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2019年11月26日18:50

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2019年11月 15日(金) ドイッチェオーパー・アム・ライン(デュイスブルク)  「ジークフリート」

14日は私は1日お休み。デュイスブルグのホテル・コンティからエッセンのシェラトン・エッセンに移動。
午後4時にメルカトールハレの下のCITYPALAISのカレー・ウント・バーCurry & BarでF氏と待ち合わせる。私は4時少し前に到着しランチ・メニューのヴィーナー・シュニッツェル(0.2lのソフト・ドリンク付き)€7.60を注文。ここは安くてまあまあうまい。そして5時過ぎに劇場に向かう。劇場前で黒い帽子をかぶり、顔を布で隠してボロの長いコートを着て自転車を引きずっている変な人に出逢った。物乞いかな?劇場に入るのが少し早かったので、2人で客席前の椅子に腰かけて話をしていた。やや!またさっきのおじさんが現れた。私は冗談半分に「ヴォータン、いやさすらい人じゃない?」と言ったら隣に座っていた人が笑っていた(F氏によればその後客席にも出没。6時開演。席は「ワルキューレ」と同じパルケット右3列目60番。€66.00。
演出 ディートリッヒ・W・ヒルスドルフDietrich W. Hilsdorf、舞台美術 ディーター・リヒター、衣装 レナーテ・シュミッツァー、照明 フォルカー・ヴァインハルト、ドラマトゥルギー ベルンハルト・F・ローゲス。指揮 アクセル・コーバー。 配役 ジークフリート コービー・ウェルチ、ミーメ コーネル・フライ、さすらい人 ジェームス・ラザフォード、アルベリッヒ シュテファン・ハイデマン、ファフナー ルカス・コニエツニーLukasz Konieczny、エルダ スーザン・マックリーン、ブリュンヒルデ リンダ・ワトソン、森の小鳥 Julia Sitkovetsky。デュイスブルガー・フィルハーモニカー。
第1幕。イルミネーションのついているプロセニアム・アーチはそのまま。左手のプロセニアム・アーチの外には何かポスターのようなものが貼ってある。その内部の壁は波板ではなく凹凸のある鉄板で出来ていて、中央付近に頑丈そうな出入り口。その左にキッチン。右にはかなとこ。舞台中央手前には大小の平たいドラム缶のようなもの。左手にはストゥール2脚。右側に木の箱。
ミーメが登場し、VHSテープをかけると左手の凹凸のある壁に画像が映し出される。そのテープにはニーベルハイムでの出来事が記録されている。そして演奏が始まる。ミーメがかなとこをたたき始めるがすぐにやめ、今度は缶詰の缶で例のリズムを奏で始める。コーネル・フライの声は素晴らしいミーメ声。ただし当初少しビブラートがかかっていた。そこに熊の頭をかぶったジークフリートがやって来る。さすがにかぶり物のせいでコービー・ウェルチの声もくぐもって聞こえる。その被り物を脱ぐと素晴らしい声になった。ミーメがジークフリートの生い立ちについて話し、ノートゥングの破片を見せると、彼は「その武器を今日のうちに手に入れるのだ(今日のうちに直しておけ)!」と言って飛び出す。
第2場。さすらい人が「Heil dir, weiser Schmied!(やあ、利口な鍛冶屋よ)」と言って入って来る。ところがである、このさすらい人、自転車にトート・バックをひっかけていたさっき会った人だ。冗談で言ったことが、本当になってしまった。コートの裾はボロボロで覆面を取ると眼帯はしていない。しかし右目がつぶれているようだ。このラザフォードのさすらい人がまたすごい。彼らは左手の椅子に腰かける。首をかけた3つの問いをさすらい人は難なく答えたが、ミーメは最後の質問、ノートゥングは誰が鍛え直せるのか、に答えられない。さすらい人は「恐れを知らぬものだけがノートゥングを鍛え直すことが出来るのだ。」とヒントを言い残し、ミーメの首を取らず去って行く。こんなすごいミーメとさすらい人のやり取りは聞いたことがない。
第3場。ミーメが近くにファフナーがいるのではないかと恐れをなしているところにジークフリートが戻ってくる。彼はノートゥングが直ったか聞くが、ミーメは「わしに作れるものか!」と言って、さすらい人が言ったことをジークフリートに話す。ミーメはさらに恐れについて、そしてファフナーについて語る。彼はミーメを罵った後、自分でノートゥングを鍛え直すことにする。この辺のノートゥングの鍛え直し方は少し雑。そしてノートゥングの修復がなると幕が下りて来る。ジークフリートはその幕の前で歓喜の声を上げ、左手のポスターを破り捨てる。(幕)(残念ながらこのポスターがよく見えなかったのでそれを破る意味が理解できなかった。)
第2幕。背後に大きな扉。その中に小さい扉。大きな扉の左右には窓なのか液晶画面かわからないものが並び、左右の壁にもついている。右手にテーブルと椅子。左手にも椅子1脚。中央には大小の背の低いドラム缶。よくは見えないが大きな扉から左前方にレールのようなもの。その左に下に降りる階段があるようだ。
