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2017年08月20日00:08

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い…一蓮托生

こ、これは凄いぞ。
この人一体どうしちゃったんだろう?

今年の4月。
ハチャメチャ荒唐無稽なんでもありアクションと青少年(特に少女)向け推理小説もどき、要するにエンタテインメントミステリーというイメージしかない、あの松岡圭祐が突如歴史小説を文庫書き下ろしで上梓した。

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それはともかくとして、文庫書き下ろしの腰巻きの煽り。

『維新からわずか30年で「国際法を守る規範の筆頭」と、世界から賞賛された日本と日本人の姿を鮮やかに描いている。「今こそ読むべき日本の快挙!」』(上巻:元防衛大臣石破茂推薦)

いま、この時期に「日本人は凄かった」「日本人は立派なのだ」と言うそんな煽り。
はっきり言って胡散臭く、余り良い気持ちがする物ではない。

いや、この作品の主人公、柴五郎その人は確かに立派な人だったのだが…

その作者がまだ半年も経っていない、8月にこんなのをまた文庫書き下ろした。

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『本書のテーマは、戦時下における命の尊さに他ならない。毎年、八月十五日が来るたびに新しい読者によって読み継がれていってもらいたい。』(文芸評論家縄田一男)

この縄田氏は前作「黄砂の籠城」でも解説で「今、『私は日本人だ』と誇りを持って言える人が何人いるだろうか。」(以下略)と書いている。

いえね、そりゃ「民族の誇り」は持ちたいですよ。
でもね、今このご時世で余り正面切って力説されると…なにか胡散臭い、裏があるんじゃないかと思えてしまうのも確か。

それでもこの物語には惹かれるモノはあった。
導入部が現代から始まり過去へ移動すると言う構成は、この手の「歴史物」では、もう黴が生えて、乾燥して、原形を止めない位使い古された手法で、いささかげんなりする。
そして、この導入手法が物語り全体に効果的な意味を持っていたか、と言えば…それはかなり疑問ではある。

と…この部分、前作「黄砂の籠城」で書いた感想のそのままコピペである。

取り敢えず、全く同じ感想を持った。

本作は、先の大戦中のアッツ島玉砕とその後のキスカ島奇跡の撤退作戦を描く。

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解説で縄田氏は少年時代から、キスカのことを知っていたという。
夏になると必ずTVで放映される戦争邦画で三船敏郎主演の「太平洋作戦の奇跡キスカ」を小学生の時に見ていたいからだという。
氏は私より幾つか年下。
この年代だと、何故か少年雑誌(主として月刊誌)で毎号旧日本軍の装備(戦艦大和の全てとか零戦の秘密とか)なんてぇ記事が載っていたし、読み物として大戦当時の戦記物がかなりのページ数を占めていた。
私もアッツ島玉砕やキスカ脱出作戦は(確か…)月刊少年の読み物で読んだ覚えがある。
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その「奇跡の脱出作戦」が戦争の終わる2年前の夏に行われ、2匹の犬以外もぬけの空になった島に米軍が総力上陸をしたのが8月15日だった、というのは知らなかったが。
そして、この2年後、ポツダム宣言を受諾し、天皇陛下が玉音放送を下された日以降、北の地では最期の日本軍が“国を護る”闘いを繰り広げていたのであった。

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本作の冒頭にこんな一文がある。

『この小説は史実に基づく
登場人物は全員実在する(一部仮名を含む)』

少年の記憶に残る戦記と殆ど同じ流れなので、これはエンタメ小説と言うよりもセミノンフィクションと言っても良いのではないだろうか。

エンタメ作家によって肉付けされた“実在の人物”達は魅力的である。
一切の戦闘行為を行わず、米軍を出し抜いて5,000人を越える将兵を孤島から救出する物語は爽快である。

だからといって、この時期ことさらに『ジャパン・プライド』と喧伝するのはいかがな物かとは思うのである。

そもそも、アッツ、キスカ両島を占拠するという軍事行動は全く意味のないことだった訳だし。

それから、“本を後ろから読む”解説マニアの私から一言。
本書の解説はない方が良い。
主義思想は自由だが、こうした“かなり真面目なセミドキュメンタリー”を“売る側”に偏った思想の介入は好ましくない。

それは読者一人一人が考えれば良いことである。

八月十五日に吹く風(講談社文庫)松岡圭祐(著)

文庫: 432ページ
出版社: 講談社 (2017/8/9)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062937441
ISBN-13: 978-4062937443
発売日: 2017/8/9
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