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2015年10月22日21:45

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マンザナ、わが町

こまつ座公演を観て参りました@紀伊國屋ホール@今日

初演は1993年で95年と97年にも再演されています
ワタシはそのいずれかを観賞しております
また、TVでも放映され、それをVTRに録画しておりますので
今回は少なくとも4度目という事になりますが、20年くらい前のことで
粗筋くらいしか記憶にありません

第二次大戦中のアメリカで日系人たちは強制収容所に隔離された
そこで収容所を賛美した朗読劇を演ずることを命じられた日系人女性
5名による群像劇です

5名のうち1名は…という展開があり、そのことは覚えておりました
だけどその他の細かいところは記憶からドロップアウトしているので
新鮮な気持ちで拝観しました

キャストは一新され、前回女浪曲師を演じたのは文学座の神保共子さん
でしたが、今回は熊谷真実さん
観客の笑いを取っていたのは、いずれも同じ
熊谷さんは終演後のアフタートークで「(自分の演技は)すべて鵜山さんの演出です」と
言っていましたが、共演者たちは声をそろえて「地です」とのこと
でも鵜山演出であることは明らかです(それを地で演じた)

その他の出演者も、いかにも鵜山調の誇張された所作で生き生きと
演じていたのは、鵜山君が各女優達から自然に引きだしたものだからでしょう
そして演出者の意図である「すべて虚構ではなく真実です」ということを
演技者たちが納得していたからに違いないのも、これまた明らか

登場人物は井上ひさしの作り出した架空の人々かもしれませんが
そのシチュエーションはことごとく井上氏の詳細な調査によって得られた
事実に基づいているものでありましょう

日系人たちが(アメリカ市民権を持っている2世たちも)強制収容
されたのは、敵国人であるという以前に人種差別があったという事実
5人の女性(実は4人なのですが)たちがそれぞれのセリフでそれを語ります
残りの1人も裏返しの差別による生い立ちの悲劇を語る
それが井上流で、単なるアメリカに対する断罪としていません

日本人は差別による被害者なのか、同じ罪を犯したではないか
アメリカはレーガン政権の1988年に戦時補償法を発効し、この強制収容者
に対して謝罪し、一人当たり2万ドルの補償金と教育資金12億5千万ドルを
支払うことになった、それに比べて我が日本は…
というのが井上氏の真意です(公演プログラムに掲載の作者の「前口上」による)

前回観た時には、井上作品に顕著な薀蓄が「ミュージカル談義」に現れていた
記憶があるのですが、本日の公演ではそれがありませんでした
今回の公演に際してカットされたのか、過去の再演の際作者自身により書き直
されたのか判然としませんが、井上氏の真意がストレートに表現されるように
なったことは間違いありません

5人の女性たちが(これは5人です)収容所で確立したアイデンティティと
ポジティヴに生きる力をお互いに確認し合うセリフは、お互いにではなく
客席に向かって投げかけられます
これは鵜山君の演出(演技指導)であったと、ソフィア役の土居裕子さんは語っていました

コミカルな演技の中で、これだけは伝えたかった鵜山君の主張でしょう
女優さんたちは、今回の舞台は演ずることでなく生きることであったと語っていました
鵜山君の主張が彼女たちに伝わり、そして観客である我々に伝わってきたと思います

※画像は土居さんのブログから無断借用しました(スミマセン)
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