数年前、ランポ先生と一緒に行った和食レストランで、お琴の生演奏をしていました。
日本歌曲の伴奏で、あの時みたいな音色を、とリクエストすると、たちまちお琴そっくりの はじくような音を出すので、やはり彼は天才だとあらためて思います。
ランポ先生は日本歌曲が大好きなのですが、現代の多くの作曲家の傾向であるアメリカ風、ガーシュインっぽいものは嫌いです。
明治時代、何人かの作曲家が西洋音楽を勉強しにヨーロッパに渡っています。
そして日本古来の旋律とヨーロッパ音楽が融合した美しい歌曲が生まれました。
ランポ先生は、そのヨーロッパ風な中にある日本の美を、彼の選び抜かれた、磨き抜かれたピアノの音で、私たちに聴かせてくれます。
私たちが小さい頃から耳にしてきた、ごくありふれた、何でもないような曲が、彼が弾くと本当にびっくりするような美しい曲だったりして、なんだか うろたえてしまいます。
彼の伴奏だと・・・あの前奏を聴くと、気楽に・大雑把に歌えなくて、緊張します。
浜辺の歌 ・ 荒城の月 ・ この道
日本に長く住んでいるイタリア人の友人が、イタリア人だとわかると、すぐ オ・ソ−レ・ミオ を歌ってくれと言われる、知らないと言っても信じてくれない、と嘆いていました。
もちろん、聞いたことくらいはあるでしょうが、歌詞も知らないでしょう。ナポリの人ではないからです。
我々にとっての ”佐渡おけさ“ みたいなものでしょうか・・・
ナポリ方言で歌われる歌詞も、ほかの地方のイタリア人には、意味がよくわかりません。
地元限定です。
ナポリ民謡が多く作られた1800年代終わりから 1900年代初めにかけては、ナポリをはじめ貧しい南部イタリアの人たちが、北イタリアやほかのヨーロッパの国に出稼ぎに行ったり、北アメリカや ブラジル・アルゼンチンなどの南アメリカ 、オーストラリアなど世界各地に移民として出ていきました。
米国だけでも190万人が移民しています。
彼らによって、世界中から、厳しい外国での現実と孤独感の中、遠く離れたナポリの町や、恋人を思って歌われたのが、このナポリ民謡でもあるわけです。
日本で知られているのは、ほんの何曲かだけですが、ナポリ民謡は、数百曲・・・ どこか哀愁を帯びた、美しいメロディーの曲が多く、地元の民謡歌手が本物のナポリ方言で歌う、土演歌みたいなナポリ民謡は、何とも素敵です。
このコンサートでは、あまり日本で知られていない(地元では有名ですが)曲も取り混ぜて、ご紹介します。
人を虜にする不思議な魅力のあるナポリ民謡です。
彼女に告げてよ ・ 漁師の歌 ・ 太陽の土地 ・ フニクリ フニクラ
ログインしてコメントを確認・投稿する