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2020年12月13日14:31

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声劇台本を作成しました!『彩への痕(あや への あと)。』

『彩への痕。』




※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※




【想定人数】

女性2名



【キャラクター紹介】

相生 宇鏡(あいおい うきょう):高卒から社会人9年目。女性。手芸サークルの代表。サークルメンバーの居ないところで愚痴を語りたいらしい。

遊語 鎖鳥(ゆうご さとり):大卒から社会人5年目。女性。友達経由で最近仲良くなったばかりの宇鏡の愚痴に付き合ってあげるらしい。


【想定時間】

35分程度



※ この作品は声劇台本「二方美人。」のシリーズ作です。
単独のお話としても楽しんでいただけるよう作っていますが、
もし良ければ「二方美人。」はじめ、シリーズ内の他作品にも目を通してくださるとさいわいです。

※「二方美人。」へのリンク。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1958862956&owner_id=24167653



※「二方美人。」シリーズ及び関連作品のみをまとめたリンク。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964303733&owner_id=24167653

※関連作品「珠玉の真面目(しゅぎょくのしんめんもく。)。」へのリンク。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964552701&owner_id=24167653

※関連作品『一事万象、万事一象(いちじばんしょう、ばんじいっしょう)。』へのリンク。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972397251&owner_id=24167653






本編


鎖鳥「えっと、カニクリームコロッケと大根サラダとポテトサラダ、揚げタコ焼き、あと焼きおにぎりが二個。お酒の方は『朝焼け』が私で『千里(せんり)』と『アウトサイド』が相生(あいおい)さん。さっき追加した注文は全部来たね。」

宇鏡「ほんと注文してからすぐに来るのね。」

鎖鳥「良いでしょ。来るの早いしお客さん少ないから、ここ好きなんだ。」

宇鏡「へえ、普段も人少ないんだ。良いわね。…サラダ分けて良い?」

鎖鳥「お願い。」

宇鏡「はい。……あ。……まあ、こんな感じで良い?」

鎖鳥「うん、ありがと。」

宇鏡「……このポテトサラダ、おいしい。近所にあったポテトサラダのおいしいお総菜屋が少し前…10月頭くらいに移転しちゃって。悲しくってそれ以来ポテトサラダなんて食べてなかったのよ。」

鎖鳥「自分では作らないの?」

宇鏡「そりゃあね…そこまでの気力はね。」

鎖鳥「まあ、大変だよね。」

宇鏡「カニクリームコロッケ、鎖鳥さんも食べる?半分にしようか?」

鎖鳥「私は良いよ。」

宇鏡「…っ……『アウトサイド』って初めて飲むけど、これかなりきついわね…でもこのくらいの方が今日はちょうど良いかも。…この、なんだか癖になる感じ。ああ、あったまる…。」

鎖鳥「初めてだったんだ。それ本当にきついらしいから、一気に飲まないことだよ。職場の飲み会でも、昔罰ゲームなんて言って大量に飲んて案の定吐いた上司が居た。」

宇鏡「罰ゲームって…そういうノリ、まだあるのね。」

鎖鳥「いつの時代も、やる人はやるでしょ。もうこれ以上問題起こさないでくれる事を願うばかりだ。」

宇鏡「その『朝焼け』だっけ?それはどんな感じ?」

鎖鳥「オレンジの風味があって飲みやすいよ。私はよく飲んでる。」

宇鏡「そっか…私の地元にもあったら飲んでみようかしらね…。」

鎖鳥「薦めておくよ。ただそれより今はね、愚痴を言いたいからってわざわざこっちに来てるんでしょ?もう飲み始めて1時間経ってるのに結局本題に入ってない事が気がかりなんだけど。」

宇鏡「……ちょっと待ってね…。ちゃんと話すから…でも、もっとお酒入れないと…あまりに馬鹿みたいすぎて、普通じゃ言えないから。……こっちの『千里(せんり)』はいつも飲んでるやつ…。ちょっと臭いはきついけど、昔から気に入ってるんだぁ…。初めて飲んだお酒でね…。」

