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2017年04月22日00:02

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う…美しきもののふ

今こそ読むべき、日本の快挙! 圧倒的歴史エンタテインメント。

維新からわずか30年で「国際法を守る規範の筆頭」と、世界から賞賛された日本と日本人の姿を鮮やかに描いている。―元防衛大臣 石破茂

昨日も書いたが、いやいや…このご時世、なんとも安直なナショナリズムを鼓舞されると少なからず構えてしまうのだが…

それでもこの物語には惹かれるモノはあった。

1900年の中国。明治維新から30余年。4000人の人質を守る日本人がいた。

これぞ、驚愕の近世秘史! とにかく、面白い。―細谷正充(文芸評論家)
超人気作家、乾坤一擲の歴史エンタテインメント。―東えりか(書評家)

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黄砂の籠城(下)(講談社文庫)松岡圭祐(著)
文庫: 336ページ
出版社: 講談社 (2017/4/14)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062936771
ISBN-13: 978-4062936774
発売日: 2017/4/14

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日清戦争終結後の北京で、公使館街が義和団という民族蜂起集団の攻撃を受け籠城することになってしまった史実が基になっており、実在の人物と架空の人物が絡み合いながら、上巻はかなり緊迫したストーリーだった。
元々ラノベに近いミステリーの作者なので、リーダビリティ=読みやすさには配慮されており、サクサクと読み進める。
が、上巻の前半部分は状況説明が長く続くので少々だれ気味にはなる。

導入部が現代から始まり過去へ移動すると言う構成は、この手の「歴史物」では、もう黴が生えて、乾燥して、原形を止めない位使い古された手法で、いささかげんなりする。
そして、この導入手法が物語り全体に効果的な意味を持っていたか、と言えば…それはかなり疑問ではある。

軽蔑と信頼と忠誠と正義。
謀略と諜報戦と殺人事件。
忍耐と勇気と大活劇。

この場合の正義は、限定された枠の中で、そこに属する人々の、と言うことにはなるが。
結局、こうした闘いの物語に関してはどちらか一方の視点で描かれる事になるのが常なので、それは仕方がないのか。

怒濤の如く押し寄せてくる義和団が不気味な狂信集団として描かれるが、彼らとて大清帝国の圧政にあえぎ続けそれ以外の選択肢を持たずに歴史の波に飲み込まれた哀しき人々だったはずではある。
一人一人はただ慎ましく幸せに暮らしたいだけの貧しき農民や商人で、彼らにしても一人一人の人生があったはずだが、過去の西部劇と同様、突然襲い来る悪いインディアン“達”と近似した描かれ方しか出来なかったのは些か残念ではある。
まぁ、エンタメ小説に多くを望むのは酷というモノではあろうが。

実在の人物が多く登場する本作だが、主人公は架空の人物だと思われる。
(まぁ、その方が自由なストーリーが作れるし)
若者達であるが、同僚との会話が、特に上巻の冒頭部分など、あまりに現代的でなんとも興ざめした部分はある。
いやいやいや、明治の青年兵士はそんなしゃべり方、言葉遣いはせんだろ?

上巻中盤以降、当初八方美人的昼行灯的な描かれ方をしていた柴五郎中佐の人間像が徐々に明らかになり、まさに「格好いいとはこういうことさ」。展開は冒頭から見え見えなのだが、なかなか上手い見せ方ではある。

下巻は上巻からの緊張状態が続いて飽きそうか…と思いきや、密偵や間諜や暗号や殺人事件など、作者得意のミステリー風展開になる。
諜報戦から熾烈な戦闘やアクション・スペクタクルと、もうサービス満載。
(これ、映像化意識してるよな、絶対。相当予算かけないと)

本来戦争は残虐でグロテスクなモノだが、そうした出来事の描写はかなり強烈で、そう言う表現が苦手な向きには少々きついかも知れない。

二ヶ月に及ぶ籠城戦。内通者は誰か?
映画さながらのスペクタクルに加えミステリー要素もある。
尻尾を掴めない内通者が誰なのか、本当のラストで、ああ、そう来るか、と。
更に終盤クライマックス。
果たしてこのエピソードが史実なのか作者の創作なのかは解らないが、戦争冒険小説の定番ともいえる展開、映像的表現と相まって迫真のアクションで迫ってくる。

終始、動ずること無く終始冷静に誠実に事態に処していく主人公達のあり方は血生臭い中で清々しく描かれるのだが、美少女専科の印象すらあった作者が、今何故この史実を題材にしたのか、動機がとても気になる。

ともあれ、作者初の歴史(エンタメ)小説としては、これは傑作と評しても良いだろう。
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主人公の一人が「西欧列強なみの“まっすぐ飛ぶ”銃が欲しい」とこぼしつつ携える二十二年式村田連発銃と八粍フラットノーズ弾頭。

実存の柴五郎中佐は、写真を見ると映画“北京の55日”の伊丹十三と何となくイメージが重なる。


『外国兵らがときおりしめす、生への執着を笑うな。恐怖は恥ではない、生きるための力になる。大義のためといいながら死に急ぐことが、むしろ楽な場合もありうる』

勿論作者の創作だろうが、もし本当に当時こう言う思想を持ち、それを口に出していたとしたら、やはりこの人は凄い人だったと思う。
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