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2016年12月16日15:14

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制度改正を巡る情報発信のあり方 権丈 善一 慶應義塾大学商学部教授 年金は国民に正確に伝えることで、健全な世論が形成される

 年金額改定ルールの見直しなどを盛り込んだ公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」が今国会で審議されている。年金制度をあるべき方向に改革していくための「制度改正を巡る情報発信のあり方」を権丈善一氏に聞いた。

マクロ経済スライドはキャリーオーバー方式ではなくフル適用に
――改正法案には、平成16年改正フレームの真骨頂とも言えるマクロ経済スライドによる年金額改定ルールの見直しも盛り込まれました。
 マクロ経済スライドは平成16年の年金制度改革で取り入れられ、現役被保険者の減少や平均余命の伸びを、給付水準の算定に反映させることで、今の年金受給者から将来の年金受給者へ年金財源を移転するしくみです。
 平成16年と言えば、日本政府が「緩やかなデフレ」状態であることを公式に認めた平成13年3月から3年しかたっておらず、当時はデフレがこれほど続くとは考えられていませんでした。だから、平成16年改正案の審議中の4月に、当時の坂口厚労大臣が「改定率の調整は名目額を下限とし、調整によって年金額を前年度の額よりも引き下げることはしない」と言う発言が、今の若い人たちの将来の年金給付水準をここまで大きく引き下げると、ほとんどの人が予想していませんでした。
 デフレ下でもマクロ経済スライドを適用するというフル適用に反対する人たちは、坂口さんの答弁を引用して、「政府は約束は守るべし!」という論を用います。しかし、坂口さんの発言は、民主党の平成21年マニフェストにおける確信犯的なウソと根本的に次元が違うものです。
 今回の法案に盛り込まれた改定ルールは、名目下限を維持しながら、賃金・物価の伸びが大きいときに前年度までに未調整分があれば、それも含めて調整するというキャリーオーバー方式です。これでは、将来世代の給付水準を確保するための制度改正に不十分です。
 僕らの賃金・物価上昇への「期待」は平成16年当時とは大きく変わり、今では、累積した調整率に相当する賃金・物価上昇が起こること期待するのは難しい。だから野党も、キャリーオーバーについては無視を決め込んで、「年金カット案だ!」と批判もしていないわけです。いまや口にすることの逆が正しいと学生たち若い世代から思われている民進党の山井国会対策委員長たちから無視されるほどに、あまり意味のない法案になっている。
 そこで、僕は、次の附則を設けることを提案してきました。
 「政府は、この法律の施行後5年以内に平成31年財政検証の結果も踏まえ、キャリーオーバー方式を見直す法制上の措置を講ずるものとする。その間のマクロ経済スライドの未適用によって生じた給付に要する費用は、毎年度国庫が負担する」
 国庫負担には、年金課税の見直しによる財源を充てることも考えています。この附則は、財政当局をはじめ、厚労省も、そして政治家も、今後数年間、フル適用の国民への説得に真剣に働いてくれるようになることを期待してのものです。


制度改正では年金を正しく理解した有権者の存在が必要
――どうして改正法案は、フル適用でなく、キャリーオーバー方式としたのでしょうか。
 年金額の改定ルールを、名目下限をなくし、フル適用としていたら、この法案は国会に提出できなかったでしょう。理由は、政治家が反対するからです。
 また、『年金時代』など専門誌には、重大な責任の一端があると思いますよ。平成26年財政検証のときに、3つのオプションという3つの政策提言がなされましたが、あの財政検証以降、『年金時代』は、何回、この3つの改革は大切だという記事を書きましたか。
 平成26年財政検証後、年金制度改革は、制度に関する正確な理解に基づく健全な世論の形成に託されました。ところが、『年金時代』などの専門誌をはじめとしたメディアは、政治家に、正しい年金改革を進めてもわが身は守れると思わせるだけの世論の形成にはなんら貢献しなかったのではないでしょうか。
――反省の意味も込め、メディアはどうしたらいいのでしょう。
 正確な情報を発信し続けることが基本だと思います。この10月の日本年金学会の共通論題は「年金を巡る情報発信のあり方」でして、ようやくそうした動きになったという段階です。
 マクロ経済スライドは、将来の受給世代、つまり、今年金を受けている受給者の孫やひ孫が受ける年金の給付水準を確保するためのしくみです。しかも、フル適用の始動は、早ければ早いほど望ましい。図表は、マクロ経済スライドが早めに始動したことにより、現在の高齢者から将来の高齢者への仕送りが増える様子を表したものです。
 名目下限の堅持を求めてフル適用に反対する人たちも、平成16年に坂口厚労大臣が言ったことを政府は守るべき、などと言うことが、どれほど世間からずれていることなのかを、わからなくては。