鎖鳥「そう言って結構飲んでるけど、本当に大丈夫?」

宇鏡「大丈夫…なんだけどね。んぁ…本題、本題………。そのさぁ、なんかもう自分が嫌になるって言うかさぁ。」

鎖鳥「はあ。」

宇鏡「私ってほら、手芸サークル運営してるって言ったでしょ?毎週土曜日にやってて、今日もその帰りなんだけど。『影縫い(かげぬい)』っていう。」

鎖鳥「らしいね。雪那(せつな)も一緒に運営してるって。」

宇鏡「そうそう、最初は普通に会員。教えられる側って事で入ってきてくれたんだけど、しばらくしてから私が頼んで副代表、運営したり教えたりする側になってもらったの。ほんとね、入った時からずっと、何の気ない話をする時は大概鎖鳥さんの事ばっかりなのよ、あの子。」

鎖鳥「子って。同い年でしょ。今年27。」

宇鏡「分かってるけど…ほら、なんかかわいいから。」

鎖鳥「まあね。」

宇鏡「…私もね、全く進歩がないわけじゃないと思うんだ。23の頃と比べたら、ただ老けただけじゃなくて、いくらかは成長もしてる筈…なのにね。そのサークルには副代表がもう一人居て、それが男なんだけど、まあ私はその男に23の時に振られてて。」

鎖鳥「うん。」

宇鏡「それはもう良いのよ。色々あって、もうなんていうか、なんでかは知らないけど、この人にとって私はそういう相手じゃないっていうか、まあ私だってダメなところはいっぱいあるから、そりゃ振られるかって納得はしたし。それでもずっと副代表として運営手伝ってくれて嬉しかったし。雪那さんがあいつの紹介で入ってきて、私の事は相生(あいおい)って名字で呼ぶくせして雪那さんの事は会社の同僚だからって言って、雪那さんって名前で呼ぶのにもいちいち苛ついたりとかして、ほんとあの時は馬鹿みたいにあいつの前ですねてたりとかしたけど……それもね、別に。何やってんだ馬鹿って思って、ちゃんと割り切れたからこそ、雪那さんを副代表にって私から誘ったわけだし。」

鎖鳥「…雪那はほんと、そういうのに巻き込まれる体質なんだから。」

宇鏡「どういうこと?」

鎖鳥「昔色々あったみたいで、カップル恐怖症とか色恋沙汰恐怖症みたいな。男女に挟まれるのが雪那にとっては凄く怖い事でね。」

宇鏡「それは悪い事しちゃったわね…流石に雪那さんに何かひどい態度取ったつもりはないけど、やっぱり怖かったかな…。」

鎖鳥「良いんじゃない?それが本当に嫌だったなら、私と三人で遊ぼうなんて言って引っ張ったりしないだろうし。三人で居た時も雪那、相生さんになついてる感じだったから。多分そんな嫌な事してないんでしょ。」

宇鏡「そう…よね。うん…一応謝ってはおくけど…。」

鎖鳥「それで、本題の続きは?」

宇鏡「……まあ、ね?私だって別にそんな、こう…世の中に男があいつしか居ないわけでもないし、なんかちょっとした事でいちいち羨ましがったり、大事にされてない気がするなんて思ってイライラしたり…いや、そもそも一番大事にしてもらおうなんて関係じゃないんだから当たり前だけど。そんな事もなく、比較的穏やかで居られるようになってきてたのよ。でもね…この前新しく入ってきた縫(ぬい)ちゃんって女の子がね、あいつの事好きだって。」

鎖鳥「縫(ぬい)さんって人はほんとに子って年なの?」

宇鏡「今年で23歳。社会人一年目の子。」

鎖鳥「その男の人の方はたしか私達と同じ、今年27だっけ。」

宇鏡「?…言ったっけ。まあ良いや。そう、27。私と雪那さんとその男は同い年で縫ちゃんとは4つ差。……その男はね。理由は知らないけど、ずっとそもそも誰とも付き合う気が無いなんて言ってたから、ああ、この子も私と同じく残念な事になるかな。なるべく傷つかないと良いな。なんて思いながら、時々その、縫ちゃんの相談に乗ってあげてたのよ。」

