「異世界からの企業進出1」本

『異世界からの企業進出 1』
＜ストーリー＞
　ブラック会社を勢いで辞めた田中次郎はふと見たチラシから謎の企業の入社試験を受ける。そこにいたのは美しいダークエルフで、その会社は対勇者用にダンジョンのテスターを募集するための異世界の魔王の会社だった・・・
＜コメント＞
　まあ、異世界ものには既に飽きてきたのだけれども、今回はなんと言ってもあのハヤカワ書房から出ている本と言うだけあって、一風変わった異世界ダンジョンもの。とはいえ、異世界側から地球のしかもニッポンに会社が出ているとか、ダンジョン征服のための装備が有料であるとか、ほとんどゲームに準じているだけでおかしいのだけれども、そこはまあ、「ニッポンのファンタジー世界ものというのは基本ゲームで出来ている」という前提のよう。だから主人公がふと「ステータス」を開いたら実際に出てくるというのも既にお約束。
　最後まで読み通せたのはやはりさすがハヤカワだけあって文章がしっかりしていることと、戦闘などがきちんと描けていること。いや、異世界ラノベってそこがネックで以前も書いたけれども某ファンタジーの異世界ものの文庫本では戦闘がほとんど擬音で構成されていて、しかも技の名前の連発だけで戦闘がさっぱり盛り上がらなかったものだ。
　この本では戦闘シーンで誰が何をやっているかがきちんと描写されているだけまだまし
というところ。
なんと言っても「皆が魔法使いの後衛を希望する中、ただ一人前衛の剣士を希望する主人公」というある意味最強にリーダビリティがあるというか、本当の根性がある人物を主役に据えたことで物語にブレがなく、ファンタジーでありながら現実の会社における出世物語の部分を描いているのが実に現代的であるといえる。
　さらに魔王配下の魔物や魔将軍なども実に魅力的に描かれ、中でもダークエルフの女上司スエラが実に可愛い。なんとなく先が読みたくなってくるというだけでラノベとしてもファンタジーとしても良く出来ている。

異世界からの企業進出!? 転職からの成り上がり録1 入社篇 (ハヤカワ文庫JA)
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