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2015年06月04日00:45

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経済談義第10回:金融機関の国債保有について(2)

経済談義シリーズ第10回です。すっかり間が空いてしまいましたが、日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



前回第9回は、日本の民間金融機関が国債売却に消極である理由を書きました。今回はその続きです。


民間銀行など多くの金融機関が、集めた預金の投資先として多額の国債を保有しているわけですが、
その金額はどのくらいなのか、下の研究レポートで分析しています。

http://www.jsri.or.jp/publish/research/pdf/89/89_07.pdf

それによると、国内銀行の国債保有高は107兆円です。個別にはたとえば、三菱東京UFJ銀行は30兆円以上の国債を保有しています。
ここしばらくは日銀による国債買占めに応じて保有残高は減る傾向ではありますが、依然として莫大な金額にのぼることが分かります。


この、保有金額が莫大であるということ自体が、実は金融機関の国債売却を難しくしているのです。
以前に書いたように、日本国債は金融商品として市場で取引されていますから、需要と供給の関係によって値段が変動します。
つまり、買いが増えれば値段が上がり、売りが増えれば下がります。
民間銀行が保有する大量の国債を売りに出せば、価格の急落を招くだろうことは想像に難くありません。

これを金利でいえば、記事の第6回で見積もったように、3パーセント程度までの利率の上昇は、20パーセント以上の価格下落を意味します。


しかも話はそれにとどまりません。安定保有者とみなされていた銀行が売りに出したという事実が、ほかの投資家に動揺を与えるのです。最悪の場合には多くの投資家によるパニック売りを誘発するおそれさえあります。

そうしてもし万が一にも価格が暴落すれば、銀行自身を含む市場全体に莫大な損失を与えることになります。


このような事情があるので、銀行は、国債の市場価格をなんとしても維持して、下落を防がなければならないのです。
保有する国債を売りに出せないし、また、ほかの誰かが大量の売りを出そうとしたら、それを必死で買い支えることでしょう。
いまや、政府の財政と民間銀行の運命は一蓮托生といってよいのではないでしょうか。



過去記事:
第1回:序論
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1932475007&owner_id=277042
第2回:序論その2
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1933137471&owner_id=277042
第3回:序論その3
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1936636679&owner_id=277042
第4回:国債の為替リスク
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1937321322&owner_id=277042
第5回:国債の価格と利率
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1937661952&owner_id=277042
第6回:国債価格下落リスク
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1938424255&owner_id=277042
第7回:政府資産の換金可能性
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1939210891&owner_id=277042
第8回:親子論
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1940265106&owner_id=277042
第9回:金融機関の国債保有について(1)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1940961051&owner_id=277042
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