鎖鳥「はあ。」

宇鏡「そしたらなんでか!今日サークルが始まる前に、縫ちゃんがこっそり私のとこに来てね!?付き合う事になったって言いだしてね!?嘘でしょ!?って思ってたら、解散した後あの男から電話が来て、あの子と付き合う事になったから、一応報告しておく、なんて!!いやもう、別に!?あいつが誰と付き合うについても私がどうこう言うものじゃないし、むしろそんな報告も普通は要らないところだけどさ!…私はダメで、あの子は違って、なんでよもう……しかも縫ちゃんって!なんで私が自分のサークルで、教え子に……あの男の名前がね!?その、景色のけの字が入ってるんだけど、サークル名の『影縫い』ってそうなってくるとなんかあの二人が作った、あの二人のサークルみたいな感じになっちゃうでしょ!?っていうかその、何、縫ちゃんって!糸が二人を逢わせましたって!?逢わせるなよ!私のサークルは出会い系でもなければ合コン会場でもないっての!クリスマス前だからって何張り切ってんだっての!相談乗ってあげた私は二人にとってキューピットならぬサンタさんかなって!なりたくないってのよ!サンタさんなんかに!」

鎖鳥「ほら、水も飲みな。」

宇鏡「ありがと…。…分かってるのよ。あいつが誰とも付き合う気がない、恋愛に興味がないって言ってたからって、別に一生そうなわけじゃないだろうし。でも、私が弱いせいで……なんか私はダメで縫ちゃんは良いんだって。私という存在が否定された気分っていうか、あの子より人として下って言われたみたいな…言われてないんだけど。被害妄想っていうか、被害者意識っていうか……雪那さんだって他の人達だって、沢山私の存在を認めて、大事にしてくれてるのに。とことん脆くって。すごく馬鹿だって分かってるからこそ、こんな話、雪那さんにもできなくって。」

鎖鳥「友達の友達くらいの方がまだ意地張らずに喋れそうだった?」

宇鏡「鎖鳥さんの事も友達の友達じゃなくて、友達だと思ってるわよ…。」

鎖鳥「ああ、いや別に意地悪で言ったつもりはないよ。誰には言えて誰には言いづらいみたいなの、あるよねって話。分かるから大丈夫。雪那はもし知ってたら、そんな事言わずに話してほしいのにって言うんだろうけどね。」

宇鏡「あの子は…そうね。人が良いものね。ただ今回はそもそも縫ちゃんとあいつが付き合い始めた事、多分まだ知らないんじゃないかな。あいつの『お前には居づらい思いをさせるかも知れないから先に言っておく』って言い回しからして、雪那さんには言ってないと思うから。」

鎖鳥「…その人、わざわざ相生さんにだけ、付き合い始めた事言ったんだ。」

宇鏡「変に律儀というか…私が振られた事ずっと引きずってた事も知ってたから。」

鎖鳥「相生さんだけじゃなく、その人にとっても今までの3年?4年?かなり気まずかっただろうに。その人もそんなに手芸好きなの?」

宇鏡「どうだか。ほんとは最初サークル運営、他にも沢山人が居たんだけど、サークルできた直後に他の人みんな辞めちゃったから私が一人で運営するって事になってね。沈んでたところにあいつが急に道端で声かけてきて、今にも死にそうな顔してるからって言って話聞いてくれて。その事話したら手伝うって言って、それで手芸始めたって経緯だから…あいつは、少なくとも当初から手芸が好きだったわけじゃないのは確かね。」

鎖鳥「そんな経緯だったんなら、誰だってこの男自分に気があるって思うだろうね。」

宇鏡「いや気があるっていうか…うん、まあね…?好かれてるとは思ってた。だから振られた当初は、まさか振られるとは思わなくって本気でへこんだわ…。これでももてるんだけどな。」

鎖鳥「別の人探したりしなかったの?」

宇鏡「探したけど…今はなんかもう良いやってなった。向こうから言い寄ってくる男は大体みんななんか違ったし。お金とか見た目とかの問題じゃなくて、人格からして受け付けない人にばっか好かれても意味ないっての。」

