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2015年06月03日11:06

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翻案 300万通の絵葉書 2/

第7場 記者会見
ペンザンス市郵便局。

局員1 これ全部、ウィリアム・パートリッジ行きかっ!?
局員2 ああ、そうだとさ! とうとう五〇万通を超えたぞ! なんてばかばかしい話なんだ! ウィリアム・パートリッジなんて、どこにも居ないってのに!
局員3 宛先の住所には、確かに十五年前までパートリッジという一家が住んでいた事は判明しました。パートリッジ家の長男は…ウィリアムといいます。
局員4 しかし、十五年前に一家でカナダへ移住した、という事です…転居先は記録に残っておりません。
局長 うむ! …で、そのウィリアム少年は、ガンだったのか…?
局員4 それが…今となっては、はっきりしません。
局長 じゃ、じゃあなんなんだっ、絵葉書の山はっ!? 五〇万通だぞっ!! どこのバカがこんなデマを、流してるんだっ!?
局員4 はあ…それで、局長、この際ですね、記者会見されてはどうでしょう? この住所に、こんなガンの少年は存在していない、と、マスコミに報道してもらうんです!
局長 記者会見…か! よしっ、すぐに手配してくれっ!!
局員3 わかりました!
局長 (記者会見)十五年前には確かにウィリアム・パートリッジ少年は当該住所に住んでいましたが、今はこの住所に誰も住んでいません空き家です! ウィリアム少年も、別の子どもも居ないし、ガン患者も居ないのですっ!! ですので、この住所に絵葉書を送るのは、やめていただきたいっ!!
記者1 累計で何通ぐらい来たんですか? いったい誰が、なんのためにこんなデマを…?
局長 絵葉書は、昨日までで一五〇万通ほど! 誰がデマを流したか、は、わしが一番知りたいっ!!
記者2 Eメイルのせいで落ち込み気味の郵便業務にカツを入れるためのデマという説が、ありますが?
局長 ば、ばかな事を言うなっ!! 郵便業務は怠ることなくしっかりとやっておるっ!! …とにかく、これはデマなんだ! この中継をご覧の皆さん、もうこの住所に絵葉書を送らないでください!

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第8場 絵葉書の火元
カナダ、ハリファックス海軍基地。参謀ラクイエー。

ラクイエー お待たせしたMr.ゴル…いや、Mr.デューク・トウゴウ…。おっと、君には握手という習慣が無かったんだ…失礼失礼。
G …。
ラクイエー まずまず、掛けてくれたまえ。Mr.トウゴウ、君の高名のほどはかねがね聞いているよ…カナダ軍も、君のような狙撃兵が欲しいものだ! で、今日はどのような用件で?
G 俺の調査では、AFTAXに流れた「英国のガンの少年、ウィリアム・パートリッジに絵葉書を送ろう」というメッセージは…あんたが「火元」のようだ。どこでその情報を得た?
ラクイエー あれは与太話だった。あの話のために君に、Mr.デューク・トウゴウに迷惑をかけたのならお詫びする! すまぬ事をした、はは…。
G …。
ラクイエー こ、この通りだ。すまぬ…。
G あんたは、どこでこのメッセージに接した…?
ラクイエー 私は、部下から聞いたのだ。今、その部下を呼ぶから、直接聞いてくれたまえ。ロジャー士官を呼べ!
ロジャー お呼びでしょうか参謀?
ラクイエー うむ、ロジャー…。この方が、君に質問がおありになる。正直に答えろ! これは上官命令だ! 黙秘は認めぬ!
ロジャー イエッサーッ!!
G ラクイエー参謀に「ガンの少年が、絵葉書を集めている」という話を伝えたのは…?
ロジャー 自分でありますッ。しかし、その情報は、誤りでありましたっ!!
G …その噂をどこで聞いた…?
ロジャー は、自分はPKOの一環として、先日までアフリカ、アンゴラのルアンダに滞在しておりました。そのMONUAの活動中、ルアンダ空港の管制室に張り紙がしてありまして、「死期の近いガンの少年に絵葉書を出そう」と、書かれてありました…。自分は、年甲斐もなく感情移入してしまい、この少年の宛名や住所を控えて、帰還いたしました。そして、ラクイエー参謀にこの話をAFTAXを使って世界に広めたいのですがと、相談申し上げました――(F.O.)
G …と、なると、ルアンダ空港に「ノイズ」の「種」を植えたのは誰か…?