16年改正フレームの無理解から生じる支給開始年齢問題の混乱
――「保険料拠出期間と受給開始年齢の選択性」というオプション試算は、このたびの改正案には盛り込まれませんでした。
 被保険者期間を40年から45年に延ばすためには、追加財源が1兆円ほどかかりますので、消費税10%の先の増税が動かないと、切り出せないでしょう。
 受給開始年齢の話をしておきますと、平成16年フレームの下では、今の高齢者から将来の高齢者に仕送りをする方法として、マクロ経済スライドや、今回法案に組み込まれている、賃金変動が物価変動を下回る場合の賃金スライドの徹底などがあります。そうした方法と比べると、いわゆる「支給開始年齢の引き上げ」と呼ばれる、旧来の給付削減策は、将来の年金受給者から、すでに年金を受給している人へと、資金の逆流も起こるわけで、今の年金受給者世代がこれを口にして、君ら若い人の年金を自分たちに回してねというのは、若者に失礼ですよね。年金受給世代が、自分たちのもつ大きな政治エネルギーを、同世代の人たちにフル適用を説得する形で活用してもらえれば、年金改革は正しい方向に動く可能性が出てくるのではないでしょうか。




■「生活困難」高齢者反発=「若者のため」と理解も―現役世代も複雑・年金改革
(時事通信社 - 12月15日 08:01)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=4342458

 14日に成立した年金制度改革法。東京・巣鴨では、支給額が引き下げになる恐れがある高齢者から「生活はギリギリで暮らしていけない」と反発の声が上がった。一方「若い人の将来のため」と理解を示す人もいた。

 「金額が減れば、娘に頼らざるを得なくなる」と困惑するのは、東京都北区で1人暮らしをする相馬雪江さん(81)。月約8万円の国民年金と内職収入で暮らすが余裕はないと言い、「住んでいる安い借家も取り壊し予定で、先行きは不安ばかり」と顔を曇らせた。豊島区の渕辺睦代さん(74)は「勤めていた会社が厚生年金に加入しておらず、今も働いているが、貯金を取り崩す日々。なくなれば生活保護も検討する状態で、悪いが若者のことまで考えられない」と訴えた。

 会社顧問をしているという北区の男性(75)は「36歳の娘が将来の年金への不安をこぼすのを聞くと、制度維持には仕方ないと思う」と納得した様子。ただ、「年金から高齢の母親の介護費も出している。制度がころころ変わると見通しが立たない」と付け加えた。茨城県古河市から来ていた小川隆司さん(78)は「若者も大変だし、年金が減れば高齢者も嫌な思いをする。消費税をきちんと上げた方が公平では」と首をかしげた。

 一方、サラリーマンが多く行き交う東京・丸の内。金融機関で働く女性(28)は「仕事で裕福な高齢者と多く接し、本当に困る人は一部ではと感じる。それより自分は年金をもらえるのかという危機感の方が強い」と賛同する。練馬区の会社員山下祐治さん(47)も「われわれも懸命に年金保険料を払っている。制度維持のため少しは我慢をしてほしい」と要望した。

 広島から出張中の公務員堂園理一郎さん(49)は「高齢者にも生活設計がある」と反対意見。「現役世代は自分で貯金するなど備えられるが、高齢者はもう収入は増やせない。減額するにせよ余裕のある層に限るべきだ」と話した。 



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