mixiユーザー(id:1506494)

2016年12月04日17:54

344 view

東響第58回ミューザ川崎定期

先月の都響では振り替える前の曲目にデュティーユのヴァイオリン協奏曲がありましたが
本日の東響の定期は同じ作曲家によるチェロ協奏曲が演奏されました(逃れられない宿命)
一応、覚悟を決める意味でYouTubeを当たってみると、シャスラン指揮でマンハイム国立
劇場管弦楽団による演奏がありましたので、それを事前に鑑賞
なるほど、開始の仕方がトリスタンとイゾルデの前奏曲に似ていないでもない

というわけで、本日のコンサートはまずその「トリスタンとイゾルデ第一幕への前奏曲」から
惜しむらくは最初がちょっと揃わなかったけれど、それから後の息の長いフレージングは
さすがジョナサン・ノットで、先日のナクソス島のアリアドネで雑な演奏を聞かせたオケとは
思えません、指揮者が違うとこうも違うものなのかという見本

デュティーユの協奏曲はこのトリスタンとイゾルデ前奏曲と切れ目なしに演奏されます
そのため、ソリストであるヨハネス・モーザーも最初から登場、ばかりでなく、前奏曲も
オケと一緒に演奏していました

事前に聞いたシャスラン指揮の演奏では、協奏曲の冒頭は鎖でスネアとシンバルをこする
音で始まりましたが、今日の演奏では普通にブラシ・ロールと、シンバルの方は手元が
見えなかったけど、これも普通の撥で擦過音を出していたようです

デュティーユは今年生誕100年で、メシアンとブーレーズの中間に位置する作曲家ですが
それは年齢的なもので、作風は、そうですね、ご本人によると「自由な無調」ということらしく
ドデカでもなく、不協和音ではあっても不快ではない響きといいますか、時として3度や
6度の和声も使用しています

しかし、とは言っても決してわかりやすくはない
ボードレールの悪の華の引用を伴うもので、この詩だってワタシには難解であります
第一楽章は「謎」と題された変奏曲で、まさしくエニグマ変奏曲です
どこからどこまでが主題で、今鳴っているのが第何変奏なのかもわからない
そればかりか、今が第何楽章なのかも定かではありません
最後は独奏チェロがフラジオレット奏法でトレモロを奏でながら上昇して行き終わってしまう
それでもBravoがかかりました

ソリスト・アンコールはモーザー氏が曲名をアナウンス
「From the 4th Cello Suite, Saraband」というのは聞き取れました(サラボンと聞こえましたが)
デュティーユは決して不快な前衛音楽ではなかったのですが、バッハを聴くと正直「ほっと」
しました(本当にため息がでた)

休憩時間の間に譜面台が片付けられて、最終ステージは暗譜だという事がわかります
そのシューマンの交響曲2番は演奏会にかけられるのが珍しいのではないでしょうか
これまた事前学習を、ということでこの方は手持ちのCDがあったので、ムーティ指揮の
ヴィーンフィルによる演奏です(カップリングは3番の「ライン」)

2度目の精神疾患の発症を見たドレスデン時代に作曲されたというものの、それほど
病的印象が無かったのは、ハ長調という調性と3拍子のリズムによるものと思っていま
したが、本日ノット指揮で聴くと、同じ曲でも指揮者によってこうも違うものか

病的とは言えないまでも、やはりただならぬものを感じさせます
まず第1楽章の序奏からしてテンポが全然違います(こんな曲だったっけ)
トランペットに現れる警告のようなフレーズ、ティンパニの見せる威嚇するようなドラム・
ロールなど、聞きようによってはクララの父ヴィークに対する敵対的感情が込められて
いるのかもしれません

第2楽章はスケルツォで、ここの第2トリオに「B-A-C-H」の音型が現れると曲目解説に
ありましたが、耳を澄ませていてもどの部分かわかりませんでした(恥)
この楽章は、いかにも決然と終えたので、つい拍手してしまうお客さんがいました

CDで聴いたとき、メンデルスゾーンの平明さとブラームスの重厚さを併せ持った曲だ
という印象があったのですが、それは終楽章が「イタリア」に似ているせいもありました
メンデルスゾーンが小林亜星氏だったら、盗作だと騒ぎ立てたかもしれません

ムーティ/ヴィーンフィルの明るさこそありませんでしたが、結局のところは病を克服
しようという意欲のようなものが感じられたのは、クララへの愛が込められていたからに
違いありません

ノットの今回の演奏会のテーマは「愛」だということでした
先日の「ナクソス島のアリアドネ」も演出コンセプトは「愛」だったらしいのですが、本日は
遙かに明確にそれを感じることができました

チャイコやショスタコ、マーラーやブルックナーばかりがステージに乗せられる昨今ですが
たまには今日のようなプログラムもいいですね


1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年12月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031