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2017年02月17日12:20

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ベルカント発声と現代の発声

声の明るさ、透明感、輝きは、話すように言葉を自然に発音する口の空間から生まれます。
丸みを帯びた暗めで、広がりのある柔らかい響きは、正しく開いたノドの空間から生まれます。
ノドは、(呼吸と一緒に)あらゆる方向に(縦方向だけ・横方向だけ・・・ではなく)ふんわりと柔らかくリラックスした状態に開けます。

口とノド、この二つの空間を完璧に調和させてバランスを保つのが ベルカント発声です。
キアロスクーロchiaroscuroと呼ばれる声の明暗が自由で、声の要素をすべてカバーしていますから、表現も自在で幅広いものです。

この、息と言葉の芸術であるベルカント発声は、1800年代の後半から次第に破壊されていきます。

(歌手の体験からではなく)音声医学の方面から生まれた(でっち上げられたというべきですね。実際には存在しない想像上のものです)マスケラに声を響かす、“マスケラ”という言葉がベルカント発声を壊す元になります。

マスケラとは、ヴェネツィアの仮面のことで、そのあたりに声を響かせる、という新しい発声のテクニックです。

この方法は、両極・相反関係ととらえられる声の丸さを犠牲にして、声の鮮明な輝きを追及するものです。
こんにち声を出すことによく使われる プロイエツィオーネ・プロイエッターレというイタリア語は、
投じる・投射する・投げかける・映写する・投影する・発射・射出・・・
の意味です。

ベルカント発声の声は、太陽の光のように全体に広がるものです。
サーチライトのような集中した光ではありません。

この マスケラの発想は、体の一部分に着目して具体的に発声を構成していく新しいメトードを次々生み出していくことになります。

輝き・集中をネガティヴなものとしてとらえる、もう一方の極からは、ノドを(力で)開ける・ノド仏を下げる・口を縦に開ける・軟口蓋を上げる・唇をラッパ型に突き出す・舌を下げる・・・等々・・・新しいメトードが生まれます。そして、その声は後ろにいって飛ばない → その解決として、(二次的に)マスケラに声を響かせよ、になるわけです。


こうして、息と言葉、二つの相互関係・バランスで歌うベルカントから、どちらかを極端に優先させ、筋肉の力を使ってコントロールする発声に替わっていきました。


それでも多くの歌手・声楽教師は、それが正しいベルカントだと信じて、後進に伝えています。
昨今も、イタリアをはじめヨーロッパの歌手たちが(超一流の有名な歌手を含めて)、ベルカント発声のマスターコースだと大きな見出し付きで日本にやって来ていますね。
ベルカント発声で歌っていない歌手たちが、ベルカントを教えるって???

現在は“ ベルカント ”という言葉だけが残っていますが、意味は失なわれて混乱した状態です。

ベルカントは、普段の口の動きと自然なノドの動きを合意させること、と
マンチーニ( 1700年代の発声教師 )が言っています。


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