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2015年12月03日18:50

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MET Live Viewing "Tannhäuser"

METのライヴ・ヴューイング第3作目はタンホイザー
今までに国内外の(比較的)多くの公演を観ておりますが、
何よりも学生時代に福永陽一郎先生の編曲で男声合唱版演奏会用組曲を
歌っておりますし、また畑中先生の生前最後の指揮で歌ったのが
タンホイザーの大行進曲でしたので、ひときわ思い入れのある曲です

本日桜木町の横浜ブルク13まで行って参りました
MET公演ですから当然バレエ付きのパリ版で、歌合戦ではヴァルターの出番ナシ

指揮がJ.レヴァインはいいとして、演出がオットー・シェンクですからビックリ
一体いつのプロダクションかと思ったら38年前だそうです
それを今でも大事にしているのは感心しますね(衣装も当時のものがあるとか)
シェンクのオーソドックスな演出だからできることなのでしょう
どこぞのオペラ通のように「20年前の演出だから見ません」なんていうことはない

オープニングの解説でS.グラハムが「マエストロはこの日のために体調を整えて」
と言ってましたが、レヴァインは車いすで指揮していました(パーキンソン氏病らしい)
しかし、指揮の動きは障害があることを感じさせません
常に先へ先へ指揮して行って、耳で聞く音との間に半拍くらいの時間差がある
やはり手兵のオケなんだなぁ、全然乱れません
国内オペラだと(東フィルの場合ですね)手に汗握ることになるのだけれど

ソリストは声は全く不満がないのですが、ヴィジュアルがちょっと…

まずタイトルロールのJ.ボータは麻原彰晃と高木ブーのハイブリッドですね
声はヘルデンよりはもうちょっと柔らかい感じで、タンホイザーは初役だそうです
前シーズンのマイスタージンガーでヴァルターを歌っているのだけれど
タンホイザーの方が難しいらしいです(特に第2幕)
第2幕は高低差が激しいと言ってましたが、これは音域のことではなくテンションでしょうね
エリーザベトとの再会でほんのりしてから歌合戦で激昂し、追放を命ぜられて
悔悟のモードになる(第1幕のヴェーヌス賛歌や、終幕のローマ語りより大変なのでしょう)

ヴォルフラムのP.マッテイは稀代の悪相です(コミカルなところのないウォルター・マッソー)
しかし、第1幕終盤でタンホイザーに向かって「エリーザベトに会いに行こう」と歌いかける
ところは、なんという柔らかく人間味あふれる声でしょう
ヴォルフラムというと夕星の歌とばかり思われがちですが、こんな素敵なメロディーを
与えられていたのですね(夕星も良かったですけど)
終幕でヴェーヌスベルクへ戻ろうとするタンホイザーを阻止するところでは
ドラマチックな演唱で、こういう歌い方もできるんだ(こちらの方が容姿に合っている)

エリーザベトのE=M.ヴェストブルックは第2幕冒頭で喜びにはちきれんばかりの
アリアを歌うのですが、見た目は乙女というより女王の貫録で、威厳のあるエリーザベトに
なってしまいました(悪いというわけではないんですが)
昔、二期会で観た時は曽我栄子さんが階段を駆け下りてくるようにして喜悦に満ちた
歌唱をしていましたが、ライヴ・ヴューイングみたいにアップで観ない方がいいのかも

エリーザベトの祈りは、畑中先生が「これぞドイツ女っていう感じで演るのよ」と
仰ってましたが、まさにそういう感じでしたね

しかし歌い終わった後は、ヴォルフラムが差し出す手を拒んで、とぼとぼと去っていく
ここは音楽も切分音でそれを表していますので、演出は音楽を裏切りません
同時にヴォルフラムの哀しみを表していて、マッテイの声なき演技が素晴らしい

演出で言えば、巡礼の合唱でまずヴォルフラムが巡礼の中にタンホイザーの姿を
探しているとき、エリーザベトは期待を抱いていて巡礼の方を見ようとしない
それから改めて一人一人の顔を確認して(目深に被ったフードを上げたり)
落胆する場面では胸が締め付けられ、目の前が滲みました

最終場面の、巡礼の杖に若葉が生じたことを告げる女声合唱に男声が巡礼の歌を
重ねるところでは、かつて学生の頃、1年下のY.M.君が「もう、目の前が紫色になっ
ちゃって」と言った言葉を思い出し、まさにその通りでした

團伊玖磨氏は「三和音が勝ちすぎている」と、このオペラには批判的でしたが
ワタシは團氏のオペラよりはタンホイザーを採りますね

11時開映で終映は15時40分
飲まず食わずでしたので、遅めの昼食を桜木町駅ビルCIAL1階のキッチンJo’sで
いただきました(うれしいことに、こんなに遅くてもランチタイムでした)
http://www.americanhouse.co.jp/restaurants/kitchen-jo-scial.html
ワインもたっぷり注がれて、10分で完食
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