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2015年02月24日22:52

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経済談義第7回:政府資産の換金可能性

経済談義シリーズ第7回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



今回は政府資産についてです。日本政府は多額の借金を抱えていますが、一方では多額の資産もあります。


一般に、債務の額が資産を上回ることを債務超過といい、債務超過になると金融機関からは事実上の破産状態とみなされます。
日本政府の資産総額は約650兆円だそうです。それに対して負債は約1000兆円を超えていますから、単純に考えれば債務超過です。
しかし、楽観派の人々はこれを問題と考えてはいません。政府というのは民間企業とは異なり破産することがない主体なので、債務と資産を精算するよう求められることなどありえないというのがその根拠です。その点についてはいずれ別の機会に書きます。


そして、万一、債務の一部を償還してかつ借り換えが一時的にうまくいかないことがあったとしても、政府資産の一部を売却して換金すれば深刻な事態にはならないというのです。さてそれはどうなんでしょうかということを今回は考えたいと思います。
政府資産のうちどれだけが売却可能、換金可能なのでしょうか。これはさまざまな要因によって可能性が変わってくるので一口でいうのは難しそうです。

極端な例として国会議事堂は売却できるかというと、普通は無理と思うでしょう。議事堂がなかったら国会が開けなくなってしまいます。
しかし、土地と建物を売却して、参議院と衆議院は借家人として入居を続けるということも原理的にはもしかしたら可能かもしれません。大企業が本社ビルを売却する際などに、同様の手法が実際に使われていますから。



経済学者の高橋洋一氏によると、換金可能な資産として、政府特殊法人への資金提供が350兆円といわれますが、多くは財政投融資や財投機関債などを指しているものと思われます。省庁の外郭団体など政府関連団体に対して、財政投融資や財投機関債という名目で政府は多額の貸付を行っています。

高橋氏は、「政府特殊法人への資金提供」=「換金可能な資産」と、この両者を同一視してそのまま換金できるように述べていますが、これはそう簡単な話ではなく、考慮すべき点がいくつかあります。


まず第一に、政府関連機関としての特殊法人を、すべて売却してよいものかという論点があります。特殊法人はすべて「役人の天下り先の温存」であると高橋氏は十把ひとからげに切って捨てていて、もちろんその側面を持つ特殊法人もいくつもあるでしょう。しかし、それ以外の存在意義がゼロではない、ちゃんと存在意義がある特殊法人もあるでしょう。

特殊法人の発行した債券の多くを政府が保有するということは、その法人を実質的に政府の管理下においているということです。それを売却するということはつまり、いわゆる「民営化」です。

特殊法人のうちどれが不要で民営化すべきか、あるいどれを引き続き政府が保有すべきか。財政再建というだけでなく政策の基本方針にかかわる問題ですから、大変な論争を巻き起こすことになりそうです。
自由主義的なポリシーを採用して「小さな政府」を目指すのであれば、たしかにかなりの部分を売却して民営化すべきとなるでしょう。郵政民営化を目指した小泉政権と同じ方向です。しかしそれにしても、読まなくなった本をブックオフに売るようなわけにはいかないでしょう。


第二に、ある特殊法人の政府保有資産を売却するとして、それが実際に売れるかどうか、あるいはいくらで売れるかという点があります。
政府が保有する特殊法人の中には、高橋氏のいうように単なる役人の天下り先に過ぎないようなものもあるかもしれません(おそらくあるでしょう)。
で、…そんな全身これムダの塊みたいな団体を民間に売りに出したとして、はたして買い手がつくのでしょうか。つくとしても、いいように買い叩かれて二束三文の値段にしかならないということになりはしないでしょうか。


第三に、政府資産の売却を実際に行うとして、その際にどのような状況になっているかという問題です。
多くの政府資産を実際に売却するようなことが将来もしあるとすればそれは、国債の消化が難しくなるなどして、政府がまとまった現金を調達する必要に迫られるときです。
そのような状況では、市場が国債に対して不安を感じて、国債市場価格が急落していることでしょう。

財政投融資にしても財投機関債にしても、市場に出すとなればこれは一種の金融商品ですから、値段が変動します。とくに、親会社である政府の信用が低下して国債価格が急落するような状況では、関連商品である財政投融資も財投機関債も、連動して急落すると考えるのが自然です。

さらに悪いことに、これらの市場には市場原理が働きますから、需要と供給の関係により価格が変動します。
ただでさえ急落中の債権市場に、数十兆から数百兆円にもおよぶ莫大な量の商品を投入すれば(一度にではなく何回かに分けるとは思いますが)、市場は売り一色に塗りつぶされて相場が暴落するということも十分にありえる話です。それこそ金融恐慌の引き金を引いてしまうことになりかねません。


注:今回の記事は、カゾク・エンマンさんの下の記事への僕のコメントを修正再録したものです。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1935508867&owner_id=140755




過去記事:
第1回:http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1932475007&owner_id=277042
第2回:http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1933137471&owner_id=277042
第3回:http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1936636679&owner_id=277042
第4回:http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1937321322&owner_id=277042
第5回:http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1937661952&owner_id=277042
第6回:http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1938424255&owner_id=277042

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