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第9場 貼り出されたデマ
アンゴラ、ルアンダ空港。

管制官1 オルレア大学のトウゴウ教授ですね? お待ちしていました。どうぞ!
G どうも…。さっそくですが、問い合わせの件を調べてもらえましたか?
管制官1 はい。問い合わせの件とは、あれの事ですね…? これがデタラメだったなんて、おどろきましたよ! 郵便局の局長の記者会見をテレビで見ましてね! 初めてデマだと知ったんですよ! 絵葉書は最終的に一五〇万通も来たとかっ!?…
G いえ、一五〇万通ではなく、三〇〇万通ですよ…。
管制官1 さ、三〇〇万通っ!? そいつはすごいやっ!!
G 私は、このような「流言」をオルレア大学で研究しているのですが…この噂がどこからどのようにして、ここに来たのかを知りたいのです…。
管制官1 ああ、なるほど! おい、ジョン。これを貼ったのは、お前だろ?
管制官2 ええ、そうですよ…。
G これに…見覚えはありませんか?
管制官2 え? あ、これ、俺が出した絵葉書ですよ! これを出したあと貼り紙を出したんですよ!
G あなたは…この話をどこで知りました…?
管制官2 知り合いの管制官から聞いたんですよ…。
G どこの管制官です?
管制官2 ザイールの管制官ですよ。といっても密林の中の飛行場で、主に、ADFLの連中が、こっそり使ってるような所ですけどね。…けど、まさかこの話がデマだったとは…おどろきましたよ…(F.O.)
G …やはり、コンゴでの接触の際に、情報が漏れ出た、ようだな…。「漏れた」のか「漏らした」のか…。

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第10場 戻ってきた「男」
ADFL根拠地。

ゲリラ1 ゴルゴ13…おどろいたよ。話があるから、ここへ来るといわれた時には…。あなたは依頼人に、二度は会わぬそうではないか?
ゲリラ2 この通り、依頼の時にあなたと会った連中を集めておいたが…。
G …。あの時の仕事に関しては問題はない…。俺自身が「ある事」を納得するためにここへ来たのだ。チャッ
ゲリラ3 お、遅くなってすまん…。
ゲリラ1 約束の時間は守れ! で…「ある事」を、納得するためとは…?
G それを…確認するために…あんたたちに聞きたい事が出来た…。
ゲリラ3 ふふん、勝手な事を…。
ゲリラ1 !! お、お前まさかっ!?…何か余計な事をしたんじゃああるまいなっ!?
ゲリラ3 な、何を言うんだっ!? 俺は何もしちゃいねえぜっ!!
G …。
ゲリラ3 俺が何をしたと言うんだっ!?
G …俺の絵葉書によるコンタクトの方法が…関係のない外部に、漏れたらしい。
ゲリラ3 そ、それが、俺の仕業だとでも言うのかっ!? えっ!?
G …。
ゲリラ1 それにしても…どうしてだ、どうしてあんたは、我々を疑うのだ?
G 絵葉書を書いたのは、誰だ?
ゲリラ1 お、俺だ!
G それを…どうやって、発信した…?
ゲリラ1 そこの飛行場の管制塔に詰めている奴が知り合いなので、そいつに話した。「次の飛行機で託送してくれ」とな…。昔なじみで、信用できる男だ!
G ここに小型送信機がある。これを持って俺がこれから言う通りに、質問してみてくれ。
ゲリラ1 (通信)俺が、あんたにイギリス宛の絵葉書の託送を頼んだ事があったろう?…
管制官3 ああ、あれはたしか…モブツ大統領がモロッコで死ぬちょっと前だったなァ…よく覚えているよ。でも、それが、どうした?
ゲリラ1 いやね、ひょっとして…あんたもあのウィリアム少年に、絵葉書を出したかと思ってさ。
管制官3 いや…。ふふふ、そうか!
ゲリラ1 何がおかしい?
管制官3 あれも、ウィリアム・パートリッジ君宛だったのか、俺は、あの絵葉書をしかと預かって、飛行機に乗せたが、文面までは見ていないのでね。ふふ、それにしてもゆかいだね! ADFLのゲリラが、見た事もないガンの少年に絵葉書を出してやるとはね!
ゲリラ1 えっ!? じゃああんたは、あの時絵葉書の文面は読まなかったのか?
管制官3 読んでいないよ。俺は人様の手紙をたとえ葉書でも盗み読みしたりはしないよ! でも、あの少し後で、別の人から、そのパートリッジ君の事を聞いたんだ。で、俺はこの話を広めておいてやったよ!
G !
管制官3 アンゴラのルアンダ空港の管制官に教えてやったのさ。管制室に貼り出しておくって言ってたよ。あっちにはたくさん人がいるからな! きっと、何十人かくらいは、絵葉書を送ってやったろうさ!
ゲリラ1 俺の絵葉書を見て知ったんでないなら、いったい誰がこの絵葉書の事を、あんたに吹き込んだんだっ!?
管制官3 ああ、それはね…。

×

ゲリラ5 す、すぐに、あいつに連絡して、逃がそうっ!!
ゲリラ4 むだだ。奴に…ゴルゴ13にマークされたら…逃げ切る事は、不可能だ…。
ゲリラ2 まして、彼の連絡網を破壊したとなると、彼に対して挑戦状を突きつけたも同じだからな…。
ゲリラ1 それに、あいつに知らせた事が、ゴルゴ13に知られれば…今度は我々が…。
ゲリラ3 しかし…いったい、なんであの人はこんな事を、しでかしたんだろう…?

