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2017年09月03日01:30

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(ラスト!)「第12回 映画の復元と保存に関するワークショップ」

「第12回 映画の復元と保存に関するワークショップ」
27日(日)夜。
〇18:00〜19:30上映会 
会場:株式会社東京現像。第2試写室へ。160席の試写室が満席。
上映の前に、「修復にこんなに苦労した」と各担当者の解説が入る。


○『ヴァリエテ』(1925/E・A・デュポン)日本語字幕付き、部分上映。
前説:常石史子(フィルムアルヒーフ・オーストリア)。電子ピアノ演奏:柳下美恵。
☆空中ブランコのシーン少しと、終盤の三角関係のクライマックスシーン。
あまりにも大げさすぎて、いまならパロディーの嵐だ。全く瞬きしないで恋敵を睨み付ける中年オヤジとか、美女が転げ落ちる階段シーンが印象的。たとえお笑いでも、印象に残ることが映画では大事だ。

○『川口消防組』『日本油勝会盃事 血盟式実況 昭和6年4月5日』(1931)
提供:神戸資料館。前説:田中範子(神戸資料館)。電子ピアノ演奏:柳下美恵。
☆古い8ミリフィルム。ヤクザの儀式だというので柳下さんがオドロオドロしい伴奏を付けた。やりすぎ!会場からは笑いが。
奈良の油勝会は、おそらく土木工事や運送などの生業を持つカタギヤクザなのだろう。血盟式の招待客に運送をやっていた私の祖父が映ってないか目をこらして探してしまった。

○『大分県竹田市の地域映画「竹8シネマプロジェクト」の予告』
提供・前説:三好大輔(東京芸術大学・株式会社アルプスピクチャーズ)
☆平均年齢65才の住民が、8ミリフィルムを探し出して町おこしするプロジェクトの紹介。

○『東京物語』(1953/小津安二郎)4Kデジタル復元への挑戦。
提供:松竹株式会社。前説:新井陽子(株式会社IMAGICA)
☆オイオイ・・・。ただ4Kで綺麗な画面に修復すりゃいいってもんじゃないぞ?
たしかに画面の揺れや傷は修復されて、とても見やすくなっている。そこは良い。
しかしコントラストを強くする必要はなかった。黒をくっきりはっきりさせるためにデリケートなグレイ部分を潰してしまっている。それでいて白い部分が明るくない。
特に良くないのは、原節子を綺麗に見せるソフト・フォーカスが修復作業ですべて失われて、後家のくせにぬけぬけと着ている真っ白の清純ブラウスが光り輝いてないことだ。顔も手も黒ずんでいる。
原節子が白く光り輝いているからこそ、笠智衆がすっかり騙されて、「本当の娘たちよりも、あんたのほうが良くしてくれた」と妻の形見の時計を渡してしまうのだ。
そもそも原節子みたいな嫁とか娘とか、居るわけ無い! 
小津安の世界は夢の世界なのだ。現実ではない。だから、ぼ〜っとぼやけていて構わないのだ。それをハイコントラストに4Kしてどうする!?
この修復は映画の内容を理解していない。残念だ。

○『嫉妬』(1962/土居通芳)KADOKAWA CINEMA DIGの取組と発覚した劣化の進行について。
提供:株式会社KADAKAWA。前説:五影雅和(株式会社KADAKAWA)
☆ワカメ状になって画面が揺れているが、珍しい作品。

○『新幹線大爆破』(1975/佐藤純弥)4Kスキャニング/2Kデジタル修復版より部分上映。
提供:東映株式会社。前説:椎原史隆(東映ラボ・テック株式会社)
☆デジタル修復の技術が進むにつれ、ただ綺麗にするだけではなく、フィルムらしさわざと残したり、公開当時の映像に出来るだけ近づけようとする方向に向かっている。
この修復映像はデジタルの嫌らしさが気にならない、色調もフィルムっぽい修復でお見事。最後まで見たくなる。まだ円い鼻の新幹線が可愛い!

○『To the light 1.0』(2014/七里圭)、『To the light 3.0』(2017/七里圭)
提供:七里圭。
☆自作のデジタル映像を一日目の実習でフィルムに焼き直したものの上映。

等々・・・ 盛りだくさんで、8:30になった。これで本当に全てのプログラムはお終い!
みなさん「お疲れ様でした!」と互いに挨拶し合って、散会。
虫がリーリーと鳴く道を駅に向かって歩いていく。


〇おまけ

どうしてもコーヒーが一杯飲みたくなって、信号待ちしているお仲間を誘ったら、タイミングの神様・鈴木美康さんだった。
駅前のスタバに寄って、15分ほどタイミングの話を伺う。
「鈴木さんの予防医学の話が面白かった。後で修正するのではなくて、最初から良い映像を撮ってもらうには、いったい映画製作のどの段階から打合せするのですか?」と訊くと、「シナリオ段階からだ」との答え。
オドロキ! タイミングマンは、監督やキャメラマンと最初から打ち合わせをして映像に関わる。

そこで、「さっきの『東京物語』の修復は間違っていますよね。全くあのシーンの意図を理解してない!」と感想を述べたら、
鈴木さんは、「そう、男はみんなあの原節子に騙されるんだよ!」と嬉しそうに笑いながら、「でも、あのシーンを理解するのには人生経験が必要なんだ」と。
つまり若い人にはムリってこと?
鈴木さんは私の意見に同調してくれるが、若い人に口を出す気はないらしい。
「でも、音声は修復で聞き取りやすくなってましたね」と少し修復版を持ち上げると、
「聞き取りやすくすりゃ良いってもんじゃない」と、ポロッと本音が。アリャリャ。
確かに修復音声は聞きやすかったが、味が全て飛んでしまって笠智衆の棒読み度が増してしまっていた。
鈴木さん、お話有り難うございました。

これで全てお終い。
濃い濃い、有意義なワークショップだった。スタッフの皆さん、登壇者の皆さん、参加者の皆さん、有り難うございました!
(了)
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