さすらいの姫君
コハダの美味しいお召しあがり方・2
時 いま
場 ここ
人 十代の三人の女優
プロローグ
畳の座敷――。【幕前、ダた「おじょうさん消えた」】
よく作戦練って
目を輝かせ
娘取り返せ
声あげて
誰が敵か
かまわずに
娘取り返せ
声あげて
道を行くムカデよ
娘はどこへ消えたのだ
「おじょうさん消えた、
ここから遠く雲のなかへ」と。
残した足跡を追いかけて行けば行くほど
少しづつ体軽くなり手足楽に
人が近づかないサンクチュアリへと。
ある日消えた
娘の寝床
置き手紙もない
知らぬ間に
誰がさらった
誰がさらった
娘を返せ
出発だ
空を行く雨雲
娘はどこへつれて行く
「おじょうさん消えた、
ここから遠く光のなか」――
*
―― おお――いぃ…。
―― おお――いぃ…。
―― おお――いぃ…。
まず声がし、次第に三人の女優が現れる…。シンクロせざる呼吸たち。
―― はなやかなまち
さみしいみやこ
とらわれのこころ
あでやかなるすがた
はなやかなまち
さみしいみやこ
とらわれのこころ
あでやかなるすがた
あでやかなるすがた――
そして口上を述べるだろう。【DAVID SILVIAN "Polling Punches"】
A 皆様、1年ぶりのご無沙汰でございます。早いもので4度目となります郷土資料館旧加藤家住宅での上演行動。今年は町に伝わるふたつの伝承をとりあげてみました。ふたつに挟まる形でいくつかの民俗劇的試みもご用意しております。
H 学園台となりにある「身代(コノシロ)神社」は須賀村の鎮守、姫宮にある「姫宮神社」は国納村の鎮守です。宮代町ができる時、このふたつの神社からひと文字ずつ採って「宮・代」という地名が生みだされたことはあまりにも有名な町史のトピックです。
Y 奇妙なことに、この両神社にはどちらも『逃げてきた姫』の伝説が残っております。姫宮にたどり着いた「宮目姫」は彼の地で病に斃れ、いっぽう須賀にたどり着いた無名の姫は、村人たちの機智により辛くも客死をまぬかれます。この符合が何かを意味しているのか、それともただの偶然なのかは、簡単には答えを出しがたい問題です。ただミヤコとエミシという2大勢力に挟まれた土地アヅマ、という地理的条件が、まるで寒冷前線がかならず南西から北東に駆けぬけるがごとく、無数の時のさざ波となってこの地を西から北へ落ちのびる敗残兵たちの流路になっていたこと、これだけは押さえておきたいと思います。
A ロードムービーのような単純な浪漫は、敗走のものがたりにはありません。どことなく不穏な「死」のイメージをはらんだ断章が、関東の逃亡説話にはつきものです。非・土着性の不安でしょうか。土地に対する愛憎恩讐の薄さ。国民の9割方が都市民でも農村民でもなく「郊外型」のライフスタイルに回収されようとしている現代の「足の裏の薄さ」の視角から古代のものがたりを逆照射してみたい、と考えて今年のイベントは構成してみました。どうなりますやら。
H シジミの名を持つ余所者の女が現れます。一方、シジミはこの列島において発掘された最古の淡水性二枚貝だともいいます。この重層性は人心を救う。「ものがたり」においてのみ機能する多重露光の世界を、
3人 お楽しみください。
全員、高らかに笑う。そして同時に語りだす。
Y その昔、桓武天皇の孫に宮目姫という美しい姫がいた。この姫は、滋野国幹に伴われ下総の国へ行こうとして、天長元年(824年)に武蔵国百間の里紅葉ヶ岡という所にたどり着いた。頃は長月(旧暦9月)山中の紅葉のながめ美しく、その景色に見とれているうちに陽は落ち肌寒くなり、にわかに癪を起こし夜半に息たえてしまい遺体は岡の西の方に埋められた。
A ある武将が奥州に落ち延びる際、その姫が追っ手に捕らえられそうになった。その時、当地の人が鰶という魚を焼いた。この匂いは人を焼いた臭気に似ているため、村人は追っ手に対して「姫は死んだ」と言って、その命を救った。姫は感謝して鰶にちなんで身の代神社を祀ったと語られている。
