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2015年12月31日18:19

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043 煙草の無害について 1/

煙草の無害について

――これは戯曲連作「風土と存在」第四十三番目の試みである





人 オリガ(高3)
  マーシャ(高2)
  イリーナ(高1)
  火伊九映画
  ぼんちゃん





1.煙草の無害について

マイクスタンドにスリッパが掛かっている。燕尾服に山高帽で講演。

マーシャ ――只今わたしの申し上げました通り、煙草は恐るべき毒素を含有しておりますので、その点から出発いたしまして、如何なる場合にも喫煙を許すわけにはゆかんという、結論に到達するのであります。右の次第でありまして「煙草の害について」と題する私の講演も、何等かの益を世にもたらすであろうことを、敢えて自負する次第であります。これでわたくしの言わんとするところは尽きました。Dixi et animan levavi(御静聴ありがとうございました)。
オリガ (まばらに拍手して)なるほどね、やりたいことは分かったわ。
マーシャ 分かりました?
オリガ 大ラスだけ切り取れば、ちゃんと講演してるみたいなんだ。
マーシャ そうそう。
オリガ 先入観のみに倣った上演を退廃演劇という。ピーター・ブルック。舞台上でちゃんと役の世界と出会うためにはどうしたらいいか。とりあえず切り離してみてそのシーンがちゃんと立つかどうかってことかね。
マーシャ そうです。そこをグダグダのままやっちゃうとお客さんが飽きますよね。
オリガ そして部員も減る一方。ふうん、よっこらしょかなこりゃ。
マーシャ よっこらしょ?
オリガ 引退したけど、腰上げてみっか。
マーシャ 実務はあたしと1年でやります。大きく脱線しないかどうか見てもらえたら助かります。
オリガ 分かったよ。整理すると、全体像よりまずシーンを磨くってことね。
マーシャ そう。なんでかってば、お客さん、最後までぜんぶ見てくれるとは限らないんで。
オリガ 弱気じゃん。
マーシャ 大道芸みたいな感覚かなあ。どこ切り取って見せても大丈夫みたいな。
オリガ つぎはぎになっちゃうかもよ。
マーシャ それはいっこ後の課題です。
オリガ 分かった。率直に感想言うと。
マーシャ はい。
オリガ シーンが短い。
マーシャ そうですよねえ…。
オリガ でもシーンがつながってなくても、同じお話なのであれば何となくゆるっとつながってるように見せることは出来るはずだ。結局出るのはどっちなの。
マーシャ それが、まだ。
オリガ おーい間に合うの、新歓でしょ。
マーシャ 演出方針が決まれば役は1年に任せてあたしは裏に回る方が順当です。今日はなんとかそこまで決めたい。
オリガ この、なんてったっけオッサン…。
マーシャ ニューヒンですね。イワン・イワーノヴィッチ。
オリガ 奥さんの名前は。
マーシャ 出てこない、です。
オリガ 講演のお題は奥さんの指令なんでしょ。
マーシャ そう。
オリガ なんでこのお題にしたんだろう。
マーシャ まぁ表面的には女学校経営ですから、蔓延してる嗅ぎ煙草の流行を何とかしようってことでしょうけど、もうちょっと奥があるかなあと。
オリガ うん。
マーシャ 奥さんかイワンか少なくともどっちかは煙草やってます。これ。
オリガ なるほど。
マーシャ イワンは「1コペイカも持っちゃいない」ていいます。小遣い銭ゼロだと。これはたぶん誇張なく本当です。奥さんの方は、吝嗇(けち)ではあるけど貧困ではないみたい、でも不満タラタラで生きてます。これ、奥さんはストレス喫煙者じゃないかな…?(窺う)
