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2015年08月13日00:37

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『執着と愛の境界線』第7話

『執着と愛の境界線』第7話

 カノンが待ち合わせ場所のホテルに入ってみると、サガとアケローオスはホテルにあるバーで二人で酒を飲んでいた。
「来たか、カノン」
「待たせたな」
 カノンは二人に近寄り、それぞれ抱きしめて頬にキスをした。
「お前も何か飲むか?」
「ラガヴーリンを水割りで」
 その日のカノンは、ひどく機嫌がよさそうだった。アケローオスが声をかける。
「えらく機嫌がいいな。どうした、カノン」
「ん?だって今日はあんたから誘ってくれたし…」
「約束した」
「…うん」
 運ばれてきた水割りをカノンは一口飲んだ。
「ちょうどサガとお前の話をしてたんだ。お前がどうすれば満足してくれるかって話」
 その言葉に、カノンの機嫌がたちまち暗転した。
「…またおれのことを面倒だとか思ってるんだろ」
「おれが望んでいるのは、お前の…お前たちの幸せだ、カノン」
 アケローオスが言う。
「これは真実だ。信じろ。だから、お前と判官殿の仲を邪魔するようなことは…」
「ラダマンティスは気になんてしないぜ」
「嘘だな」
「……」
 一言のもとに否定され、さすがにカノンも答えに詰まった。
「それでも…おれを欲するのか?」
「…おれが満たされるまでは付き合ってくれると、そう言った」
「サガがお前のものになれば、満足するか?」
 その問いに、カノンはきょとんとなった。やがて面白そうな笑みを兄に向ける。
「おれのものになってくれるの、兄さん?」
「…アケローオス様にも言ったが、それはできない。禁忌だ」
「ちぇっ」
「カノン、私は…、愛は試すようなものではない、と思うぞ」
「…なんだか二人して、どうすればおれの相手をせずにすむかを考えてるみたいだな。しないのかよ」
「いや…」
 そうしてアケローオスはカノンにささやいた。
「部屋に…行くか?」
 黙ってカノンはうなずいた。

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