H 静御前が奥州へ落ち延びた義経を慕って今の身代神社の辺りまで来たら、追っ手が来たので土地の人は静御前をかくまった。追っ手の役人には「そのお方はこの地で亡くなりました。今焼いたところです」と説明すると役人は納得して帰っていき、御前は無事奥州へ向かった。土地の人にどうやったかというと、「魚のコノシロを焼いたのです。コノシロを焼くと人の焼ける匂いがするのです。」と答えた。そこで役人は信じてしまったのであるという。
第一場 鯛焼きを魚拓に取る
タイ焼きほおばりながら聞き取りにくく、あこがれのまなざしにてタイ焼き自慢。
H 鋭く中空を睨む真円の眼は、葛飾北斎が錦絵に描いた「しまだい」のそれに酷似した風格がある。老舗鯛焼きの貫禄というものであろう。
A 尾びれ骨太、ウロコは雄渾。安藤鶴夫が賛嘆賞味してやまなかった「シッポの先までアンが詰まった」名物の真骨頂がそこにある。
Y 青海波に似たウロコ、少ない尾骨が独特のたたずまい。目方がかるいからこそ、駅前屋台で清楚可憐さが光るのである。
H 眼は蛇の目、豹の斑点を思わせるアールデコのウロコ、短い胸びれ、幼児の口にすっぽり納まる尾…シュールレアリズムの傑作!
A 頭頂部の優美なカーブ、入念に刻まれたエロティックな口唇部。尾を跳ねる姿は縁起物「鯛の塩焼」を模したのではなかろうか。
Y 本物の鯛と鯛焼、虚実皮膜の間にあって、写生の省略法を縦横に駆使した意欲作。ウロコはむしろ鯉に似たいけぶくろに巣くう怪魚である。
続いて、2名による2分ほどの即興。【でいじぃの私家録音版】
H おい、おまえ鯛焼きってどっちから食べる?
で始まり、激しく争い、脱線して戻って来ず、最後は抱き合って泣き、最後の最後はぶん殴り合ってダブルノックアウトする修羅場――
*
倒れつつ、片方、うつろな鼻歌をうたう…。
Y その歌は──甘粛(シュク)か。
H お、分かるか、さすがは太史令だな。そうだ。今はよみ人も分からなくなってるが、大唐帝国は長安の都を離れ甘州から粛州にかけての河西回廊を、こちらに向けて馳せもどってくるひとりの祖先があったと思え。唐の文物がまぶしすぎたか、なにか義憤に駆られてか、さては女のせいかは分からんが、いずれにしても逃げだしたのではあろう。だが考えてもみろ、このペルシアまで、いったい何千里あるというのだ。その労苦を思えば、せっかく海路はるばるたどりついた東方の商都をのめのめ逃れたからとて、軽んずる気にはなれん。にんげん、逃げっぷりにも人格があろうぜ? その短気、いかさま俺の先祖に相違あるまい。ウワハハ!
Y その短気にしては、字を教えるなどとはまた、悠長なことを始めたものだな。
H ふん、俺の性格じゃあ向いてはおらん、そりゃ分かってる。だが飢饉は目の前だ。手をこまぬいちゃおられまい?
Y ヒツジの世話でも手伝ったらどうだ。
H そっちの手際で奴らに敵うものか、邪魔になるだけだ。
Y 君の財産で粉なりと買い与えては?
H やってはみたが焼け石に水だ、クルディスタンは広すぎる。金が尽きればそれまでだしな。
Y だからといって収税人を敵にまわして得があるのか…?
H 妙にこだわるなあ。──アリ、俺の目をみて答えろ。
ここまでアリはペルシアの大臣だが、兼、女子テニス部のシングル決勝戦で宿命のライヴァル(超性格悪い)とガチのバトル。野育ちの身軽なフットワークが身上だが、惜しいところでビキィン!と肩を痛め敗退。爽やかに握手して別れようとするとあろうことかツバを吐きかけられムカつき、悶々とロッカー室に帰ってウェアに八つ当たりしながら荒々しく脱ぎ捨て、お約束のサービスのシャワーシーンあったあと、冷蔵庫から缶ビール取り出して「プシッ」と開け、いざゴクリとやろうとしたところへ「こっちを見ろ」といわれて「えええー?」とがっかりする。
H 回りくどいことをいうな。何があった?
