日曜は、熱帯低気圧が接近していて、天気が不安定だ、との予報を見て、結局、映画を観に行く事にした。
1本目は、
「記憶にございません!」
これは、三谷幸喜監督が放つポリティカルコメディ。
演説中に石を投げられ記憶を失ってしまった総理大臣・黒田啓介。史上最低の支持率2.3%を叩き出した彼の記憶喪失は極秘事項で、知るのは秘書官3人のみ。人の顔も政策も家族も思い出せない中、次々に問題が起きて……
この映画、ドタバタコメディか、と思いきや、確かにドタバタコメディで始まり、映画コピーの「この男に任せて大丈夫か?」通りの展開になるのだけど、中盤以降は、「こんな男に任せたい」となっており、日本映画には珍しい政治風刺劇となっているのには感心した。
ただ、夫人の浮気相手だった秘書官をそのまま登用し続ける、と言うのはいささか腑に落ちなかったが……
キャストの方は、中井貴一を始め、宛て書きで書かれた脚本と言う事もあって、俳優の魅力を引き出し、あるいは違った面を見せると言う采配も見事――特に、有働由美子とROLLYは、これはもうエンドロール観るまで判らなかったくらいだし、吉田羊の胸の谷間と言うのもあまり見ない気がする。あと、小池栄子は、あらためていい女だなぁ、と、しみじみ思った。
また、「空母いぶき」では総理役だった佐藤浩市が、政治ゴロとして総理を脅す、と言うのにも苦笑してしまった。
ちなみに、その佐藤浩市、「空母いぶき」で“総理はお腹が弱い”と言う設定を付け加えさせた事で、「三流役者」とこき下ろされたが、それ以上に総理大臣をコケにするこの映画、映画完成後に安倍総理に見せているんだとか。そして総理からは「楽しめた」とコメントを貰っている。こうなれば、安倍シンパと言えども総理が「楽しんだ」と言うものを批判出来ない……三谷幸喜、さすがだな。
映画観終わって、外に出たら、ピーカンのいい天気……しまった。これは映画観ている場合じゃなかったかも。
……でも、チケットは買ってあるので、この後も映画を観るのだ。
2本目は、
「タロウのバカ」
これは、「日日是好日」の大森立嗣が監督・脚本を務めた青春ドラマ。
母子家庭に生まれ、ネグレクトされた結果、戸籍がなく、学校に通ったことのない少年タロウには、エージとスギオという高校生の仲間がいる。3人は奔放な日々を過ごしていたが、偶然一丁の拳銃を手に入れたことで、気持ちに変化が出て……
これは青春映画の形を借りて、日本社会が抱える問題を描き出すもの。
「存在のない子供たち」では、レバノンの難民の子供たちが住民登録されておらず、社会サービスの枠外にあることを描いていたが、同様に、この日本においても数万人もの子供が様々な理由により戸籍登録されていないのだとか。
この映画は、そんな戸籍のない子供のひとりであるタロウを中心に、社会に居場所のない若者たちのひりつくような痛みを描こうとする。
映画冒頭、障害者収容施設を運営する半グレ集団の幹部、吉岡は、
「社会の役に立たない者には生きている価値はない、殺すしかない」
と、相模原大量殺人犯と同じような事を言う。そんな吉岡の理屈からすれば、タロウにもエージにも生きている価値はない。そんな、現代日本において生と死の狭間にいるような者が手にした力……それは、他者にも自分にも向ける暴力となる、と言うテーマはいささか陳腐だけど、菅田将暉に太賀と言う若手演技巧者により生きたドラマとなった感じ。
あと、この映画の中で収まりが悪いのはスギオの恋のエピソード――告白したスギオに対し、女の性を見せた洋子をスギオは受け止められない。童貞の高校生には、ありゃ無理だろう、と言うシーンであり、それを無言の表情で演じた太賀は素晴らしく、痛いシーンにはなっているのだけど、この物語の中に落とし込むには、どうにも……
そうした構成、陳腐な脚本、YOSHIの演技、と様々な問題により、これにハマらない人も多いとは思うが、これはこれで現代を描いた見事なものであったように思う。
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