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2019年06月19日01:34

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グリーンピアの損失額

海老原嗣生
6月17日 15:34
前エントリ、予想外に300を超えるイイネをいただきましたが、年金問題って誤解だらけなのですよ。反響が続くようなら、これから何回か書かせてもらいます。
たとえば、「厚労省の運用ミスと流用で年金財政が破たんした」などと書く人が専門家の中にもいます（鈴木亘さんとか）。それをマスコミが面白おかしく書く。

まずね、厚労省（正確には外郭団体）が流用したという話だけど、実際どんなことがあったのか。
�／Π�宿舎の整備費用
�⊆匆駟欷営Ｄ拘韻慮鮑殀�
��社会保険庁の公用車購入費
�ぜ匆駟欷営�職員の福利厚生にかかる費用（社会保険大学校のゴルフ道具、社会保険事務所のマッサージ機器、職員のミュージカル鑑賞やプロ野球観戦の福利厚生経費など）
�ゼ匆駟欷瓜�務局の家賃
これらは基本、適用ルール内なので、違反ではありません。また、どんなに多く見積もってもその総額は50億円にもなりません。当時の厚生年金と国民年金の積立残が150兆円とかだから、3万分の一です。確かに道義的責任がないとは言えないでしょうが、「年金財政を破たんさせる」ことなどありえない規模。

もう少し額が大きいのは、
�Ε哀蝓璽鵐團△覆匹稜�金福祉施設運営や財形住宅ローンなどの「貸付事業」
とあるのですが、これらで1兆円近い損失が出たというめちゃくちゃな試算がなされ、マスコミはそれを報道をしているんです。その内訳は
・グリーンピアで3000~4000億円
・財形融資で5600億円
とはじかれています。
まず、この試算のどこがおかしいかを問う前に、こんな事業をなぜ、行政は運営したのか、そこを振り返りますね。
これは「年金事業は、高齢者ばかりへのサービスではなく、年金を積み立てている現役世代に対しても利益還元をすべき」という政治主導の賜物で、とりわけ、グリーンピアに関しては厚労省は反対、政治家が地元への利益誘導で笛を吹いた、という流れです。
もう一方の財形融資はさ、そのころ数少ない固定金利のローンで、しかも民間銀行よりも1~3％も有利だったのよ。今じゃ考えられないけど、80年代の住宅ローンって5~8%も金利があったの。でとても借りられないからと、僕らサラリーマンは、せっせと財形積立して、その貯蓄額の幾倍かの融資をうけられた。そんな神のような仕組み。

ところが、固定金利というのが後々問題となるわけ。バブルが崩壊して金利が下がり出すと、変動金利の民間ローンはどんどん低利となっていく。それで、財形ローンを解約する。で、財形を運営している年金福祉財団（年福）は超困った。その理由は、年福は融資用のお金を当時の大蔵省から一括借り入れしてて、その借入にかかる金利が固定であり、なおかつ、中途解約できないという条件だったから。
つまり、財形ローンを借りていた民間人は解約するけど、その貸し手である年福は大蔵省に途中返済できないわけ。
結果、80年代に借り入れたときの高い金利を大蔵省に払い続けた。そうして、5600億円もの赤字となってしまうのです。
グリーンピアも構造は似てます。
グリーンピアに関しては、建設費と事業終了時の売却額との差が3900億円あったので、それをそのまま赤字とカウントするという素人的な錯誤がありました。実際の会計上の損失額は1865億円と半額以下です。この中の1153億円は金利負担であり、そのお金は当時の大蔵省から借りていたので、金利は大蔵省に払っています。これで厚労省は損するけど大蔵省は得するからプラマイゼロ。だから、この金利負担を抜くと実質の損失は700億円にまで減ります。

さてさて、1兆円近いと騒がれた赤字のうちの、約2000億円は素人的錯誤であり、残りのうちの7000億円は大蔵省への金利。残りの純損失は700億円という構図、理解いただけましたか？

さあ、ここから先に進みましょう。
この7000億円の金利は大蔵省に入ります。なので、厚生省は損をするけど、大蔵省は得をするから、トータルで国の財政は傷つきません。
そしてさらにその先。大蔵省は入った7000億円をどうしたでしょうか？
これ、笑いますよ。大蔵省もどこかから借金してこのお金を用立てていました。それはどこかというと、年金会計の積み立て残からなんですね。ということで、大蔵省は年金会計に対して、借りていたお金を返して、その時同時に、金利として7000億円も支払っています。つまり、チャラなんですよ（笑）

どうですか？結局、年金の積み立て金が→大蔵省→年福財団と進み、それが逆戻りしただけ。一次的にみると、年福が大損しているように見えるけど、実際は大蔵省を経由してそのお金が戻って来ているんですね。
当時は、こうした運用を大蔵省が一手に引き受けていたので、こんなややこしい事態になった。

私がこれを調べたのは2016年のこと。でHRmicsに書いて、厚労省の官僚さんに「こんな話、なぜ誰も書かなかったのですか？」と問うたわけ。そしたらその方がいうのは「厚労省は何度もマスコミにレクしました。ただ、そういうまともな話は記事にしてくれないのです。年金はダメだ、官庁は間違っている！としか書いてくれません」と。

そうそう、派遣の件も、新卒の件も、最近では前号でとりあげた技能実習生の件も、皆そうだったから、「あーあ、またマスごみが」と膝を打った次第。

最後っぺみたいに書いておくけど、年金財政で1兆円近い損失が出た、というリークは実は、小泉政権側からなされたものです。政権がなぜこんなミスリードを！と思われますが、当時、郵政省解体を唱えていた同政権は、郵貯資金を運用する大蔵省にもメスを入れたかったから、なのでしょう。つまり、マスコミだけでなく、政治の世界も歪んでいた。
まあ、今なら年金関連でこんなミスリードしたら、大臣の首が飛び、選挙でぼろ負けすることを考えると、当時はほんと、お気楽な時代だったのでしょう。

いいね200集まるようなら、次は、「年金の賦課方式は正しい」という話を書きますね。


■安倍首相「金融庁の議論乱暴」＝老後２０００万円問題で
(時事通信社 - 06月18日 19:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=5668876

　安倍晋三首相は１８日午後の参院厚生労働委員会で、老後資金が２０００万円不足すると試算した金融庁審議会の報告書について「高齢者の実態はさまざまであり、平均（値）での乱暴な議論は不適切だった」との認識を示した。立憲民主党の川田龍平氏への答弁。

　首相は公的年金制度に関し、「老後の生活設計の柱であり、国民の不安を払拭（ふっしょく）できるよう丁寧に説明していきたい」と強調。「積立金の運用益も（安倍政権下の）この６年間で４４兆円プラスとなり、民主党政権時代の１０倍増えている。公的年金はより安心できる強固なものとなった」と語り、制度持続に自信を示した。


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