友達ね。」

雪那(大学生)「…あ、はは。」

雪那「…良かったね。大学、手芸サークルの友達は私が臆病なせいで本当に仲良くはなれなくて…卒業したら連絡も取る事も無くなっちゃったけど、良い出会いがあって本当に良かったね。」





鎖鳥「…どう?」

雪那(大学生)「この麻婆豆腐、鎖鳥さんが作ったの!?おいしいね!」

雪那「…今度はいつ頃だろう。鎖鳥さんにお弁当を分けて貰ってる…という事は、2年生の頃かな?大学生の頃は場面何個も出るんだ。あの頃色々あったから…?」

鎖鳥「良かった。私、いつもお弁当は弟二人と父親の分も一緒に作ってるんだけど、弟のひとりだけたまにお礼とか感想とか言ってくれるけどそれ以外ほんとに何も言わないんだよ。」

燦花「…照れてるのかもね。でも良くないよね。」

雪那(大学生)「そう…だよね。仲は良いの…?」

鎖鳥「…仲ね。」

雪那「…。」

鎖鳥「ま、認めたくはないけど、悪いよ。気まずかったり、単純にいがみ合ってたり。…両親に対しては、もう諦めてる。でもお金ないから出て行けなくて……あ、言ってたっけ?自分と弟2人の分の大学の学費、全部私が負担しろって言われてるの。」

雪那(大学生)「…初めて聴いた。」

燦花「…私は当然、聴いたし覚えてるよ。」

鎖鳥「自分の分は勉強頑張って大学から学費免除して貰ってるから良いんだけど、弟のうち上の方は4つ差で私の卒業と同時に進学。下の方も5つ差で次の年に進学。だから私は、就職の後も大変だけど、それ以前に卒業までにお金貯めておかないといけないんだよ。……そんなわけで、家族がどんなに嫌いでも家を出て一人暮らしなんてできそうもない。」

雪那(大学生)「そう…だったんだ。だからバイトも勉強も、あんなに…。」

雪那「鎖鳥さんと仲良くなって、沢山働いてお金貯めてるのとか、成績もとっても優秀なのとか、ただただ凄いなぁって思ってた。だけどこの時…うん、確か2年生の秋。この時、その凄いっていうのは、凄くないといけなかったんだって知って…なんだろう。自分がいかに恵まれてるかとか、この人が幸せになって欲しいとか…楽させてあげたいとか…今でも頭の中がぐちゃぐちゃになる。」

燦花「鎖鳥さん。」

鎖鳥「どうした?」

燦花「鎖鳥さんってまな板みたいでね」

鎖鳥「っ!?」

雪那(大学生)「ぐふっ!」

燦花「どうしたの?」

鎖鳥「…いや、続けて。」

燦花「?…うん。鎖鳥さんね、いつも沢山頑張ってくれてるけど、頑張る度にいつも傷がついてるしストレスも溜まってるの、ちゃんと自覚して自分をいたわってあげてね?ほら、まな板っていつも刃物を受け止めてくれてるけど、それが平気なんじゃなくて、目に見えないだけでいっぱい傷ついてるし、放っておくと傷痕から雑菌も繁殖するんだから。それと同じように…ってイメージし易いかなと思って。」 

雪那「…燦花さんが良い人だけど少し天然なんじゃないかと思い始めたのも、このくらいの時だった気がする。」

鎖鳥「…燦花。とりあえず女性に対する例え話でその単語を使うのは良くないと言っておく。…でもありがと。言いたい事は伝わるよ。ただその話で言うのなら燦花も雪那もね。自分で自分の心の傷に気づかないで放っておきがちなのなんて、私からしたら君ら2人の方が当てはまりそうだ。」

燦花「…そうかな?」

雪那(大学生)「燦花さんはそうな気がする…。」

雪那「燦花さんは昔から人に頼られ易くて、色んな人の愚痴や相談を聴いてあげたりとか勉強教えてあげたりとかよくしてたみたい。だから多分本当に自分で気づかないうちに色々溜め込んでたと思う。後から聴いた話、鎖鳥さんが最初燦花さんを恩人って言ってたのも、ご家族の事を相談して、その際に親身に聴いてくれたからなんだそう。」