また、トロピカルな伴奏…。

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第12場 ルールは崩さず

ヘセロ …もう来る頃だと思っていたよゴルゴ13…
G …俺の、連絡システムに、意図的に膨大なノイズを呼び込み破綻させたのは、あんただな…。
ヘセロ その通りだ…。
G なぜ、こんな事をした?
ヘセロ 私は、地位のおかげで、この国の知られざる極秘資料に接する事ができた。そして、裏面史の要所要所には、いつも君の影があった…八五年に地方州の大統領だったカヘンガと、ウガニ族の呪術師が暗殺されたが、君の仕事だったのだね? 目撃証言も、ある! …九七年にはADFLの大幹部、キサセ司令官が暗殺されたが、あれも君の仕業だろう? アーマライトによる狙撃だし、現場近くで逃走する東洋人が、目撃されている。そして…「モブツの暗殺」だ! もっとも、狙撃の手引きをしたのは、この私だったがね…。君が、この国でテロを行うたびに、この国の進路はひずんだ。進むべき方向を幾度もねじ曲げられてしまったのだ…。ここまで考えて、私はある推論に至った…。この国では、それより前にも、人為的に国の進路を曲げられた「歴史」が、ある…。コンゴ動乱の最中には、ルナムバ将軍が暗殺されている…。さらにその四年前には悲惨な事件があった! 第二代国連事務総長だったハマーショルドはコンゴ動乱を静めるため、当地に向かう途中、飛行機事故で、死亡したが…あれも…君のテロじゃあなかったのかね?
G その説明と、今回のあんたの行動は、どうつながる…?
ヘセロ 五度だ、この国の運命は五度も、君によって攪乱された! ハマーショルド国連事務総長とルナムバ将軍、八五年、カヘンガ州大統領、九七年にはキサセ司令官、さらに今回のモブツ大統領、だっ!!…もううんざりだっ!!
G …だから、絵葉書による接触ルートを、破綻させた、というのか…?
ヘセロ そうだ、この国で発生する未来のテロを減らしたかったのだ。君と接触する方法は、この国では今のところ絵葉書によるものしか知られていない。だから、絵葉書のルートさえ潰せば…と考えたのだ…。
G …。言う事は、それだけか…?
ヘセロ 君はさっき、紛れ込んだ膨大な絵葉書を「ノイズ」と呼んだが…君の方こそ「ノイズ」ではないかね?
G 俺が、この国に来ない事で、この国の平和が維持されていると考えるなら、原因と結果を取り違えている…。世界に俺がいるからテロが起こるのでは、ない。テロが起こるから、俺が、存在するのだ…。
ヘセロ どちらが正しいかは後世の歴史でわかるだろう…。さて、と…。もう大統領の所へ、行く事にしよう。あ、銃は不要だよ。…このグラスには、死ぬのに十分な、青酸カリが溶け込んでいる…。君の手は借りぬよ…。

ドウッ ビシッ

G 俺に敵対する者…裏切る者は俺の手でカタをつける! それが俺のルールだ…。

×

エピローグ

エンディング曲『ゴルゴ13愛のテーマ』…。

―― ミスター・ゴルゴ13! あなたに依頼する理由もそこにある! 状況から判断して…これには、1発必中の超遠距離射撃が、必要なのだ!
―― 待ってくださいゴルゴ13…よくわかりました…たしかに非常識なお願いでした…この条件は撤回させていただきます…だから、どうかこの仕事を引き受けてください!!
―― もちろん、あなたの仕事のじゃまをするような動きは、ぜったいしないと、約束します!! いや、もしそのようなことのあったときは、あなたに射殺されてもかまいません!!
―― これは、もう近代科学兵器の通用する闘いではない! 人間の限界に挑戦する闘いなのだ! そして…この勝負に国運を賭けられる相手は、きみをおいては考えられないのだゴルゴ13!!
―― 領空侵犯だが、計器の故障とかなんとか説明して外交折衝でごまかす…報酬は、君の希望通りを支払う! たのむっ、ゴルゴ13!! なんとか引き受けてもらいたい!!
―― 君が動き易いよう、段取りは我々M―6が組んでおく…引き受けてくれ、ゴルゴ13!
―― ホリーズを向こうに回しての仕事は大変だろうが、なんとか実行してほしい。いや、君なら必ずやこの仕事を遂行してくれると信じている!
―― 祖国の大地を汚れた血で濡らすことは、がまんならん! ただ…狙撃のタイミングは、この男の幸せな時間を選んで…苦しまずに一撃で死なせてやってほしい…。
―― このお願いはポールの送りつけてきた2万ドルで、お願いすることに意味があるのです!! お、お願いっミスター東郷!! 引き受けるといって!!
―― て、天地神明に誓って嘘などっ!!…では、引き受けてくれるのか、ゴル…いやMr.デューク・トウゴウッ!?
―― おお、Mr.トウゴウ! よく来てくださった! 我がバチカンに、危険きわまりない男が、牙を剥こうとしているのですっ!!
―― おおっ!! あ、ありがとうっ!! ありがとうっ!! Mr.デューク・トウゴウッ!!







上演記録

日本ゴルギアン協会/二〇〇八年八月三十一日/深川そら庵/出演・水木ゆかり、松本萌、たかはしみほ、金城愛、東海明子、渡ひろこ、松為伸夫、酒井康志、紫竹あかね、神蔵治、高野竜、東海亮樹







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