経済談義第5回：国債の価格と利率

経済談義第5回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



第3回記事へのエンマンさんからのコメントのうち、今回は、日本国債と価格変動リスクについてです。
…といいたいところですが、国際の価格について論ずるときに、その前にひとつどうしても説明しておかなければならないことがあります。国債の利率と価格の関係についてです。

経済ニュースで国債の利率が取り上げられる際に注釈として必ずいわれるのが、国債の市場価格が上がると金利が下がる、価格が下がると金利が上がる、その2つが反対の動きになるという関係です。そんなの当たり前という顔で評論家は話を先に進めてしまうのですが、わかったようなわからないような、どうしてそんなことになるのでしょうか。


国債利率と価格の関係、それを理解するためのポイントは、国債の取引形態です。通常の借金とことなり、国債の証券は金融商品として市場で取引されていますし、新規発売のときもオークション形式で販売されることが多いのです。結果、実際に売買される価格は一定ではなく、市場原理により変動します。


分かりやすくするために、実際とは異なりますが次のような国債を考えてみましょう。
10年物で額面100万円の国債が新たに発売され、それを今日、2015年1月15日にオークションで購入するとします。その証券には、10年後の2025年1月に満期が来たら100万円を受け取れると書いてあります。簡単のために額面上の利子はないものとします。

さて、この国債を額面どおりの100万円で落札したとすると、今100万円支払って10年後に同額の100万円を受け取るわけですから、利回りはゼロということになります。
しかし、利回りゼロでは金融商品としての魅力もゼロですから、実際には、国債を額面どおりに買う人はまずいません。オークション形式で売り出されると、額面よりも安い価格で応札する（買う）人しかいないのが普通です。
そこでたとえば90万円でこの国債を落札したとすると、今90万円支払って10年後に100万円を受け取ることになり、差額は10万円、これがいわば利子ということです。これを期間の10年で割ると、年あたり1万円、利回りは約1パーセントということになります（実際には支払額を基準にした複利計算ですので1パーセントより少し高くなります）。

あるときたまたま国債が不人気でオークションで安く買えた、80万円で買えた、となると、利子は20万円、同様の計算により年利は約2パーセント（強）となります。
安く買えば買うほど、もらえるお金（＝額面）との差額すなわち実質利回りが高くなっておトクになる。国債の市場価格と利率は、実はそういう仕組みで決まっていたのです。


価格が安くなると、基準価格（額面か支払い価格か）の違い、それに単利と複利の違いは大きくなって、半額の50万円で買えたとすると、年利は5パーセントではなく約7パーセントになります。
どこかの国の債務危機のニュースで、危機的状況の目安として年利7パーセントという数字が出てきますが、これは売り出す側の政府から見ると、10年物の国債を売り出しても、額面（≒集めたいと希望する金額）の半額でしか売れない（お金を調達できない）という状況です。たしかになんとなく危機的っぽい感じがしませんか。

また近頃、国債取引でマイナス金利になったことが話題になりましたが、それは、額面100万円の国債を101万円で買う人が現れたということです（その場合年利マイナス0.1パーセント）。明らかに損をするのですが、国債はリスクがゼロと信じている人が多いので（僕は信じていませんが）、ほかの金融商品に不安を感じた人が安心料として1万円の損を受け入れているということです。


実際の市場取引の際には、表面利率（額面上の利子）がありますし、売買の時点での残存期間によって価格と金利の換算は変わってくるので難しくなり、市況により変わります。ある時点での残存期間と利率の関係を表したグラフをイールドカーブ（利回り曲線）といい、業者が売り買いするときはそのイールドカーブを見ながら判断するそうです。



過去記事：
第1回：http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1932475007&owner_id=277042
第2回：http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1933137471&owner_id=277042
第3回：http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1936636679&owner_id=277042
第4回：http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1937321322&owner_id=277042