オリガ うん。聞いてるよ?
マーシャ でもイワンは何とかして細かく小銭でもいいから得ようとしてます。そこが許せないんじゃないかな。
オリガ 奥さんが?
マーシャ そう。あんたがあたしの持参金食い潰したんだよ、くらいに思ってると思う。だから、町の人士が見てるところでわざわざ嫌煙講演させて、おおやけにちょろまかせないように夫を追い詰めてるんだと思う。
オリガ なるほど。――さっきなんであたし見たの?
マーシャ いや…ストレス喫煙者って表現が…。
オリガ ストレスで吸うのは依存症の言い訳ってやつ? いいんじゃない非科学的だって、百年も前の芝居だし。
マーシャ じゃなくて、喫煙じゃないかも…。嗅ぎ煙草ですよね。
オリガ え。何それ。
マーシャ 粉末になってて手の甲に出して片方の鼻でスッて吸うやつ。スッ。
オリガ あぶねークスリみたいだな!
マーシャ その害について。
オリガ 無害でも有害に見えるわ。
マーシャ そこは貴族的にたおやかにやればアレですけど。スッ。
オリガ 普通の、アレなんていうの、普通の煙草。
マーシャ 紙巻き?
オリガ それだ。それはなかったのかね。葉巻とか。
マーシャ 流行ってたのは嗅ぎ煙草みたいです。スナッフですって。スナッフ売りはスナッフキン。
オリガ スナフキン?「義務って何のこと?」
マーシャ 「したくないことをすることさ、ムーミン」…そのスナフキン。
オリガ それが?
マーシャ 嗅ぎ煙草売りなんだって本業。
オリガ 誰が。…まじで! あれ旅人じゃないのか。
マーシャ ムーミン谷大辞典より。
オリガ それ知っただけであたしもう今日はいいわ。
マーシャ 待って待って。
オリガ でもほら、アレあんじゃん、火事のシーン。
マーシャ は?
オリガ 嫌われ者のなんてったっけあいつ、火事で大騒ぎなのにめんどいハナシ持ち込んできて追い払われるやつ。
マーシャ どのハナシです。
オリガ 三人姉妹。
マーシャ ああ。
オリガ で、去り際に煙草の煙撒き散らしてって評判落とすって描写なかったっけ。
マーシャ ああー、あったような、思い出せないような。
オリガ 1年が稽古でやってなかった?
マーシャ ていうことはイリーナのセリフですね…、
オリガ (思い出して)ソリョーヌイだ!
マーシャ (思い出して)「まあ、あのソリョーヌイの煙草のけむり」!
オリガ 紙巻き、あるじゃん!
マーシャ ほんとだ。いやほら、マーシャが冒頭から嗅ぎ煙草やるんですよ、その印象が強くて。
オリガ そんなシーンあったっけ…?
マーシャ 喪服着て。お父さんの命日で。退屈なダンナに飽き飽きしてて。これは人生の喪服なの。どこかの立派な中佐さんが不意に現れないかしら。
オリガ 微妙になんか混じってるような。
マーシャ でも、巻き煙草かそうでないかは大事ですから。
オリガ なんで。
マーシャ 副流煙。
オリガ え?
マーシャ 煙草の害に副流煙が含まれるかどうかのハナシですよ。講演の内容が変わってくる。
オリガ ああ。
マーシャ ニコチンが体に悪いのは分かる。でもチェーホフの時代には煙はせいぜい臭いが嫌がられるだけで副流煙の害については知られてなかったはず。
オリガ うん。ていうか喫煙より副流煙「の方が」より有害、ていうのいまいち分からんよな。
マーシャ でしょ? そんなの直接吸ってる人の方が余計に害あるに決まってると思う。副流煙で年間何万人死んでるとかどう調べてんだよとか。
オリガ なんでそんなこと言われてんだろ。
マーシャ まー嫌煙側からの嫌がらせじゃないですか?
オリガ 嫌がらせ!
マーシャ おまえらこーんなにせけんさまにわるいことしとんのやでーさらしもんにしたるわーうっわーはずかしーこのひとでーす、みたいな。
