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2017年07月12日06:29

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2017年6月30日(金) シラー劇場のベルリン州立劇場 「珊瑚取り」

バレンボイム/ペレチェツコの「珊瑚取り」がベルリンであるので、ライプチッヒ中央駅10:15発のICE1514でベルリンに向かう。定刻の11:33をかなり遅れ中央駅に着くと、ベルリンABの一日券を購入しホテルに向かう。カールシュタットに寄り道をし、その後カーデーヴェーで食事をしようかと思っていたが食欲がわかない。そこでカーデーヴェーには寄らず定宿のシェラトンにチェック・インした。
ビゼーの「珊瑚取り」は今までにおそらく私の観たことのない作品だ。ペレチェツコが出るというので早くから注目していたのだがすべての公演が完売。それでも粘って幸運にも平土間の席が入手できた。19:30開演なのでラウンジでのイーブニング・カクテルで少し食べて劇場に向かった。
演出 ヴィム・ヴェンダース。言わずと知れたドイツの著名な映画監督である。バレンボイムの依頼でこの作品で彼はオペラ初演出。舞台装置 ダヴィット・レゲーアー、衣装 モンツェッラール・カサノヴァ、照明 オラフ・フレーゼ、指揮 ダニエル・バレンボイム。出演 レイラ オルガ・ペレチェツコ=マリオッティ、ナディール フランチェスコ・デムーロ、ズルガ ギュラ・オレント、ヌーラバット ヴォルフガング・シェーネ。
第1幕。初めて観るオペラなのでサン・カルロのBDを購入して予習をした。その公演ではうまくないバレエ(これがたびたび出てきて興ざめ)に続き、ズルガがその村か猟師の長に押されてなるのだが、この公演ではナディールが村に戻ってきて旧友のズルガと再会するところから始まったので戸惑う。そのナディールのフランチェスコ・デムーロが歌いだすと、あまりに変わった声なのでびっくり。こんな声のナディールに付き合わされたのではたまらない。バレンボイムが連れてきたのだろうか。全くのミス・キャストだ。彼は1978年にサルデーニャ島で生まれたというので30代後半で、スカラ、リセウ、コヴェントガーデンなど著名な劇場で客演しているばかりでなく、中小の劇場にも未だにいとわず出演しているのが特徴的だ。面白いのは2009年にサントリー・ホールで「コジ・ファン・トゥッテ」、Müpaブダペストでロッシーニの「スタバット・マーテル」と「清教徒」のアルトゥーロを歌っていることだ。やがてバラモン教の高僧ヌーラバットに導かれてヴェールをかぶり白い衣装の尼僧が到着する。ズルガは彼女に信仰の誓いを立てさせる。ナディールには彼女がかつてズルガと争ったレイラであることにすぐ気づき、またレイラもナディールに気づいた。1幕が終わったところで休憩。
第2幕ではレイラがくるくると回りながら踊る場面があり、これがまた美しい。ペレチェツコはこの公演では絶唱はほとんどなかったが、実に美しい声で聴衆を魅了する。ナディールが寺院に忍び込んでき、二人は心を確かめ合う。そしてついに彼は彼女に翌日の駆け落ちを約束させてしまう。ところが彼は捕まってしまい、レイラが彼を助けようとしたことから嫉妬に狂ったズルガは二人の死刑を宣告する。
第3幕。そのことを悔やんでいるズルガのもとにレイラがやって来る。彼女はナディールだけでも助けてほしいというが彼は肯んじない。そして彼は自分のレイラに対する愛を告白するが、今度は彼女がその愛を受け入れない。やがて彼女は身に着けていた真珠の首飾りを取り外し、形見として母親に届けてほしいと彼に手渡す。それを手に取ったズルガはその首飾りがかつて彼の危機を救ってくれた少女に感謝の気持ちを込め贈ったものであること、レイラがその少女であったことに気づいた。空がうっすらと明るくなるとヌーラバットたちが彼らの処刑を始めようと二人を引き立ててやってくる。ズルガは未だ夜明けではなく、火事のために明かるくなったのだと言う。それに驚いた人々が村の方へ去るとズルガは二人を逃がす。そして彼は村人が戻ってくるのを待つ。(幕)
2幕、3幕と進むにつれ、最初戸惑ったフランチェスコ・デムーロの声がどんどん輝きを増し、また声量も素晴らしくなった。彼はすごい。さすがバレンボイムの耳は素晴らしい。このオペラはわずか4人のソリストを要求するのみなので上演は(少なくとも経済的に)容易だと思う。しかも美しいメロディー、ナディールとズルガの二重唱など、魅力に満ちたオペラであるが今まで上演の機会が多かったとは言い難い。ところがこのところMETをはじめ各地で上演されるようになってきたように思う。このプロダクションでは映画監督のヴェンダースらしく、映像が多用され初めてこのオペラを観る人にもわかりやすくなっている。たとえばレイラがズルガからお礼に首飾りをもらうところなどである。しかしあまりにも映像が多く、辟易とさせられてしまうのも事実だ。ズルガを歌ったギュラ・オレントは2013/2014シーズン以来この劇場の専属歌手で、ヨーロッパの主要劇場からの客演を多数こなしている。ヌーラバットのヴォルフガング・シェーネはヨーロッパの主要劇場で、プッチーニからワーグナーまで広いレパートリーで活躍している。ペレチェツコを含め素晴らしい4人のソリストが共演したこの公演は大変満足の良くものであった。カーテン・コールではペレチェツコがひときわ高い拍手を受けていたがその美貌のせいもあろう。私はデムーロに最大の賛辞を送った。毎度のことだが、カーテン・コールでオーケストラが出てくるのが良い。バレンボイムの魅力はこういうところにも出ている。
わざわざライプチッヒからやってきて実に良かった。
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