Y いや…。
H いったろう、馬賊の契りだ。おぬしにならばどんなことでも俺はだまされるぜ。だから嘘をつかんでくれ。
Y うむ…。(やがて)ハッサン。アララート山といったな。
H いった。
Y いつ帰るつもりだ。
H あん? おい何をいってる、はっきりいえ。
Y あっちの窓から外をみろ。
H (校庭の方見て、驚き)──あれは…?
Y 討伐軍だ。
H トウバツ?! 何のことだ!
Y ぬしも知ってはいよう、ただいま帝にあらせられては癇癖はなはだ強く、また、自ら恃むところすこぶる厚い。いかに些細な謀反であろうと、おん身の意にそわぬ者へは徹底的に目にものみせてくれると仰せられて、あのいくさごしらえじゃ。
H (息を呑んで)アララートへか?
Y うむ。
H ちょっと待てよ、謀反だと?
アリ、缶ビールがなくなってるのに気がつく。懸命に探す。床板とかはがす。ハッサンのシャツの中とかまで探す。
Y 山では皇帝に逆らおうなどという者はおらんぞ。おるはずもない、国家のなんたるかもろくに分かっておらん連中だからな。だいいち悪徳収税吏ならば政府にとっても仇のはず。だのに、軍まで出してヒツジのような牧童どもを追いたてようというのか? 納得いかん!
H ヒツジのような…、帝はそうは考えておられん。
Y アリ。──おぬし、いつから知っておった。
H …。
Y たまには都に顔をだせと懇切丁寧を極めた書状をもって使者の着いたのがちょうどせんの望月。俺も単純だからのこのこやってきたが、アリ!
H いや、その…。
Y おぬし、この俺をおびきだしたな?
H …。
感きわまって胸ぐらとる。
Y くく、くるし…!(地声で)ゆ、ゆるせ、君の身を案じてのことだ!
H 俺の身? よく聞け! 俺なんぞは逃げりゃあ済むだろう。だが連中はどうなる…土地に縛られたあいつらは!(不意に放し、急に明るい学園ドラマのノリになって)──また会おう。
Y どうする気だ?!
H 戻るさ。
Y よせ! 討伐軍だといったろう!
H だからだ。
Y ハッサン、利巧になれ…!
H (にやりとして)利巧に? 無理いうな、チョ突猛進が俺のとりえだ。なあに負けやせん。
Y ばっば、バカな!
H 宰相アブ・アリ・ネザーム。
Y あぁ?
H (ヒソヒソと)頼みがある。王をさとしてくれ。百人や二百人の謀反ならどうとでもなりましょう、しかし、百人がいずれ百人の百倍になったらいかがなされる、備えがおありか、とな。
Y しかし…、ハッサーン! それはいかん!