第1場。アルベリッヒが下から現れファフナーの動向を探る。そこに左手から自転車を引いてさすらい人がやって来る。右側のテーブルに腰を下ろすとトート・バッグの中からワインと紙カップを出し、またロシア語?の新聞を出して読み始める。アルベリッヒが彼に突っかかるが彼は意に介さない。そしてファフナーを呼び出すとアルベリッヒも一緒になってファフナーに危険を知らせる。しかしファフナーは迷惑そうに、「寝かせてくれ」と言って寝てしまう。さすらい人が笑っていなくなるとアルベリッヒは偵察を続けるが、ミーメたちの接近を感じると隠れる。
第2場。ミーメとジークフリート登場。ジークフリートはこんなところで恐怖が学べるのかと疑問を呈する。ミーメは盛んに彼にファフナー退治のアドバイスをするが、ジークフリートはうるさく感じ彼を遠ざける。やがて森の小鳥のさえずりが聞こえてくるが姿は見えない。彼は蘆笛を作って対抗しようとするがうまく鳴らすことが出来ない。そこで自分の角笛を取り出し吹き始めるが次第に調子に乗る。すると「Was ist da?」と言ってファフナーが蒸気機関車に化けて現れる。その機関車は舞台前面までやって来るが、ジークフリートはそのランボード(機関車のメンテナンス用の足場)に飛び乗り円筒形の部分を突き刺す。すると煙室扉(蒸気機関車先頭の蓋)が開き煤だらけのファスナーが飛び出してくる。深手を負った彼はジークフリートの名前を聞くと、間もなく息を引き取る。ノートゥングを引き抜くとジークフリートの手にファフナーの血が付いてしまい、思わず口に持っていってなめてしまう。すると小鳥の声が理解できるようになり、彼は小鳥の奨めでファフナーの宝を取りに洞窟に入ってゆく。
第3場。ミーメそしてアルベリッヒが登場し、ファフナーの宝をめぐって兄弟げんかを始める。アルベリッヒはジークフリートが隠れ兜も指輪も持って戻ってくるのを見て悪態をついて岩陰に消える。森の小鳥は彼が両方の宝をもって現れたのを喜び、ミーメは猫なで声で彼を迎える。しかしファフナーの血をなめたおかげでミーメの心も読めるようになったジークフリートには彼が自分を殺そうとしていることが分かり、彼をノートゥングで切り殺す。森の小鳥はミーメが殺されたことを喜び、さらにきれいな女の子を知っているよと言ってジークフリートをブリュンヒルデのもとにいざない始める。
第3幕前奏曲と第1場。防音幕が閉まっている。その幕の右側にあるドアからさすらい人が現れる。そして「Wache, Wala! Wala! Erwach'!」と叫んでエルダを眠りから目覚めさせて呼び寄せる。エルダは現れると左側のソファーに寝転がり、緑の布をかぶって隠れている。さすらい人はその布をはがし、自分の知りたいことを聞き出そうとするがうまくゆかない。そこでさすらい人は降りて行って永遠の眠りにつけと言うが、この演出では再びソファーの上で布をかぶって寝てしまう。
第2場。同じ場所。森の小鳥に先導されてやってきたジークフリートであったが、小鳥が殺気を感じたのかどこかにいなくなってしまった。そこにさすらい人が立っていて「Wohin, Knabe, heisst dich dein Weg?」と行き先を尋ねる。問答が始まり、ジークフリートは過去のいきさつを話す。そのうち彼がさすらい人のことをいろいろけなし、老人を敬わないものだから怒り始め、ノートゥングを一度折ったことを口を滑らすものだから決闘となる。そしてジークフリートがノートゥングで槍を2つに折ると、さすらい人は「わしにはおまえをもう止められない。」と言って自転車を押しとぼとぼと去って行く。
第3場。幕が開くと舞台中央から右手に軍用ヘリコプターの残骸。その操縦席右側にブリュンヒルデが座って寝ている。「ワルキューレ」の最後では左手の椅子に座らされて眠りについたわけであるからちょっと連続性に欠ける。そこにジークフリートがやってきて彼女に魅入り、やがてキスによって彼女を目覚めさせるわけだが、そういえば鎧兜を付けずに眠っていたようだ。ここら辺もト書きと異なる。最初遠くから見ていたので、近寄って初めて気づき「Das ist kein Mann!」と言ったのだと好意的に解釈しておこう。なかなか打ち解けないブリュンヒルデであったが、最期には「Dein werd' ich ewig sein!」と言い、二人は抱き合う。(幕)
実に素晴らしい「ジークフリート」であった。同行の今回が5回目のサイクルで「ジークフリート」はそれ以上に観ているF氏が第1幕を観終わって「今までに見たもののうち最高の第1幕だった。」と言われたが私も同感である。そして終演後この「ジークフリート」を観ただけでも今回来た甲斐があったと言われたので、誘った私もうれしい。私もこの作品はおそらく40-50回は観ている(サイクルだけで25回目)が、間違いなくベスト3に入る公演だった。ミーメ良し、さすらい人良し、ブリュンヒルデ良し、ジークフリート良しであるので当然と言えば当然で、その他のキャストも実に良かった。
私はエッセンに帰るので、始まったばかりのクリスマス・マーケット(すでに閉店済み)のところでF氏とは別れ、ケーニッヒシュトラーセをデュイスブルク中央駅に向かった。実に良い1日であった。
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