オリガ あー、科学のフリした単なるディスみたいな。
マーシャ そうそう。
オリガ ん? じゃ、そういうことだと、嗅ぎ煙草の方がいいんじゃないの。
マーシャ 何でです。
オリガ だって副流煙あるとハナシややこしくなるんでしょ。
マーシャ ちっちっちっ。ちがーうんです。にやり。
オリガ 悪そうな顔だな!
マーシャ ここに小道具用のイミテの煙草があります。ロウマッチも。
オリガ おー、もう買ったんだ。
マーシャ (火つけて吸い)どうせあの時代、副流煙の害は知られてなかった。
オリガ はい。
マーシャ だから講演の壇上で敢えてぶはーーっとケムリ撒き散らしてやろうかと。
オリガ おい。
マーシャ 煙幕かのようにぶはーーっ、ぶはーーっ、
オリガ 待て待て。本気かよ。
マーシャ え?(きょとん)
オリガ それ、許可出るかな。
マーシャ え? だってこれイミテですよ?
オリガ そうだけど。
マーシャ 煙草奨励してるわけでもないし。
オリガ まあね。
マーシャ タイトルからして煙草の害について。世界文学史年表にも載ってる名作。
オリガ 分かった分かった。
マーシャ やっぱ初々しい1年がやる方がインパクトありますかね。
オリガ 親の評判とかが心配だけどねー!
マーシャ ですからイミテですって。
オリガ 限りなく本物ぽくやるからインパクトあるってハナシだよね。
マーシャ それはそうか…。
オリガ その1年はどこ行ったん。
マーシャ 山へ柴刈りに。
オリガ あ?
マーシャ なんか知らないけどそう言ってました。追っつけ来るんじゃないですか。
オリガ あのさ、正直さ、大丈夫なのあの子。
マーシャ 先輩の言わんとしてること分かります。でも大丈夫。
オリガ 自信だね。
マーシャ 演劇部員としてやっていこうとは思ってないかも知れない。でも全体に、なんていうか世界観みたいなものを懸命に掴もうとしてて、それがまた楽しそうなんです。馬力あるし。
オリガ あんなヒョロヒョロで?
マーシャ 見かけによらず。今たぶん園芸科に行ってんだと思います。
オリガ なんで。
マーシャ なんかキクラゲがどうのこうの。
オリガ ちっとも分からん。
マーシャ あの子、ヒゲ似合いますかね。
オリガ ヒゲ?! 指定あったっけ。
マーシャ はい。「鼻髭を剃り落とし、長い頬髯を蓄えている」って。
オリガ 頬髯ってモミアゲの続きみたいなやつ? ダルマか。無理ありすぎだわ!
マーシャ やっぱねえ。
オリガ 別にト書き通りにやんなくてもいいんだよ?
マーシャ そうなんですけど、じゃ、なんで書いたんでしょう。これ文章おかしくないですか?
オリガ そう?
マーシャ 鼻髭を剃り落とし、頬髯を蓄える。これ、できないですよね。
オリガ ?
マーシャ だって、頬髯はそりゃできますよ、でも、すでに剃り落としてる鼻髭をどう表現したらいいんです。
オリガ …ああ。
マーシャ 鼻髭がないってことがどうしても必要な描写でなかったらわざわざ冒頭一行目に書かないのでは…。
オリガ 田舎道、一本の木。ゴドーを待ちながらの最初のト書き。…必要だね。
マーシャ でしょー?
オリガ 分かった。鼻髭なしのモミアゲと頬髯だけってのが、当時普通ありえなかったんじゃないの? ちぐはぐな感じで。だからこの場合、鼻髭がないって書いとかないと、普通は鼻と頬とセットで役作っちゃうから親切で書いてると。
マーシャ ここは不自然を押して敢えて鼻の方だけ剃ったんですよと。
オリガ そう。
マーシャ 何のために。
オリガ え。
マーシャ おかしいでしょ。目的がないと。
オリガ 目的か…。
マーシャ なぜ鼻髭があると都合が悪いのか…。
オリガ もちろん、講演の内容に関係があるわけだよね…。
マーシャ 煙草の害と鼻髭…。