鎖鳥「気持ちは分かるけど、後悔のないようにね。」

宇鏡「分かってる…。あーあ。あいつって手芸楽しいのかな……楽しんでくれてるんだよね…。最初は多分、私の事を可哀想に思って一緒にやってくれたんだと思うのよ。悪い意味で言ってるんじゃないけど。でも今ではそうじゃなくて、ちゃんと楽しんでくれてる…んだと思いたい。考えたくなかったけど、今もまだ私の事を可哀想に思って手伝ってくれてるだけで、別に楽しくはないのだとしたら…申し訳ない。」

鎖鳥「良い年した大人なんだから、やりたくてやってるんでしょ。可哀想だからにせよ、楽しいからにせよ。」

宇鏡「楽しんでてほしい…。」

鎖鳥「相生さんさ、その人の事なんで好きになったのか覚えてる?」

宇鏡「多分だけど…私の頑張りを認めてくれた気がしたのよ。その時の私は、誰も何も私の存在…存在価値とか存在意義とかを認めてくれてない気がしてて…だから手芸サークルを一人でも何とか運営しようって頑張ってたのも、今まで頑張ってきた手芸を人に教えるのが、私の存在価値を作るための手段っていうか…。あの男が『良い奴が良い目を見ないのは嫌だから』とか言ってたっけ…手伝うって言ってくれてね。救われた気がして、それで…なんかあの人が好きっていうか、私にとって得だからみたいな、なんか利己的な理由で好きになってたのよ。だからこそ、振られてしばらくして『まあ振られて仕方ない』って納得したところがあって。」

鎖鳥「…その人こそサンタさんみたいな事言ってたんだ。それと、なんかさっきも言ってたよね、自分の存在って。自分はダメなのに縫ちゃんは良いんだって、自分の存在が否定されたような被害妄想をしてしまっている、みたいな。」

宇鏡「そう…ほんっとにもう…嫌になる。ちょっとは強くなってきたと思ってたのに。」

鎖鳥「理屈が分かってる上で頑張って強がってるんだったら、まあ良いんじゃない?今だってその男の人や縫ちゃん、あと雪那あたりにその弱いとこ見せないために、私に話聞いてもらってるんだから。」

宇鏡「だって…これ以上みんなに迷惑かけられないし、自分でも馬鹿なの分かってるから。」

鎖鳥「私くらいの部外者の方が聞き役に適任なんだったら、まあ話聴くくらいできる範囲で手伝うよ。」

宇鏡「ありがと…強がる、か…。サークルのみんなの前ではちゃんと強がる。…あいつにも事ある毎に言われてたのよ。頑張れって。頑張る……。勝手な被害妄想まき散らすのもう嫌だ。私も鎖鳥さんの愚痴とか聴こうか…?」

鎖鳥「また今度ね。その時は私の方が宇鏡さん…あ。」

宇鏡「あ…。宇鏡さんで良いのよ?私だって鎖鳥さんって呼んでるんだし。」

鎖鳥「それもそっか。その時は私の方が宇鏡さんのとこに行かせてもらおうかな。仕事の事で愚痴は山ほどあるから。」

宇鏡「なんなら今聴こうか?」

鎖鳥「今日の愚痴役は宇鏡さんだから。私の事は良いの。」

宇鏡「ねえね、鎖鳥さん。」

鎖鳥「どうしたの。」

宇鏡「今あいつに電話して良いかなぁ…。付き合い始めたって報告来た時、ちゃんとおめでとうって言えなかったから。」

鎖鳥「良いんじゃない?」

宇鏡「うん、電話、する…。」

鎖鳥「…私は一旦席外した方が良い?」

宇鏡「見守ってて…?」

鎖鳥「分かったよ。」

宇鏡「ありがと……………あ、景重(けいちょう)?ごめん、私。相生。今大丈夫?……良かった。そのね、さっきちゃんとおめでとうって言ってなかったなって思って、ごめんね。驚いちゃって言いそびれた。うん…おめでとう。縫ちゃんともども、これからもよろしくね。それと一応、縫ちゃんも良い気しないと思うから、これからはまた葉ノ下(はのもと)君って呼ぶわね。……ばぁか、普通でしょ。うん、ありがとう。また来週ね。」

