mixiユーザー(id:1680995)

2018年12月24日19:43

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三浦しをん氏の小説

 この方、女性としては珍しく生年月日を明かしています。だから知っているのですが、私より一歳下、学年では二学年下。
 アラサーの頃、同年代・下の小説作家は、読んでもイマイチ心に残らないんだよなー経験値の関係かなぁーそれとも自分が古いのかなー。と悩んでいた文字読みとしては、試金石になってくれました。
 彼女の作品には、夢中になって寝食を忘れるほどの力を感じる。なのに、同世代の本読みがこぞって絶賛する9歳年上の恩田陸がピンと来ない。
 だからやっと『感性の差だ』と納得できた。感謝してます。

 という訳で、「自分より人生の経過時間が短かろうと、自分より人間観察に長けている人はいるんだよ。当たり前だよ、お前何様だよ」「しかし帚木蓬生や篠田節子の長編に比べたら彼女の長編は短い」「待て待て待て、費用対効果とか考え出したら本読みとしては世界を狭くするだけだろう」「でも薄い文庫本好きくない」という、感覚の狭間みたいのに、すっぽりハマりこんでいた彼女の評価。
 mixiの日記が書籍化された文庫本『尾籠な話で恐縮です』を読んで、爆笑してしまいました。こーれーは、年齢が近いのが味方したね。

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 全くどーでもいい視点から、私が気付いたこと。

・星占いの星座を覚えていないしをん氏。
 つまり『聖闘士聖矢』を読んでいない。読んでいたら絶対に正しい順番で黄道十二星座が言える。十二宮編を覚えてないってことはありえないからね。
 たかが1-2年で、当時一概に迫害されていた「オタク」の中でも、世代交代が起こっていたんだなあ……と感慨。

・しかし、JOJOやSLAM DUNKは通読している。氏がマンガを(オタクとして)読み出したのは高校に入ってからとお見受けする。
 理由は複数挙げられるが、例えば、この時代の人間は、初めて見た映画がドラえもんだった、という人が多い。見に行った時期は幼稚園児もしくは小学生低学年である。しかし、ストーリーを鮮明に覚えているのは、その時の実際の公開作品ではなく、もう少し成長してからの作品である事が圧倒的に多い。
 氏よりもちょい年上な私が自信を持って言うが、幸せな家庭に育ち、一桁の年代で毎年きちんとドラえもん映画に連れて行ってもらった人は、ストーリーの骨格すら忘れている可能性が高い。「お父さん・お母さんとドラえもんの映画だ!」という喜びが、話の面白さに勝ってしまうからである。
 そして、『のび太の大魔境』を怖ろしく鮮明に覚えているという事は、当時4、5歳だった氏は、既にその現実的な喜びを奪われ、“親と映画”よりも“その映画そのもの”に夢中になっていたのではないか。1年年上の私が、『宇宙開拓史』の細部まで覚えているように。興味ないのにイヤイヤ連れてきた母の機嫌が悪い事を知り、怯えながら、それでもどうしようもなく映画というものに心を奪われていたのと同じように。

・そういう親は、子供が「アニメ・マンガごときに」耽溺することを許さない。しかし、名作と呼ばれる小説ならば大歓迎する。
 そこに描かれるこの世のドラマは同じなんだがね。氏の両親は、マンガを読むことは、小説を読むのと同じように自分を問われる行為である、という事を理解できなかった人達であると推察される。
 その軛から逃れるタイミングは、多少の金的余裕が生まれる高校生からが最も適している。
 私はちょっとだけ恵まれていて、実家の近くに住んでいた、私と同い年の息子を持っていた母の主婦友が、ベルばらのリアルタイム大ファンで単行本を嫁入り先まで持ってきていた。そして、それを私が読みたいと切望していると気付いて、母を言い包めて全巻を私に貸してくれた。
 11才にはあまりに刺激的だった、しかし理解できた。そして「この世の価値観は唯一ではない」という事を教わった。お姫様のドレスやリボンやレースは、決して正義ではないのだと。
 返しに行った時に、「面白かった?」と笑った彼女を、私は一生忘れない。

・「子供を褒めない母は、子供を自分の一部と思っており、だからこそ自分を褒めるような恥ずかしい行為は無理」という話に、ああそうだったのかとやっと腑に落ちた。
 十年前の私と同じような年齢で、そのことを看破し、そして「ああ、そうだったのか」と普段通りの生活を送れる氏を、私は尊敬する。
 彼女――私の母の行動原理がやっと分かった。親に褒められない子供がどれほど傷付くか、どれほど世界に不信を抱くか、どれほど自分の存在意義を見失うか。昔自分も子供だったくせに、何でこの不安を理解できないのか。どうしても私が理解できなかったこと。
 そもそも前提から違うんだ。自分を自分が褒めなくても、それはアイデンティティの危機にはならない。謙譲の美徳に従って、ぜっっったいに褒めなくても、むしろ悪口を言っても、それが子供をどれほど傷付けてるか、想像することもできない。だって自分のことを褒めなかっただけだし、自分の悪口を言っただけだから。
 うっわ―――、なるほど!!!
 目から鱗が100枚くらい落ちました。そっか、この観察眼が、物書きになる人と、ただの一般人で終わる奴の違いなのね。