間――。

ふたり ――あ…!

ふたり、嗅ぎ煙草吸う。

ふたり スッ。
マーシャ …嗅ぎ煙草だ!
オリガ 鼻髭あったら吸えないんだ!
マーシャ 嫌煙講演してるくせに、
オリガ 聴衆に、でも私は吸ってるよ〜んアピールしてるんだ。
ふたり 奥さんへの当てつけだ!
オリガ やるな、イワン。
マーシャ なんだこの隠れヒーロー。

乱暴なノック。「すいませーん、開けてくださーい!」

マーシャ 帰ってきた。はいよー。
イリーナ 遅れましたー。てかグエッ。(引っかかって通れない)
マーシャ 横んなって。横向き。なにしょってきたの!
イリーナ かにさんかにさんどーうしたの、(横歩きで入ってくる)
オリガ ホントに柴刈りかよ!
イリーナ あ、オリガ先輩ちーす。えっこらせー。
オリガ 二宮金次郎かあんたは。
マーシャ アハハハハ。
イリーナ いやーなかなか運搬はシドイやなー。
オリガ セロ弾きのゴーシュか。
マーシャ なに持ってきたの。
イリーナ まず水。
オリガ うるさいわ。(でも渡し)はいよ。
イリーナ ぷはーっ。
オリガ おっさんか。
イリーナ まあ話せば長いことながら、
オリガ いいよ手短かで。
イリーナ キクラゲのアレです。
オリガ 短かすぎるから。
イリーナ 園芸科が裏の防空壕跡でキクラゲの栽培やるんで沖縄に培養床注文するっての聞いて、ついでに頼んどいたんです。いわゆる原木ってやつですね。
マーシャ シイタケとかの。
イリーナ そうです。
マーシャ なるほど。
オリガ あんた分かってんの?
マーシャ いえぜんぜん。
オリガ で、これ何なのさ。
イリーナ サトウキビの搾りガラですね。
オリガ こんなに?!
イリーナ こんなにって先輩、部屋に置くから多く見えるけど畑にあったらほんのこそっとですよ。
オリガ いや、あの、でもねイリーナ、
マーシャ (吹き出す)
オリガ これは園芸科に置いときなさいよ。
イリーナ あたしがバイトして買ったんですぅ!
オリガ 演劇部と関係ないじゃん。
イリーナ 小道具ですから。
オリガ なんの。
イリーナ 煙草の害についての。
オリガ はあっ?!
イリーナ (にこにこ)
マーシャ (笑って)ダメだ…お腹痛い…、
オリガ これ、何なんだ…世代間ギャップか…、
マーシャ 個性でしょ。
オリガ なにが、どうなると、これが、小道具になるの…?
イリーナ これはめきめきローラーかけて砂糖水絞った後のキビガラを石垣島の天日で干してから運んだものです。これを更にぺらぺらになるまで潰します。
マーシャ どうやって。
イリーナ 工業科が手動の圧延ローラー持ってました。
マーシャ 彫金用で植物やれんの?
イリーナ やれすぎるくらい。だってアルミ箔とか作るやつですよ。そんでぺらぺらになったら押し切りでザクザク刻んで、コーヒーミルでごりごり砕いて、煙草の葉にします。
オリガ はあっ?!?! あんた煙草から作る気か!
イリーナ 本格的でしょ。
オリガ すげえわ…。
マーシャ TOKIOかよ。
オリガ …ものすごーく気の毒なこと言っていい?
イリーナ はあ。
オリガ これ。
イリーナ あ、ダメですよ先輩学校に、モク持って来ちゃ。
オリガ モクって言うな。
イリーナ タンベ?
オリガ 戦後か。違うのこれはイミテなの。
イリーナ イミテ。
オリガ あんたの苦労はすごいけど残念ながらもうマーシャが道具は揃えてるの。
イリーナ これ偽物なんだ…すごいな。でも、あたしのは本物ですから平気です。
オリガ そうじゃないんだよ。本物じゃまずいだろ。
イリーナ まずくないよサトウキビだもん。
オリガ その労苦はどこへ向かうのかってハナシよ。
イリーナ え、だってこれ、舞台で吸うわけですよね。それってお客さんにはニセだか本物だか分からないんだから、役者はせめて分かってないと、なんかこの舞台での煙草の立場って、どうでもいいものになっちゃいません?
オリガ ?
マーシャ うん。(山高帽かぶせる)
イリーナ 煙草の害についてっていう芝居なのに煙草の害については何にも言ってないわけですよね。
マーシャ そうだね。
イリーナ ナンセンスがやりたかったからですか。
マーシャ 普通はそう演出する。でも、
イリーナ あたしたち、イワンを道化にしたくないんです。何がどう辛かったのかオッサンすごく述べてます。思わず脱線したために煙草の害について語りはぐったんじゃなくて、彼なりに周到に用意して講演に臨んでます、鼻髭も剃って。
ふたり おおっ!
イリーナ イワンリスペクトで行きたいんです。でも残念ながら今の進捗を率直に言うと、シーンが短い。
マーシャ そうなんだよねえ…。
イリーナ なんで短くなっちゃうかっていうとイワンが立派なこと言ってるシーンが少なくて、奥さんへの愚痴の端々にチラチラ見えるだけだから。
マーシャ そう。
イリーナ じゃ、書き足すしかないですね。
オリガ そう来たか。でも主題を変えちゃうってこと?
イリーナ なるべくそうしたくないから、奥さんへの愚痴とは別の話題で同じ主題にとどめたいと思って、それでサトウキビです。
オリガ また分かんなくなった。
マーシャ いや、分かる、続けて。
イリーナ 先輩。
マーシャ あたしはいいから大先輩に。
イリーナ 大先輩。煙草の害は、あるんですかないんですか。タイトルではあるともないとも言ってません。本文中でも言ってません。それでも害あるの一択なんですかね。どこにも書いてないのに。
オリガ ああ…。
マーシャ 分かってきました?
イリーナ 敢えて言えば、イワンは、ニョーボは姑息な計略と意地悪で今日こんな講演をしろと私に強いたけど、あいつとの三〇年間の苦労に較べたら煙草の害なんてお遊びみたいなもんだ、私は本来もっとずっと純潔で高尚なんだ、ということは間違いなく言ってます。そしたらね、あたし思うんですけど――、ここは、誰にとっても煙草が害のないものであるような世界の構築に向けてイワンが、サトウキビ煙草という決定的なアイディアを提案する、ていう講演にしたらどうでしょう。

