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2018年12月05日23:35

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火曜は……

 火曜日は、胃カメラ検診の後、午後、映画を観に行きました。

 この日の1本目は、ブルク13で、「くるみ割り人形と秘密の王国」。
 これは、チャイコフスキーの組曲「くるみ割人形」をディズニーが脚色したファンタジー。クリスマスの夜、少女クララが迷い込む不思議な世界での冒険を描きます。
 ディズニーらしい、家族で安心して観られる内容だけど、物語は大幅に脚色されており、尚且つ、先が読めるもの。
 映画コピーの「見た目に惑わされるな」もそうなのだけど、元々の物語のように、ねずみが呪いをかける訳がありません。
 何しろ、製作がディズニーなのだから、ねずみを悪者に出来る訳がないじゃないか・・・

 この後、黄金町に移動。ジャック&ベティで、この日2本目は「斬、」。
 これは、「野火」の�猖椰弧藉篤弔�、池松壮亮と蒼井優を主演に迎え、初めて挑んだ時代劇。
 とは言え、台詞などはほぼ現代劇の趣だったりするし、内容も人を斬る、つまり人を殺す、と言う意味を問うもので、そのテーマは「野火」にも重なるもの。
 見応えのある映画だけど、これは決して娯楽作品ではなく、塚本監督映画だ、と言う事を心して観る必要があると思います。

 次いで、この日3本目の「負け犬の美学」。
 これは、俳優のサミュエル・ジュイ、初の監督作品で、マチュー・カソヴィッツ主演、二流のボクサーの生き様を描く人間ドラマです。

 スティーブは45歳になるボクサー。戦績は13勝3分33敗と揮わず、ここ3年は1勝もしていない。当然、ボクシングでは食えず、レストランの掃除のバイトで家族を養っていた。
 そんなスティーブだが、ピアノが大好きな娘が、毎日家で練習出来るようにピアノを買うべく、誰もが嫌がるトップボクサーのスパーリングパートナーに立候補する。
 最初は「ポンコツはダメだ」と言われたものの、タイトルマッチの相手選手との対戦経験があるのを買われて採用されるが……

 この映画、如何にもフランス映画らしいボクシング映画。
 これがアメリカ映画であれば、ボクサーとして底辺にいるスティーブが這い上がる様を描くのでしょうが、この映画はそうはしません。
 スティーブはボクシングを愛しており、だからこそ、トップボクサー相手にも臆しません。
 「何故、そんなに堂々としているんだ?」と問われ、「負けるボクサーがいなければ、あんただってチャンピオンにはなれないんだ」と返す。勇気を以てリングに上がる、その点において、俺もチャンプも変わらない――これが邦題の理由であろう、「負け犬の意地」でしょう。
 勿論、スティーブには己に才能がない事は判っています。家族には「50戦したら引退する」と約束をしています。
 そして、この映画が心打つ部分、それはスティーブがピアノを買ってやろうとする愛娘、彼女にもピアノの才能はない、と言うこと。(たどたどしい演奏からそれが判ります)
 でも、心から楽しそうにピアノを弾く娘には、気が済むまでピアノをやらせてやりたい……それが、己の才能を知りつつ、愛するボクシングにしがみついている男の親心なのです。
 才能がないのは知っているけれど、愛しているんだから仕方じゃないじゃないか――この映画のテーマに、さだまさしの歌う、売れない歌手と二流の野球選手を歌を思い出しました……心から愛しているから、「例え泥まみれで捨てられても笑ってみせる」と言う心意気。
 スティーブの最後の試合は、タイトルマッチの前座のノンタイトル戦。
 そこで漸く判定勝ちを拾った男が得たのは、娘の笑顔ひとつ。
 でもそれは、チャンピオンになれない殆どの人間にとって最高の宝物になるはずです。
 この映画は、後になって心に染みる、そんな1本でした。

PS
 エンドロールでは、スティーブのように勇気を持って負け続けた男たちが紹介されます。
 その最後に紹介されたボクサーの戦績は「32勝256敗」……絶句、です。

 この日の4本目は「ハナレイ・ベイ」。
 村上春樹の連作短編集「東京奇譚集」の1篇である同名小説を松永大司監督が映画化したもの。
 
 ピアノバーを営むシングルマザー、サチのもとに、ハワイのカウアイ島にあるハナレイ・ベイで息子のタカシがサメに襲われて亡くなったとの知らせが入る。
 それから10年……サチは毎年タカシの命日の時期にハナレイ・ベイを訪れ、海を眺めて過ごしていた。
 ある日、サチは2人の若い日本人サーファーと出会う。そして彼らから、赤いサーフボードを持った右脚のない日本人サーファーを見た、と聞いて……

 サチを演じるのは吉田羊。
 この映画は、彼女のクールさ、そして年齢不詳さによって成立しているのではないか、と思います。
 物語のテーマとしては、家族の「死」を如何に受入れるか、と言うもの。
 背負って来たもの、歩いて来た人生……家族だからこそ、言えなかった、伝えられなかった想い、それらが吹き出す、後半の慟哭と、もう一度会いたいと言う気持ち。
 その先で、漸く心が繋がったのを振り返った一瞬で見せたラストカットにはゾクリ、としました。
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