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2019年12月20日09:27

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「強健術」案内107

前回に引き続き『強い身体を造る法』に紹介される「斜腹筋鍛錬術」を見ていきます。

(詳細なる説明)
斜腹筋鍛錬術
横腹の筋肉と腹とに力の這入る方法
(イ)、両足を二尺ばかり離し、確(しっか)り踏ん張って立ちます。両足の角度は直角。両膝を曲げず。眼光を定めます。
(ロ)、臀を充分に突き出して腰を反り、両腕に力を入れず。掌を上に向けまして、スーッと軽く、両側から頭上にあげながら、静かに息を充分吸い込み、十指を組んで後頸(くび)に当てます。(此の時動(やや)もしますと、胸を張り、力をこめ、両腕を固くして終いますが、鳩尾(みぞおち)から上は何時でも柔軟であることを忘れてはなりませぬ。)
(ハ)、胸は柔らかにし。只(ただ)腰だけ反らし、腹を前に突き出さない様にします。腹はスッカリ凹んでおります。上体の重さは両足爪先に落ちます。(以上準備姿勢)
(ニ)、腕には力を入れず、両手を組んだまま、再び頭上にあげ、ただ其(そ)の重さで落つる様に、自然と額の前から下ろしまして、(力は入れない)息を押しつける様に吐きながら、ウンと腹に力をこめます。(上体を臍の上に畳み込むように致します。)
(ホ)、胸と肩とは、おとして柔軟にします。緊張して固くなっていますのは、只(ただ)腹部だけです。形は鞠の様に真円(まんまる)くなります。
(へ)、首は何時でも正面に向いて居(お)ります。
(ト)、回数は五回。
(チ)、息を吸い込みます時には、力を抜いて腰を反り、(此(こ)の時上体の重さは爪先に落ちます。)息を吐き出しました時には、水落をおとし、胸を前に屈(かが)め、腹の形を真円(まんまる)く緊張させます。(此の時上体の重さは踵に落ちます。)全練修法を通じて此(こ)の要領で致します。つまりこれが基本動作となります。
(リ)、時々数回づつやりますと、健康上、非常の効能があります。殊(こと)に腹の力の弱い人、若(も)しくは胃拡張で、鳩尾(みぞおち)の所がふくれている人などが、少しづつ続けてやりますと、直(す)ぐに其(そ)の悪い形を改め、腹の力を養うことが出来ます。そして白隠の所謂(いわゆる)、篠打(しのう)ちせざる鞠は愚か、鉄板で張り詰めた球のようになります。(強い身体を造る法 P.105〜107)

前回見ましたように、この型は腕にリードされて上体を伸ばして吸気し、腕を組んで下に落とす勢いで体をかがめ、息を吐き出しながら下腹に力を込めます。

この時の腕の使い方を「ただ其(そ)の重さで落つる様に、自然と額の前から下ろしまして、(力は入れない)」と解説していますように、腕の力を抜いて重力にまかせて自然に下ろします。

また、この時の力の入れ方を「そうしますと自分の力と、腕の重さと、引力の働きとを最も自然に利用することが出来ます。此処から『力は垂直に使用した方が最も有効である』と云う原則を見出します。即ち力は下へ下へと使います」(強い身体を造る法 P.37〜38)とも解説していますように、これは重力を利用した「力を垂直に利用する」原則を応用し、その腕の落ちる「利動力」を利用して「腹に力を込める」型であると言うことが出来ます。

つまり、これまでは「脚の踏みつけ」を利用して「腹に力を込めて」いた方法でしたが、今回は「脚」が固定されてしまったので、「腕」の「利動力」と「呼吸」によって「腹に力」を入れるようにしたのです。

この時の姿勢は、「水落をおとし、胸を前に屈(かが)め、腹の形を真円(まんまる)く緊張させます」と解説されていますが、その様子は横から撮った写真を見れば、よくおわかりになると思います。

さらに、この「斜腹筋鍛錬術」を「全練修法を通じて此(こ)の要領で致します。つまりこれが基本動作となります」とこの型が、すべての型に共通する基本であると解説している点は大変重要です。ですから、春充はこの型を最も重視し、後にこの型によって「聖中心落節」という体験をすることになるのです。

また、この「水落をおとし、胸を前に屈(かが)め、腹の形を真円(まんまる)く緊張させ」る姿勢を執るようになった大きな理由の一つは、今回の説明の中に「白隠の所謂、篠打ちせざる鞠は愚か、鉄板で張り詰めた球」のようになると引用している白隠禅師の著作『夜船閑話』など、江戸後期に流行した「養生法」の書物に説かれる「丹田」を鍛える養生法の影響です。

これらの一部につきましては、以前「坐禅帯」について解説した時(8月13日掲載)にイラストと共に触れましたが、その姿勢は今回の「斜腹筋鍛錬術」と同様、腰を丸くして体をかがめて下腹に力を込める方法と同じです。
この方法と、強健術の関係、また後に春充はこの姿勢を「邪道」と呼ぶのですが、それはなぜなのかは、刊行予定『聖中心伝−肥田春充の生涯と強健術−』(青年編)及び(壮年編)で多くのページを割いて詳細に分析していますので是非ご覧下さい。

(写真は、「斜腹筋鍛錬術」を行う春充)

連続写真GIFリンク先→ http://hidashiki.na.coocan.jp/
「肥田春充師活動写真」の「斜腹筋鍛錬術」をご覧下さい。
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