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2017年11月12日20:31

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これは『ブレードランナー』の“続編”であるという“承認”と“強度” 『ブレードランナー 2049』

ブレードランナーの“続編”――その“承認”と“強度”が作品へ充満する。

オリジン同様、物語はブレードランナー“K”(ライアン・ゴズリング)が、
レプリカントを追う展開を踏襲する。*1
物語はやがてレプリカントが“子供”を生み、
前作で姿を消したデッカードとレイチェルの“子供”だという事実へ集約する。

本作はひどく合理的な外側の“設定”が、
自身を追い求める感傷的な内側の物語を支え持つ。

“子供”を探す“複雑”な黒幕ウォレス *2 の目的はこうだ。
労働奴隷のレプリカント生産には莫大なコストが必要。
ならレプリカント自身が生んで増やす。
レプリカントの“子供”はウォレスにとって奇跡で福音だ。
同時に作品は人造人間が「生殖可能なら?」の問題を提起する。*3

だが作品はあえてこの“外側”を主点にしない。
あくまでレプリカント“K”のアイデンティの追及。
「自身が“子供”で“人間”か?」
“記憶”へ“期待”を抱くロマンチックな旅路の“内側”を主点に置く。

その旅路に“K”と同じ造られし者で彼を愛すAIのジョイ、
デッカード、ウォレスの命令で“K”を追う女性レプリカント、ラヴが関係する。

木馬から発展する記憶の掘り下げ方はじつに見事だ。
“K”が「手で木馬を探る」単純な場面が観客の感情をゆさぶる。*4
2019年から2049年。
ディストピアなロサンゼルスの風景が抱くメロウでブルーな物語は、*5
たしかにブレードランナーの“続編”だ。*6

そして傑作だった。


※1 『ブレードランナー』の構造の“妙”は、追跡”の事象が物理と精神の両面にかかる部分だ。物理的な追跡はレプリカントの“処理”。“処理”の過程で主役は自身と周囲、世界の“記憶”を追跡。観客はディック永遠のテーマ「“本物”と“偽物”」を知る。

※2 全体の割合でいうとウォレス(ジャレッド・レト)の活躍の場面はすくない。ただ、脚本と含意ある哲学めく台詞、レト独特の風貌もあって、大変印象に残るキャラクターになっている。

※3 人造人間が自己増殖可能というテーマはありふれている。だが、資源の枯渇とエコシステム(環境)の破壊でオフワールド(外星植民)に進出する『ブレードランナー』の世界では合理的で同時に残酷的だ。ウォレスはもっともっとレプリカント(人造人間)が必要。だが時間と費用がかかる。反面は人間の生殖は約1年間で同種を生み出せ、創造的な労働力を作り出す。その人間の御業を人造人間が可能になれば? 非常に合理的で生産性が高い。奴隷が奴隷を生み、彼等は足の爪先からてっぺんまで完全な奴隷だ。

※4 この場面は前作以上だ。

※5 ウェットともいう。

※6 ただ、物語自体の着地地点はちがっていた。その部分が、この作品が模倣だけでは終わらないところだろう。前作は最後に「逃避」を選択した。本作は最後に「前進」を選択した。結果において“最後”のレプリカントは「前作」でも「本作」でも人を救い死ぬ。あちらは雨が降り、こちらは雪が降る。
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