五味川純平。
文庫本で全9巻の作品を読み通したのは3回目か。
軍部と、その尻馬にのった政治、経済、そして庶民が一体となって奈落の底に堕ちるように軍国国家となり、他国を侵略して惨めな敗戦に至る経緯を、一中堅財閥の一家を通して描いた作品。
まさに現代に通じる物語である。
慎重な意見、堅実な意見は弱音と見られ、思慮に欠けた威勢のいい意見が世論をミスリードしていく。責任を取らない軍や政治の腐れトップたち。
軽薄なネトウヨどもはこの作品ぐらい通読してから物言えよ。
小説としても面白いが、膨大な分量を占める「注の部」を丹念に読むのは正直大変ではあるけど、この「注」があるので小説の内容の裏付けとなっている。
男女の睦み合いの描写も官能小説も顔負けのエロさで秀逸である。
俺はあんなに風に頭も良くなく、眉目秀麗でもないが、女にオクテで、やりたくてたまらないのに女が水を向けても自分に口実を設けてやりそこなって後悔する、そして結果関わる好きな女を不幸にする俊介に禿しくシンパシーを覚える(笑)
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