H 君にしかできん。頼んだぞ。
ト退場の心持ち。
*
そのまま即興劇に接続(台本は一例)。【イクノ&でいじぃ「ヒートアイランド@好き夏クッキー」】
H 僕が、夏休みに、やりたかった事。大好きなゆりちゃんと一所に遊園地に行きたかった!!「ママァ!! ゆりちゃんちに行ってくるよ」でぼくはそう言って、家を出た。ゆりちゃんは、僕の幼なじみのすっごいセレブで、すっごい美人で、優しい子だ。成績だっていいし、言うことなし。クラスでは、僕たち男子はもちろん、女子にだって大人気。モテモテだからっていばったりしないから。でも、僕、おくびょうだから、ゆりちゃんはきっとぼくのこときらいなんだ…。
おっと、こんなこと話してる間にゆりちゃんちについたみたいだ。スーハースーハー(深呼吸)「ピーンポーン! さすがセレブのゆりちゃんち。立派なチャイムだなあ。こんな立派な家にお住まいのゆりちゃんのことだから今もお勉強中だと思ったんできっとこんなお遊びなんかに付き合ってくれないと僕は決め付けていた。だから、ゆりちゃんちの執事さんが現れたときなんかびっくりした。それに、執事さんは、ゆりちゃんは遊べません、とは言わずに「あぁ、お嬢様ねぇ。今日はめずらしくおひまなようで…。あ、じゃあ呼んで参ります」そう言ってこのお城みたいな豪邸の中に消えていった。しばらくして、ゆりちゃんがでてきた。「なんか用かよ!! え? ハ?」「え、あ、あの…」「あのなんだよあのだけじゃわかんねーんだよ」「?!・○●□□*△□■?・。、;:@¥1230987!?」「はっきり言えはっきり」…こ、困ったなあ。ぼく、こんな子にほれてたんだ。ありえねえ…。やばい、やべえよこの人。かなりいっちゃってる…。デーとしたいけどこんな調子じゃねえ…。どうしよう。ウ〜ン? あ、あれをだそう。こんな時こそ♪(カードを取り出す)ジャジャ〜ン!! どうすんの? どうすんのよ、俺? ライフカード続かない!!…むなしい、むなしいよう!!「オイオイオイオイ! いいかげんにしろよなあ。ふざけんなっつってんだよ」怖っ! このままゆりちゃんが不良のままだったら僕、死んじゃうかも!?「ゆ、ゆりちゃん?」「なーに?」うわっ。い、いきなりキャラが変わった…。話しかけるべきか、やめるべきか…。おっあれをつかおう。ちょっと古いけど。「♪♪ちゃらちゃっちゃっちゃちゃちゃ♪よーく考えよーう 可愛いゆりちゃんは大事だよー 怖い、ゆりちゃんも?大事だよー?♪♪(アフラックの歌)」あ〜あ、余計考えられなくなっちゃった。「うっせーんだよ! だまれこのクソおやじ!」…く、くそおよじ? いいくらゆりちゃんでも、許せない!「あのねえゆりちゃん言っていいことと、悪いことがあるの」ゆりちゃんったら言いすぎだよ。「だまれっつってんのが分かんねえのか? クソクソおやじ!」な、なんか、か、かっこいい☆だんだん今のゆりちゃんが、好きになってきたって言うか憧れの女の子??「ゆ、ゆりちゃん、す、すすすす、好きです。だから、遊園地行かない?」「だ・ま・れー。ゆりは、あんたのこと、嫌い。だれがなんと言おうと、き・ら・い!」え…? せっかく今のゆりちゃんが、好きになれたのにぃ!? どうして? どうしてなんだようぅぅぅぅ!
「ハッ。ここはどこ? 壊れたゆりちゃんは? ぼく、どうなっちゃたのお?」
こうして僕は、夢の中でもゆりちゃんと遊園地に行けなかった。♪チャンチャン♪
*
巴御前の別れのシーン。【金大煥「黒雨1」】
A 不思議やな粟津が原の草枕を。見ればありつる女性(にょしょお)なるが。甲冑を帯する不思議さよ。なかなかに巴といひし女武者。女とて御最期に。召し具せざりしその恨み。執心残つて今までも。君辺に仕へ申せども。恨みは猶も。荒磯海(ありそうみ)の。粟津の汀にて。波の討死末までも。御供申すべかりしを。女とて御最後に。捨てられ参らせし恨めしや(としをり)。さても義仲の。信濃を出でさせ給いしは五万余騎の御勢くつばみを並べ攻め上る。砺波(となみ)山や倶利伽藍志保(しお)の合戦に於ても。分捕功名のその数。誰に面を越され誰に劣る振舞の。なき世語(よがたり)に。なををし思ふ心かな。されども時刻の到来。運槻弓の引く方も。渚に寄する粟津野の。