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2020年03月05日05:39

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勝利の秘訣は敵の重心を叩くこと

力学の法則は戦争にも当てはまります。敵の完全な打倒とはなにか。「戦争の目標は、その本来のコンセプトからいえば、つねに敵の完全な打倒でなければならない」とクラウゼヴィッツは言います。完全な打倒は言い換えれば完全な勝利です。だがそのために敵の国土を全面的に攻略する必要は必ずしもないのです。

たとえばもしロシアへ侵入したナポレオンがスモレンスクとモスクワを結ぶカルガの街道に布陣していた12万のロシア軍を補捉し粉砕していたら、たとえロシアの広大な国土をすべて制しなくとも、モスクワ占領で講和を結べたはずだ、とクラウゼヴィッツは見る。

なぜなら、首都モスクワとロシア軍のふたつがロシアの重心なのだから、それでとどめは刺せたはずなのです。これらの戦例からクラウゼヴィッツは戦争における重心の理論を展開します。

「物体の重心はつねに質量の最も多く集合している点にあり、また重心に加えられる打撃はその物体にもっとも有効に作用する。さらにまたもっとも強力な打撃は力の重心によって与えられる」という力学の法則を引いて、クラウゼヴィッツは、「これらの事情は戦争においても同じである」と説いています。

「小はつねに大に依存し、また重要ではないものは重要なものに、偶然的なものは本質的なものに依存する、この原理こそわれわれの考察を導く指針でなければならない」というのがクラウゼヴィッツの哲学です。たとえばアレクサンドロス大王やフリードリヒ二世(大王)の場合、彼らの重心は彼らの軍隊です。

だから彼らの軍隊が粉砕されたら、その時点で彼らの敗北は決まったでしょう。また党派のために分裂している国家の場合は、重心は首都にあります。したがって首都の占領で勝敗は決せられます。列強に依存している弱小国の場合はどうかというと、重心はこれらの同盟諸国の軍隊にあります。

そして諸国が集まって結ぶ同盟の重心はそれぞれの国の利害の一致点に見出されます。だから利害の不一致を衝くことが勝負の決め手となります。国民総蜂起のゲリラの場合は主要な指導者に重心があります。指導者を倒せばゲリラは崩れます。このように攻撃は敵の重心がどこにあるかを見極めて行わなくてはならないとクラウゼヴィッツは述べています。

ひとつの戦闘で勝利したら、敵に体勢立て直しの余裕を与えず、引き続き同じ方向で攻撃していく必要があります。「敵の重心をたえず探索し、わが方の全体的勝利を目指して、わが方の全体を賭けることによってのみ、敵を完全に打倒しうるだろう」とクラウゼヴィッツは言います。

敵本体を誘い込んで粉砕した毛利元就の秘策。山陽の守護大名大内義隆を弑逆した陶晴賢と対峙した毛利元就は秘策を練った。晴賢の軍勢は二万、対する毛利勢はせいぜい四千。まともにぶつかったのでは勝ち目がない。元就は厳島の有浦に宮尾城を築き、陶を裏切った武将に守らせ、陶軍を挑発に乗った晴賢は二万の本隊を率いて厳島に渡る。

しめたとばかり元就は暴風雨のなか、二手に分かれて厳島に上陸し、嵐の去った早朝、総攻撃を開始。不意をつかれた晴賢勢はあわてふためき、総崩れとなり、島に閉じ込められて逃げるに逃げられず、晴賢は自刃、死者四千を数えた。これが世にいう厳島の合戦(1555年)で、陶氏はいっぺんに没落、元就が山陽の覇者となるのです。


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