鎖鳥「ちゃんと言いたい事全部言えた?」

宇鏡「…うん。少しすっきりしたかも。」

鎖鳥「お疲れ様、頑張ったね。」

宇鏡「良かった…頑張れた。」

鎖鳥「明日何か予定ある?」

宇鏡「?…特にないわよ。」

鎖鳥「そう、なら良かった。」

宇鏡「…?」

鎖鳥「…あともう少しだし、一気に食べ切っておこうかな。」

宇鏡「…んぅ。」

鎖鳥「…ふぅ。なんとか。」

宇鏡「…。」

鎖鳥「…。」

宇鏡「…。」

鎖鳥「…うん、寝そうな目してた。」

宇鏡「…。」(寝息)

鎖鳥「頼むから吐かないでよ。」








鎖鳥「重いな…。」







宇鏡「ん…。あれ、ここは…?」

鎖鳥「おはよう。吐かないでくれて助かったよ。」

宇鏡「あ…もしかして、ここって。」

鎖鳥「私の部屋。私のソファ。こうなるかもって思ってすぐ近くの飲み屋にして良かった。」

宇鏡「ごめんなさい…。あの、お金」

鎖鳥「それは後で良いよ。体調どう?」

宇鏡「大丈夫…気持ち悪くはない。頭はちょっと痛いけど…。」

鎖鳥「ほら、頭痛止めの薬。飲めない薬とかない?」

宇鏡「たしか無かったと思う…ありがとう。」

鎖鳥「良かったら泊まってく?いつも一人で暇だし、私としてはその方が嬉しいんだけど。」

宇鏡「そうなの…?でも分かる気がする…。良いなら、お願い。」

鎖鳥「ん、じゃあそういう事で。入れそうだったらお風呂入ってくる?着替え貸すよ。あ、あと予備の歯ブラシも。」

宇鏡「あ、そっか…ありがとう、借ります。」

鎖鳥「お風呂は向こうね。私はもう先に入ってきたし、別に気にしないで良いからさっぱりしておいで。」

宇鏡「うん…。」









宇鏡「その、ありがとうございました…お風呂、お借りしました。」

鎖鳥「かしこまらなくて良いって。むしろちょっとくらい何かあった方が賑やかで良いんだよ。」

宇鏡「あはは……ありがとう。」

鎖鳥「じゃあもう髪も乾かしてきたみたいだし、お布団もう出しておいたから電気消して寝ちゃおうか。」

宇鏡「ええ、そうね…。私どっち使ったら良い?」

鎖鳥「青い方。そっちが来客用だから。」

宇鏡「ありがと。おやすみなさい…。」

鎖鳥「おやすみなさい。」





宇鏡「…鎖鳥さん。」

鎖鳥「どうした?」

宇鏡「今日はほんと、何から何までありがとう。そんな数回しか会ってないのに、こんな。」

鎖鳥「考えてみればそうだっけ。雪那抜きで二人だけで会ったのは初めてだし、ね。」

宇鏡「あ、そっか。そう言えばそれ今日が初めてだ。」

鎖鳥「今度雪那に言ったら怒るかな…?いや、無いだろうけど。」

宇鏡「雪那さんが怒ってるとこ見た事ないわね。鎖鳥さんはある?」

鎖鳥「私もないな。たまにくらい怒った方が健康的だと思うけど。」

宇鏡「ふふ。」

鎖鳥「そうそう、ところでそのお布団だけど。」

宇鏡「うん?」

鎖鳥「思い出した。今年の二月に、ずっと音沙汰なかった弟から急に電話がかかってきた時があってね。飲みすぎて動けないから助けてって。結局その時もそのお布団出して寝かせてあげたんだよ。」