・算数と体育は年単位の時差で授業を受けたかった、とぼやく氏。
 私は逆に、先に行きたくて行きたくて仕方なかったです(体育は、教育と言う目的がある以上は仕方ない犠牲だと溜息をついて諦めた)(音楽や図工や習字と同じや。それにしては立場が強いけど)(家庭科は別だぞ!あれちゃんとやっといた方がいいぞ、マジで家事能力は独り立ちする時に必須だから。かがり縫いとボタン付けができないと詰むから!!)。
 理系ですが、読んだ本の数が同級生より一桁違い(作家さん達は、多分、私が面白いと思えなかった本もちゃんと読んで、二桁違うんだろうと思う)、だから教科書を読めば、4月の内にこの一年で何をすればいいのか分かってしまった。
 小学四年生、今年の理科は、ジャガイモの栽培。朝顔と違って、親芋が子供の芋を作って、光合成とやらで造ったデンプンてやつを溜め込むのね。溜め込んだデンプンをヨウ素で発見したら終わりね、ふーん。
 なのに、収穫した後、これ見よがしに放置されたデンプンの結晶が付着した包丁に、誰も見向きしねえ。しゃーねーな、という感覚でしたよ、「先生、なんで包丁が粉だらけなんですか?」と発言するのは。
 全く、何であんな茶番にコロッと騙されるんだか、小学校教師。
 実家が貧しくて、その事でイジメを受けていた私は、うんざりしながら、どうせ異分子扱いされるなら飛び級した方がマシじゃね?と思っていました。当時はバブル全盛期で、「生家が貧しい」という現実を理解or想像できなかった子がほとんどでね。

 氏は、国語に関しては読書歴から「何でそれが分からないの?」という境地だったはずです。(漢字の書き取りだけは地味地味と年月を重ねないと無理なんだけどねー。いまだに、正しい読み方は知らないけど意味は分かる>読める>>読めるけど書けない>>>>書ける、の差がとんでもなく乖離してる私は、当然のように英語の綴りも苦手でございます。ここいら辺、ホント『反復と記憶の努力』という才能を持った人に敬服します)
 それとあまりにギャップのある“算数の意味の分からなさ”に、読んでいて思わず笑ってしまいました。アレはクイズだと思うと楽しいよ。マップを与えられたダンジョンを、罠を見抜きながら進んでいく感じ。丸暗記主体の教科よりも、ある時期まで私は得意でした。
 ある時期‥‥理系受験組が直面する微分積分まで。
 「解なし」を証明するまで、数十行の数列を羅列していくあの苦行。例えるなら、それまでが曲がりなりにも整備された登山道だったのに対して、道筋から自分で見付けなければいけないサバイバル山登り。しかも登頂まで登れなくても、間違えた道筋にまで点数を付けられるという理不尽さ。
 今だから言わせてもらいます。そんなクライマーズハイを、最終的には現場で必要としない職種(専攻)の受験にまで要求するのは、なんかおかしくないか。冬の剣岳を踏破できなければ高尾山の登山ガイドを勤められないようなもんだ。ちょっと冷静になってみような、よく考えると変だろう。
 あ、数II程度の基本的な微積分は、意外な所で役に立ったったりするよー。私が嫌いなのは『解なし』だ『解なし』!!ふざけんな今までクイズだったくせに!

・作風からは全く想像できない事に、BL愛読者である氏。
 私は逆に、商業BLに興味がないのですが(というか、大きなくくりとして恋愛もの‥‥テーマが恋愛しかない、他に得るものは全くない作品ジャンル?の全てが面白いと思わない)(ただし恋愛を通して何かを描こうとする作品なら読む)、彼女の勧める作品は、素直に読んでみたいなぁと思いました。
 ある日突然、息子が同性の恋人を連れてきた母の物語とか、絶対面白いよね。
 紹介の仕方が、流石の文筆業。『間違いない』と思わせるレビューが凄い。

・ところで夏コミの買い専に全力投球する報告があるんだけども、3日目って事は、そしてその戦果を住居維持関連の業者に隠さなければならないとなれば、女性向け創作(JUNE)だよなぁ。
 既存の作品の二次創作としてのBLには、食指が動かないらしい(もちろんフェイクである可能性もあるが)。これは比較的珍しい嗜好だと思う。オリジナルBLなら、なにも死を覚悟するような状況の夏コミ行かんでも、安価(同人誌比)で書店で買えるもん。
 腐ってるにしても、珍しい選択だなーと首を傾げてます。ちなみに私は、3日目は主に「描く(書く)力量の問題でプロにはなれないが面白い話を思い付く人」「評論」「旅行」「自作アクセサリー」でしたね。JUNEには行ったことない。
 「男性向け創作」(≒エロ)コーナーに巻き込まれるととんでもないことになるので、そこは全力で避けつつ。あ、でもその周辺の女性トイレは空いてる事が多くて助かった。裏情報、3日目出動の女性参加者は、一番行き辛いジャンルの至近のトイレを狙うべし。

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 という訳で、my図書室にある氏の作品を再読して、初版の年齢を計算しては「凄ぇなあ」と溜息をついてしまいます。『君はポラリス』とかね。タイトルが、まさか『ミンクとスカンク』になりかけたなんて、ホント『尾籠〜』を読んでなかったら誰が信じるか。この珠玉の短編集に『ミンクとスカンク』。一周回って「それもいいかも……」と考えている自分がやばい。

 で、今の私が三浦しをん氏に求めるものがあるとすれば、「長編書いて」この一言に尽きます。文庫本で厚さが1cm以上ないと安心できないんだよー。主に通勤の往復2時間で小説は読むんだけど、帰宅途中で終わってしまうと愕然とするんだよー。スマホいじる趣味はないので、この先何もないのに立ってなきゃいけないの?って現実に耐えられないんだよー。
 以前は予備含めて2冊持って歩いてましたが、ヨガ行く時は荷物が多いからそれは避けたい。
 そして、氏が何万字も費やして紡ぐ物語に、どっぷり何時間も浸りたい。
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