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2016年11月08日17:43

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冬物語@TOHOシネマズ川崎

東京近郊シェイクスピア劇スケジュールというサイトで↓
 http://iamnotthatiplay.sensyuuraku.com/
情報がありましたので、ケネス・ブラナー演出・主演によるロンドンギャリック劇場での
公演のライヴヴューイングを本日観て参りました

シェイクスピアのロマンス劇「冬物語」については、既に楠美津香さんの一人芝居で
ちょうど一年前に拝観しております↓
 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1947233513&owner_id=1506494
粗筋及び、この作品に関するコメントはこの日記を参照願います

本日はいわば正調版ということで、俊才の誉れ高い(それは本当だとワタシは思います)
ケネス・ブラナーによる舞台であります
ローレンス・オリヴィエの再来と言われる彼の沙翁劇についてはいくつか映像化されて
いるうち、ワタシはヘンリー5世を観ているだけですが、その他には魔笛のオペラ映画版
を観て(これは演出)、その才能については疑う余地もありません

楠さんのわかりやすい講談版は2008年にも観ており、去年といずれの場合も事前に
小田島訳で下調べしておりますし、今回も再読しましたので、頭に入っているつもり
でしたが、改めて舞台を観ますとまた新しい魅力に捕らわれるものです

シチリア王リオンティーズは親友であるボヘミア王ポリクシニーズを懇ろにもてなして
いたのに、突然妻との仲を疑い出し、アポロンの神託により無実がわかり誤解が解けると
掌を返したように悔悟の念に捕らわれ、16年の間罪の意識にさいなまれ続け、それが
最後にはものわかりのいい父親に豹変する、というように極端な性格です

しかしこれは節操がないというよりは、人間の中に潜む様々な性格が時により姿を
表わすことのデフォルメでありましょう(リアリズム演劇ではないのですから)

また、楠さんの版ではわからなかった、羊飼い親子とそれを取り巻く民衆の祭りの
様子がエンターテインメントとして重要な要素であることが正調版を見て初めて
明らかとなりました(人間の内面をえぐるドラマであるのと同時に、祝祭劇という性格を
持っているのですね)

前の日記には「冬物語」とは冬を描いた物語ではなく、冬の夜長に暖炉のそばで読まれる
物語りという意味だ、と書きましたが、本日の上演を観るとやはり冬というのがある象徴
として意味を持つように思われました(リオンティーズ王の肩に雪が積もるシーンがある)

ケネス・ブラナーはヘンリー5世の青年王のイメージが焼き付いていましたが、実年齢は
ワタシと8歳しか違わず、今回の役はヘンリー王の苦悩とも異なる、人生の冬を感じさせる
もので、前述した性格の豹変を突然変わるのではなく、グラデーションのように移ろわせて
見せるあたり、やはり名優と呼ばれるべきでしょう

この舞台には名女優ジュディ・デンチもポーライナ役で出演しており、王に対して諫言も
厭わない気丈さは、まさにうってつけ、この演技でローレンス・オリヴィエ賞を受賞したのも
納得であります

当たり前のことながら格調高いブリティッシュ・イングリッシュは耳に心地よいものでした
(ごろつきオートリカスはコクニー訛りですし、羊飼い親子の英語はまた別で、田舎
訛りなのでしょう)

あまりなじみのない演目なので、平日昼間ということもあり観客が十数名というのは
勿体ない気がしました(最後のシーンなんか、やっぱり感動的です)
シェイクスピアは歌舞伎と同様に大衆のもので、面白いんですけどね

終映後は、映画シアターのあるダイスビル6階のスパゲッティ食堂ドナで、エビとモッツァ
レラのジェノヴェーゼに白ワインを1グラス(映画の半券を見せると5%オフになるのです)
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