間――。拍手。

マーシャ これがうちの1年です。
オリガ 参った。
マーシャ サトウキビのアイディアよく出てきたね。
イリーナ 石垣に移住したくて。
マーシャ だからTOKIOかよ。
イリーナ で、これ、脚本演出あたしがやる方がいいでしょうか。
マーシャ あたしに出ろって? ここまでネタ出したらあんたが立つんだよ。
イリーナ はあ。
オリガ よーし分かった。工業科行こうぜ。
イリーナ 今からですか。
オリガ こんなでかいもん部室に置いとけないし、なに、こんな面白いことあたしに手伝わせないつもり。
イリーナ いえいえ。
オリガ またへんな子見つけてきたね。
マーシャ やりすぎくらいでいいんじゃないですか。
イリーナ よっこい、
オリガ 待て待て。また通れないから廊下出てからしょいなよ。
イリーナ そうか…。(誰にともなく)あたし、働きたいんです。早く学校終わらせて、働かなくっちゃ。
オリガ いいからヒョロヒョロしてないでそっち持って。
イリーナ はーい。(ふたり出て行く)
マーシャ ――三人姉妹の男きょうだいアレクセイに軍医チェブトイキンが言う別れの言葉。ねえ君、わたしは明日たつ。もう二度と会えないかも知れない。そこで君にひとつ忠告があるんだが――いいかね、君は帽子をかぶって、手に杖を持って、出て行くんですね…どんどん歩いて行くのさ、あとも振返らずに歩いて行くのさ。遠のけば遠のくほど、ますますいいのさ。(退場)









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