草の露霜と消え給ふ。所はここぞお僧達。同所の人なれば順縁に弔はせ給へや。さてこの原の合戦にて。討たれ給ひし義仲の。最期を語りおはしませ。頃は睦月の空なれば。雪はむら消えに残るをただ通ひ路と汀をさして。ちりりちりりと落ち給ふが。薄氷の深田に駈け込み弓手も馬手も(拍子を踏み)。鐙(あぶみ)は沈んで。下り立たん便りもなくて。手綱にすがつて鞭を打てども。引く方も渚の浜なり前後を亡じて控へ給へり。こはいかにあさましや。かかりし所にみづから駆け寄せて見奉れば。重手は負ひ給ひぬ乗替に召させ参らせ。この松原に御供し。はや御自害候へ。巴もともにと申せば。その時義仲の仰せには汝は女なり。見れば敵の大勢。あれは巴か女武者。余すな漏らすなと。敵(かたき)手繁くかかれば。今は引くとも遁るまじ。いで一軍(ひといくさ)嬉しやと。巴少しも騒がずわざと敵を近くなさんと。長刀引きそばめ。少し恐るる気色なれば。敵は得たりと、切つてかかれば長刀柄長くおつとり延べて。四方を払ふ。八方払ひ。一所に当るを木の葉返し。嵐も落つるや花の滝波枕をたたんで戦ひければ。皆一方に斬り立てられて跡も遙かに見えざりけり。跡も遙かに見えざりけり。
*
ふたりが短いベンチを運んでくる。花を活けた三角フラスコが乗せてある。3人窮屈に座るとそこは通勤電車。蒸し暑くて酸素が足りなくて、うとうとする。互いに迷惑かける。【SE、通勤電車】
A うえのォ…うえのォォォ…。
Y 松戸の先は北千住、と。コリャサ…
H 青森、青森ィィィ…。
*
ひとり、立ちあがって語りだす。【JAPAN "Night Porter"】
Y 死は誰にでも平等に訪れそして去る物ですこの東京の町でいま何人の人が犬が猫が死んでいるのか私は知りませんですが死は誰にでも平等に訪れる物です今何人の人が車にはねられたでしょうかですが私は知りません何故なら私はこの和室四・五帖一間のアパートにいるからです収納はあります洗面台もありますトイレは共同ですお風呂はありませんですが家賃は三万円です東京メトロ有楽町線某駅から徒歩3分所在地は新宿です私はここにいますただ毎日を大好きなフリルに埋め尽くされて眠るように死んだように生きるのです東京は急ぎすぎましたですが私はここにいますフリルに埋め尽くされ白と桃色に染められたもう畳等見えなくなったここにいますですが町は急ぎ私は眠りフリルは柔らかに今日も飾られています三日に一度はここを出て町へ向かいます私はここを出るのを嫌いますですが私には使命があるのですそれは誰にも言ってはいけないのですが教えて差し上げます私はコンビニ弁当特別調査員なのです三日に一度近くの某コンビニまで赴きお弁当を買います無事にそれができたなら次は安全にここまで持ち帰り、誰にもばれないように極秘調査をしそれを課長に伝えるのです課長は私よりも死んだように冷たく眠るのです三日に一度その課長を起こさなくてはなりません課長はフリルの下で眠っているので私は三日に一度課長をフリルの中から掘り起こすのです課長は私の調査結果をいつもじっと静かに聞いていますそうして静かに笑い課長は私の調査結果をいつもじっと静かに聞いていますそうして静かに笑い課長は私の調査結果をいつもじっと静かに聞いていますそうして静かに笑い課長は私の調査結果をいつもじっと静かに聞いていますそうして静かに笑い課長は私の調査結果をいつもじっと静かに聞いていますそうして静かに笑いもう一度フリルの中で眠りにつくのです課長がもう一度眠りについたのを見届けたなら私ももう一度静かに眠りますそのときにどれだけの人が死にどれだけが泣いていたとしても私がいるのはここですので知る由もございません私はいつここに来たのか覚えておりませんですが私は初めてここに来たときの雨の中のタクシーその中から見上げた高層ビルの光に目眩がしたのは覚えています東京でふる雨はいつかいた気がする遠くの雨よりもずっと冷たく感じたのは確かです誰かが着飾り泣いて死ぬその中で私はただひたすらフリルの柔らかい布に抱かれて死んだように生きるのです。
ゆっくり倒れていく…。
*
2/→
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