雨雲が霧のように地表を這い、まるで水の底のような朝。
マンションという名の日本式西洋長屋の廊下を歩いていると、
ピーピーケトル、目覚まし時計の癇にさわる音が薄い壁越しに
あちらこちらから漏れてくる。
やたら無作為に植え込みの多いこの建物、皮肉にもサブタイトルが
プライムフォレストときた。恥ずかしくはないのかねえ。
こういうところに住んでいるやつにかぎって、資産価値がどうの
こうのいう。終の棲家ではなくて転売のことばかりを考えている。
まるで安手の不動産屋である。フール・オン・ザ・ヒルである。
50年前の今日、ビートルズが羽田に降り立ち、夜明けの首都高を
ミスター・ムーンライトをバックに走りぬけた。
そうかあれから半世紀も経つのかあ。あっという間の出来事だった。
過日、星加るみ子さんに来日当時のビートルズの話をたくさん
聞かせてもらった。星加さんは親しみをこめた響きで、彼らのことを
ボーイズと呼んでいた。
ひとり逝き、またひとり逝き、ボーイズはふたりになり年老いた。
文京区の丘の上、そのころ川口松太郎が建てた川口アパートメント
にはプールまであった。こういうのをマンションと呼ぶ。
奥ゆかしさこそあれ、シナ人のようなずうずうしさは一片もない。
これこそマンション・オン・ザ・ヒルである。
50年前、あの日の天気はどうだったかねえ。。。。
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