鎖鳥「燦花も勿論だし、雪那もだよ。大体、2人とも人を恨んだり怒ったりって事をしなさすぎなんだよ。まあ大学に居るうちは、私が…。」

燦花「?」

雪那(大学生)「どうしたの?」

鎖鳥「あー…一緒に居るうちは、私が労わったり慰めたりするから大丈夫だけど。」

雪那(大学生)「ありがとう!私からも鎖鳥さんの役に立ちたい!」

雪那「鎖鳥さん、たまに自分で言ってて恥ずかしくなりながらも、それでもちゃんと最後まで言ってくれるんだよね。」

燦花「うん!みんなでお互いを助け合って頑張ろうね!」

雪那「それで、燦花さんは全然恥ずかしがらずに言うから凄いって思う。」










雪那(大学生・電話)「燦花さん!あれからどうなった?」 

燦花(電話)「え、どうしたの?何が?」 

雪那(大学生・電話)「ゼミの課題…あの、提出しないと卒業できないやつ…。」 

雪那「これは…また場面が飛んだ。家から電話してる。でもまだ大学の…4年生の多分10月。」

燦花(電話)「あ…あれ。ありがとうね。そっか、鎖鳥さんから話聞いたのかな…。あれね、なんとか間に合ったよ。…ごめんね、今寝起きで、まだ添付ファイルの中身見てないけど、二人で助けてくれようとしたんだよね。」 

雪那(大学生・電話)「良かった…。いや、見なくて良いよ。あ、でも鎖鳥さんもがんばってくれてたからやっぱり見て欲しいのかな…。いやね、鎖鳥さんが大体の研究テーマとか聞いてたらしいから、それを基に二人でそれっぽいものを作ったんだ。」 

雪那「そうだよね…。燦花さんはいつも自分の事だけじゃなくて周りの人の為にも頑張り過ぎてて、それが鎖鳥さんも私もいつも心配で。この時の燦花さんは特に抱え込み過ぎてたから、卒業論文のあらすじを先に提出するっていう課題…ひょっとしてそれが間に合わないんじゃないかと思って、鎖鳥さんと二人でとりあえずの形だけでも作って燦花さんにメール添付で送ったんだ。」

燦花(電話)「そっか。本当にありがとう。二人とも自分のことが大変なのに…ごめんね。」 

雪那「…私はもう10月なのにまだ就職先が決まって無かったってだけだけど、鎖鳥さんは…やっと出た内定先が11月の資格試験に合格しなかったら内定取り消しするって言って来てて…バイトも学費免除の為の勉強も相変わらず大変で限界寸前だったのに、燦花さんの為に一緒に頑張ってくれた。」

雪那(大学生・電話)「鎖鳥さんが言ってたよ。家族のことを相談しようとするにしても、試験で合格して喜ぼうとするにしても、今まで沢山のことをしてくれた燦花さんに対して不義理な真似をしようものなら罪悪感が勝って何もできなくなるって。」 

燦花(電話)「……うん。……そっか。そっか。」

雪那「…今もだけど、あの時の二人は本当に頑張りすぎだったよ。頑張りすぎで、でも本当に凄い人達だから、いくら私が心配してても結局乗り越えちゃうんだから…。」

燦花(電話)「あのね、雪那さん。」

雪那(大学生・電話)「どうしたの?」

燦花(電話)「私ね…。見返りが欲しかったわけじゃないの。恩人って思われたかったんじゃないの。」

雪那(大学生・電話)「うん。」

燦花(電話)「でもね?……いざ、こんな風に…こんなの、嬉しい。本当にありがとう。大好き。」

雪那(大学生・電話)「良かった。…えっと……あの、私も大好きだし、鎖鳥さんも絶対、燦花さんの事大好きだよ。」

燦花(電話)「しかも、もう二人居てね。月夜(つくよ)さんって女性の方と、そのお友達の男性の方。二人で作ったって言って、その方達も添付ファイル付きでメールくれたの。」

雪那「そうそう、この件以降その二人のお話は何度も聴いた。どんな方達なんだろうって気にはなってて…この頃には、人と仲良くなるのの怖さも大分薄らいでたけど…流石に恋人が怖いというのは残ってて、自分から紹介して貰ったりはできなかった。」



