mixiユーザー(id:1506494)

2018年12月18日20:31

291 view

ジャン・ジュネ作 女中たち@シアター風姿花伝

鵜山君演出になる今年9本目(ワタシにとって、であって「女の一生」はパスしました)の
芝居は、ご本人も「敬して遠ざけてきたフシもある」と言うジャン・ジュネ作品であります
ワタシは遠ざけてはいないものの、これまでに小説を1本「薔薇の奇蹟」、ライナー・ファス
ビンダー監督による「ブレストの乱暴者」の映画化「ケレル」と、自身が監督した短編映画
「愛の唄」がすべてなので、今回は慎重を期するため岩波文庫版の原作を購入しました

ということで、この「女中たち」という芝居の骨組みはわかっておりましたが、そうでなければ
予備知識なしに舞台を観ても戸惑うことばかりでしょう
登場人物は女性が3人、奥様とその女中の姉妹で、この女中姉妹が奥様の留守に「奥様と
女中ごっこ」をするという話
しかも片方が奥様役をすると、もう一方は自分ではなく相手の本名を名乗る、これを
交互に続けているらしい
今日は妹のクレールが奥様役で、姉のソランジュがクレール役を演じる、しかも時折素に
戻って本名を言ったり、或いは言い間違えて本名を言ってしまったりするものですから
混乱します(ワタシは読んでいる段階で何度も配役を確認した)

この「ごっこ」芝居では奥様役が女中を蔑んだり罵ったりするかと思えば、女中の方が
居丈高に反抗したり奥様の弱みを追いこんだりする、言って見れば芝居にかこつけて
うっぷん晴らしのようなことをしているわけですが、演じているという虚構性が真情吐露
でもあるという鏡のような構造になっています

その象徴で大道具としてアルファベットのOの字をイタリック体にしたような形の鏡が舞
台の中央に吊るされて、これがくるくる回る仕掛けになっています
鏡と言っても伊達メガネのような素通しで、時にはこの鏡の枠をまたいで行ったり来たりする
あたかも虚構と現実の間を行き来するが如しです

原作にはジュネによるト書きが細かく指定され、これでは演出の出番がないと思わせる
のですが、そこは鵜山君ですから、この鏡の仕掛けは彼の発案で、他にも作者の指定を
無視したところも何か所もありました

斯くの如く虚実の定まらない、また奥様と女中であったり姉妹関係であったりの弱者と
強者が目まぐるしく入れ替わり、それを演じるシアター風姿花伝の支配人でもある那須
佐代子さん(姉ソランジュ)と、ヘンリー6世とリチャード3世でマーガレット王妃の狂気を
演じた中嶋朋子さん(妹クレール)が丁々発止とツバキを飛ばしながらやり合うのですから
これは見応えがあります

わかりにくい設定の芝居でありながら、この二人の応酬を見ているだけで面白い
演じることを演じているという意味で、多分にメタシアター的であります

本日のチケットはネットで予約したのですが、席を自由に選べない、受け取ったのは最前
列という位置で、いや、迫力がありました
余りにも壮絶なオンナの戦いに、客席からは時として笑いも起こったりするのですが、
これは恐怖感の裏返しでしょうね(前衛的でありながらリアルに迫真的でもある)
休憩なしの1時間45分、ぐったりしました(でも今年のベスト10入りです)

終演後の遅い昼食は、夕飯までの繋ぎですから、山手通り沿いにある麺屋雷神さんで
チョイ飲みセット(角ハイボールと水餃子)で済ませました
ハイボールが供されて、餃子の仕上がるまでにコールスローを出してくれるのがうれしい

2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年12月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031