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2016年03月02日01:27

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『春蘭と秋菊の競艶』第2話

『春蘭と秋菊の競艶』第2話

 二週間後、サガとカノンは連れだってギリシア北西部・アヘロオス河の河底にある河神の館を訪ねた。手をつないだ双子が泉から水脈を通って河神の館に姿を見せると、実ににこにこと上機嫌な館の主が二人を待っていた。
「よく来たな、二人とも」
 そう言ってキトン姿の河神は、ぱん、と一つ手を叩いた。
 その途端、サガとカノンの視線が低くなった。チュニックは肩がむき出しになってずり落ちそうになり、腰回りはぶかぶかになり、ズボンも下に脱げ落ちそうになった。かと思えば、胸の周りはやたらときつきつだ。
 二人は一瞬のうちに女の体になっていたのだ。
「…早っ!」
 カノンが思わず呟く。アケローオスはやはりにこにことした楽しげな笑顔を浮かべたまま、ぱんぱん、と続けて二つ手を叩いた。
 すると館の奥から河のニンフたちがぞろぞろっと姿を見せて双子の前に勢ぞろいした。
「では、お前たち、後は頼む」
 アケローオスがそう言うと、ニンフたちの取りまとめ役を務めている彼の娘のカリロエが
「お任せくださいませ」
 と、父に一礼した。
「さあ、サガ様、カノン様、お支度を整えましょう」
 にっこりとカリロエが二人に笑んで見せる。ニンフたちが双子を取り囲み、両腕をがっちりとホールドした。
「支度って…」
「まずはお風呂です。我ら『アケローオスの娘たち(アケロイデス)』の総力を上げて、お二人を磨かせていただきます」
「風呂…」
 サガとカノンも何度か入ったことがあったが、この館の風呂は天然の温泉で、なかなかに広大で快適である。普段なら風呂好きの二人は喜んで入るところなのだが…。
 サガは顔を赤く、カノンは青くさせた。
「い、いや、大丈夫です!」
「風呂くらい、自分で入れる!」
 二人は脱げそうになっている服をつかんで慌てて自分を守ろうとした。
「そうは参りません。さ、お二人を浴場にお運びして」
「「「は〜い」」」
 ハートマークを飛ばしながら満面の笑みでカリロエに答えたニンフたちは二人の体を抱きかかえ、よっせ、わっせ、と、そのまま双子を浴場に運び入れた。
 やがて館の奥の浴場から二人の悲鳴が響き渡ってきた。
「…わああ!服くらい自分で脱げますからっ」
「や、やめろー!そんなところまで洗わなくていい!」
「ちょ…そこまで毛を剃らないで…!」
「そ、そんなところを触るな!揉むなー!」
「いやあああ〜、そんな揉み方をしないで〜。感じちゃう〜っ」
「なに…このヌルヌル…!え?顔に塗るのか?」
「え、ちょ…蒸気が熱い…。え、このまま五分!?」
「ひええええ〜っ!」
「あ〜れ〜」
 こうして二人はニンフたちの手で洗われ、脱毛され、香油でマッサージされ、パックされ、美容クリームやローションを塗られ、彼女たちによる全身エステコースを体験することになったのだった。

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