雪那「…また違う場面。今度はお父さんの車の中?」

雪那(大学生)「うぅぅ、緊張した!でもあの二人、怖い人達じゃなさそうで良かったよ。」

鎖鳥「だから言ったでしょ。男性の方、浦風(うらかぜ)君とは私が先に知り合っておいたけど多分大丈夫だろうって。」

雪那(大学生)「うん、ありがとう。ごめんね…ちょっと昔色々あって、恋人の人達ってどうしても怖くて。」

雪那「…ああ、できる事なら月夜(つくよ)さんとその友達の浦風(うらかぜ)君とは知り合わないまま卒業して逃げたいなんて思ってたのに、燦花さんがその2人も入れて5人で卒業旅行に行きたいって言うから…怖かったけど、卒業前にその打ち合わせとかで5人で会ったんだ。多分この場面はその帰りかな。」

鎖鳥「あ、あの2人にも燦花はちゃんと家に送り届けたってメール打っておこう。雪那。苦手意識の改善の為にも雪那が送って。」

雪那(大学生)「一緒に帰るって言ってたから月夜さんにだけで良いんじゃ」

鎖鳥「それじゃ意味ないでしょ。無理に仲良くしろって言ってんじゃないの。カップルを異常に怖がって必要な関わりができないで、必要な連絡すらできないんじゃこれから先色々困るって言ってるの。雪那の恋人恐怖症の改善のため、頑張れ。それにあの2人、燦花が言うにはまだ友達で付き合ってないらしいから!大丈夫だから!」

雪那「…そっか、あの2人が付き合い始めたの、卒業してからだったっけ。」

雪那(大学生)「…少し待って、心の準備を。」

鎖鳥「ん。頑張れ。」

雪那(大学生)「……打てた。……後は2人に送るだけ。」

鎖鳥「…万に一つ、せっかく頑張ったのに、頑張ったせいで傷つく事があったらその時は私がいくらでも助けるし慰める。前にも言ったでしょ、まな板雪那。」

雪那「…ありがとう、鎖鳥さん。」

雪那(大学生)「ありがとう…。頑張る。」

雪那「頑張れてるよ。ありがとう。」

雪那(大学生)「送れた!送れたよ、鎖鳥さん!」

鎖鳥「…ふぅ。よく頑張ったよ、雪那。」

雪那「このお陰で、ちゃんと5人での卒業旅行も楽しめたし…月夜さんと浦風くんともちゃんと普通にできてる。最近の…に限らず、いざ連絡を取るようになったと思ったら、月夜さんがくれる連絡はほとんどが浦風くんの事だから、なんだか羨ましいと言うか。」





景重「小幸(さゆき)さん、これどうすれば良いか分かります…?」

雪那(社会人)「…ごめんなさい、わからないです。どんなエラーが出たらこんな事になるんでしょう。」

雪那「わ、スーツ着てる。今の会社に入ってすぐの時だ。…卒業旅行飛ばしちゃうんだ。自分の夢なのに。」

景重「ああ、いえこちらこそすみません。ちょっと先輩に訊いてきます。」

雪那「…葉ノ下 景重(はのもと けいちょう)君。小さな会社だから、この年に入ったのは私と葉ノ下(はのもと)君の二人だけ。右も左も分からないし、分からなくても皆忙しそうにしてて訊きづらいしで心細かったけど、そんな境遇を共有できた相手が居たからこそ頑張れたんだと思う。」



景重「あ、おはよう雪那さん。今日も早いな。」

雪那「また場面が飛んだかな?喋り方からして、入って何か月か経った頃かな。」

雪那(社会人)「うん…昨日の帰りに色々頼まれてて…皆が来る前にやっておかないと。」

景重「……そういうの、始業時間の後で良いんじゃないの?」

雪那(社会人)「…そうなのかな。」

景重「分からない…けど、雪那さんさ、段々周りから都合よく面倒事押し付けられるようになって来てんじゃないの…。それだって俺は頼まれないで雪那さんだけだし。」

雪那(社会人)「そんな事ないと思いたいけど…。」

景重「とりあえず…えっと?ここに積んであるクリアファイル、半分貰う。今雪那さんがやってるのと同じ事すれば良いんだよな。」

雪那(社会人)「…うん。あの、ここの欄にある情報をパソコン上のファイルに…」

景重「ありがと。あと来週から始業前の掃除当番、雪那さん木曜日だけで、火曜日やらなくて良いから。」

雪那(社会人)「え、それはどうして?」

景重「…今まですまん。その、なんか俺がそういうの無くて、女性の先輩方と雪那さんとだけで掃除当番が回ってるの、気づいてたけど…中々言えなくて。昨日やっと言えた。これから火曜日は俺がする。」

