初めての訪問だ
なかなか迷いながら辿り着いた
多少酔った脳みそで、初めての土地、夜
しかも下町の目印の無い路地を歩いたとあっては致し方ない
一体に東京の下町の人は、自分たちの街の店に行く
あまり余所の街の店に、わざわざ出かけていく事は少ない
どこがにムラ意識があるのかも知れない
そして、自分達の行きつけの店には基本的に一人で入る
しかし、先客に知り合いがいたら、入らない
恥ずかしいのだ
食事という極私的な行為を知り合いに見られる事
自分の嗜好を知り合いに曝け出す事がとても恥ずかしいのだ
廻りが知らない他人ばかりで、初めて落ち着いて食事ができるのだ
なので、行きつけの店で、ばったりあった知り合い同士で話が盛り上がるというのは、まず、無い
ここら辺は、東京の下町にルーツがある人間でないと分からない感覚なのかも知れない
田中食堂はそんな客にピッタリの店であった
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