mixiユーザー(id:1506494)

2015年12月09日20:26

374 view

ファルスタッフ

本日、新国立劇場で拝観して参りました
すでに何度も書いている通り、ワタシは必ずしもヴェルディファンではないのですが
シーズンチケットに組み込まれているものですから、後学のために
多分ナマでは今までに観ていないと思います
以前二期会で観たのはオットー・ニコライの方だと(フルート夫人が出ていたので)

事前学習としてはまず小田島訳の原作を
それからYouTubeにカラヤン/タッデイの動画がありましたが字幕なしだったので
音だけ聴いて対訳を見ながら(何故この対訳本…音友版で現在絶版の…を持って
いたのか)で、頭に概要を入れたところで元々持っていて、やはり日本語字幕がない
ため未観だったショルティ/バキエのDVDを英語字幕で観賞しました

ヘンリー4世に出てくる魅力あるならず者サー・ジョン・フォールスタッフを主人公に据えて
喜劇を書けと言うエリザベス女王の求めに応じて、極めて短期間に仕上げたという
伝説のある芝居が原作ですが、ヘンリー4世に比べると単なるイジラレ・キャラになっていて
人物像としてあまり面白くはない
なので、ヴェルディのファルスタッフも今まで敬遠していたような次第です

でも改めて観て(聴いて)みると、やはり最晩年のヴェルディの音楽は円熟の極みで
ワタシの苦手な「ズンチャッチャ」を完全に脱しています
むしろ19世紀末の作品ながら、20世紀の近代音楽を先取りしているようなところがあります
喜劇的音楽というよりは、フォード氏のモノローグ「夢か現か」も、ファルスタッフの
「行け、老練な騎士よ」もイタリア語の意味が分からず聞いただけではイアーゴの信条に
通ずるところのあるドラマチックなアリアです

本日のキャストは声に関してはいずれも立派な歌唱で、何も申し上げることはありません
フェントンの吉田浩之さんが、ちょっと割れていたかなと思う程度
ただ、ファルスタッフを歌ったガグニーゼは、イアーゴやスカルピアには相応しい容姿ですが
もうちょっと愛すべきキャラに見えればいいのにね
ショルティ版のバキエなんか、愛嬌たっぷりですけど
ピストーラを歌った妻屋さんは、いつもは重厚なバスの役柄のせいか、今日はちょっと
不器用だったかな(ピストーラは元々鈍重な役どころではありますが)
クイックリー夫人役のザレンバはカルメン歌いだけあって、どすの利いたメゾ
これも、もう少し悪戯っぽさが感じられてもいいと思いました

第2幕2場でアリーチェがリュートを弾く場面がありましたが、ミコライは本当に
弾いているように見えました
もしエアーだとしたら完ぺきな演技ですね(画像1)

最終幕で、人々がファルスタッフを小突き回す、ロッシーニ張りのアレグロは
一糸乱れずというわけには行かなかったのが残念
その後のフーガがまとまっていただけに、惜しまれます

ジョナサン・ミラーの演出は「ドイツに始まった『コンセプト』に基づく演出、意図的に観客の
期待を裏切るやり方には興味がない」という本人の言葉通り、極めて正統的なものでした
それだけに、こういうベタな喜劇は飄逸な味わいが欲しいところです
シェイクスピアの原作には言葉遊びがたくさんあって、イタリア語にする際にそれらを
全面的にカットしたのですから、それに代わる遊び心を感じさせてもらいたかったですね
再演演出が三浦安浩氏じゃ、望むべくもないところですが

画像2は新国立劇場に飾られたツリーです
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2015年12月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031