雪那「……こんな事言ってくれる男の人、初めてだったから…。なんだか最近、嫌な事ばかりあるって思ってたけど…この夢は、私に良い事を思い出させてくれようとしてるのかな。」

雪那(社会人)「そんっな……ありがとう…ございます。」

景重「はは。なんで敬語に戻ってんのさ。」





雪那(社会人)「おはようございます!小幸 雪那(さゆき せつな)です。本日から手芸サークルの一員として参加させていただけるという事で、ありがとうございます!よろしくお願いします!」

雪那「あ、もう大分最近だ。去年の10月。」

宇鏡「当サークル代表の相生 宇鏡(あいおい うきょう)です。よろしくお願いします。…ま、お堅いのはここまでで。葉ノ下(はのもと)君と同じ職場の同期…って事は私とも同い年よね。今日は楽しんでいって?このサークルはみんなで楽しくしたいから、そんなかしこまらないで?」

雪那「…あはは。緊張するよね。付き合ってはいないみたいだけど、やっぱり男の人の紹介で女の人と会うっていうのは……しかも紹介してくれた副代表の葉ノ下君が初回は都合が合わなくて欠席なんだから。でも、偶然葉ノ下君が手芸サークルに参加してるって聞いて、またやってみたいって思ったんだもんね。頑張らないと。」

雪那(社会人)「あ…りがとうござい…ます。あ、ありがとう。今日は具体的にどんな事をする…の?」

宇鏡「まだ開始時間まで30分あるから、とりあえず最初に道具の確認かな。初心者の方の場合とりあえずうちで指定してる手芸セットと同じのを買うんだけど、雪那さんは元々手芸してた方だって言うから…色々持ってきてくれたわよね?」

雪那(社会人)「あ、はい!必要かも知れないと思ったものは大体。」

宇鏡「もし足りないものがあったら今日のところは貸して、帰りにこの注文票に必要なものだけチェックしておくから。それで…えっと、月会費の話は今は良くて…あ、道具の注文する際のお金、振込みにする?それとも現金にする?」

雪那(社会人)「あ、それは現金でお願いします。」

宇鏡「分かったわ。それじゃあ…そうね…あ、みんなが来る前に最近の活動についてまとめたしおりを作っておいたから、それを一緒に見ながら今日する事を具体的に説明するわね。」

雪那「このしおり、実は私が入る事になったからって急遽作ってくれたらしい。宇鏡さんは親切だけど、親切をし過ぎて…ふふ。燦花さん風に言うなら、宇鏡さんもまな板みたいなんだろうね。それを葉ノ下君はいつも心配してる。良い代表さんと副代表さんだと思う。」







SE:アラーム





雪那「…ん、うぅ。」



雪那「…もうちょっとだったのに…。」



雪那「でも良い夢見たなぁ。……うん!そのお陰で今日また頑張れる!はず!」

SE:バイブ

雪那「あれ、こんな朝に鎖鳥さんから…メール?」

鎖鳥(メール)「私からも弱音吐いて欲しいのなら、雪那の今の大変な事を今ちゃんと伝えて。読めそうな時読むし返せる時返すから。こんなの夜遅くに送って来たのは『今後気に病まないように気を付けよう』じゃなくて、今まさに気に病んでるんでしょうが、まな板雪那。」

雪那「まさか……あ、あのメール、送信予約時間間違えて夜中に送っちゃってる。」



雪那「『ごめんね、詳しい事はまたお時間ある時に送る!でもありがとう、鎖鳥さんやみんなのお陰で今日も頑張れるよ!…あ、あと!まな板は鎖鳥さんもだよ!』…ふふ。これで良し。」



完。
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