宇鏡「あら、弟さん居るの。」

鎖鳥「二人居る。もう一人の弟とは一切交流がないけど。宇鏡さんは兄弟とか居るの?」

宇鏡「いや、一人っ子。」

鎖鳥「そっか。……今言った弟、緋鳥(ひとり)って名前なんだけど、紹介しようか?」

宇鏡「……いくつ?」

鎖鳥「今年23。まあ彼女居るかもしれないけどね、良い奴だよ。背丈は宇鏡さんと同じくらい…いや、若干緋鳥の方が大きいかな…?」

宇鏡「4つ差ね…。もしかしたらいつか頼むかも。」

鎖鳥「意外と食いつくね。」

宇鏡「…なんていうか、そんな気分っていうかね。なんかようやく区切りがついた…?納得行った…?よく分からないけど、なんかね…心の整理がついてきたって事かしらね。何年かかってる事やら。」

鎖鳥「はは。良いんじゃないの?」

宇鏡「まったく。他の人はこんな遠回りばっかしないんだろうなって思うと、ほんと自分が嫌んなるわ。本当に面倒くさい。」

鎖鳥「意外と他の人も他の人で、大分面倒くさいし大分遠回りしてるもんだよ、きっと。知ってる限りでも緋鳥も雪那も、大学で知り合った他の友達も。」

宇鏡「鎖鳥さんも?」

鎖鳥「私…?どうだろ。ただまあ、そうだね…。宇鏡さん。」

宇鏡「なあに?」

鎖鳥「他の誰にも言ってない事、言ってあげようか。」

宇鏡「え、なになに?」

鎖鳥「私さ、誰かに相談とか愚痴とか聴いてほしいけど誰にも言えないってなった時、自分の脳内に居る人にむかって独り言言って、それで聴いてもらってる気になって解決してるんだ。それも中学時代からずっと。」

宇鏡「なにそれ、イマジナリーフレンド?」

鎖鳥「かもね、詳しく知らないけど。その脳内に居る人は屋烏(おくう)って名前で、性別はその時の気分で変わる。」

宇鏡「設定あいまいすぎない!?名前は何か意味あるの?」

鎖鳥「屋上の烏(カラス)で屋烏。屋烏の愛って慣用句があるでしょ?好きな相手の事があまりに好きすぎて、その人の家の屋根に留まってる烏(カラス)の事すら愛しいって事なんだけど。」

宇鏡「へえ、そんな慣用句が。」

鎖鳥「烏(カラス)“すら”愛しいって事はつまり、普通、烏(カラス)は嫌われるのが当たり前って事だから。嫌われ者だけど好き勝手どこにでも飛んでいける烏(カラス)って良いなって思ってね。」

宇鏡「そっちの設定はやけに細かいわね…。世の中には凄い事してる人が居るものね。…今でもしてるの?」

鎖鳥「勿論。……そんな手段確立するくらいなら、もっと素直に色んな人に弱いとこ見せられるようにする方が早いんだろうけど。私は私なりに頑張った結果がこんなね。多分だけど、意外とみんな言わないだけで面倒なものくらい抱えてるもんなんだよ。」

宇鏡「いやあ……そう…?なのかな…鎖鳥さんはその中でも格段にすごいもの抱えてる方だと思うけど…いや、でも本当に頑張った結果なんだろうなっていうのは何となく分かる。」

鎖鳥「宇鏡さんも、自分では面倒くさすぎて嫌になるんだろうけど。私から見たら頑張ってんなって思うよ。誰か蹴飛ばしたり、部下を怒鳴りつけたりして鬱憤晴らしてんじゃなくて、相手選んで話聴いてもらってどうにかしようって言うのならね。」

宇鏡「…はぁい。頑張る。」

鎖鳥「その意気だ。頑張ろ。」

宇鏡「…頑張る。」

鎖鳥「縫(ぬい)ちゃん、無邪気にクリスマスデートの相談してくるかもよ。」

宇鏡「はぁぁ…。ありそう…。もう、あああああ……。」

鎖鳥「色々手は貸すから、頑張ろ。縫ちゃん達のサンタさんになってあげて。そしたらほら、私が宇鏡さんのサンタさんになったげる。」

宇鏡「サンタさん?何くれるの?」

鎖鳥「んっと、楽しい時間とか?あと何か簡単な料理作るくらいなら。」

宇鏡「……私お好み焼きが好き。サンタさん……あーあ。頑張る!あーあ、あーっあ、サンタさんが見ててくれてるんだものね。まったく!私もサンタさん頑張る!」





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