mixiユーザー(id:63544184)

2015年06月03日09:11

415 view

015 クリーナおばさん カミナリおばさん 全

クリーナおばさん カミナリおばさん





時 一九七〇年代

場 ゴミ島

人 ツナギの子どもたち





夏。屋外。蝉しぐれ――。【M1】

ナレーター これは、今からすこし昔のおはなし。私たちのお母さんが子どもだったころのおはなしです。
隣町の子 こんちは。あのぅ、ちょっとお話を聞きにきたんですけど。
町の子1 やぁ、こんちは。なぁに?
町の子2 あなた、だぁれ?
隣町の子 あ、僕は、あの煙突のむこうの隣町から来ました。
町の子3 煙突? ああ、ゴミ焼き場の煙突だね。
隣町の子 ええ。
町の子4 そっか。で、聞きたいことって、なに?
隣町の子 えーと、夏休みの自由研究なんですけど、この町では燃えないゴミとかって、いくつに分けてるんですか?
町の子たち え? えーと、いくつだったっけ。いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく、しーち、はーち、くーう、じゅーう、じゅーいち、じゅーに、じゅーさん、じゅーし、じゅーご、じゅー…
隣町の子 ちょっと待ってよ。そんなに多いの?!
町の子たち こんなもんだよ。
隣町の子 なんで?
町の子1 さあ、なんでって…なんでだろう。いいんだよ、なれてるから。
隣町の子 だって、分けるの大変じゃない。ていうか、なんで知らないの?
町の子2 ええ? なんでだかは、知らない。
町の子3 そういえば、なんでだろうね…?
町の子4 (ナレーターに)ねえ、なんでなの?
ナレーター それはね、むかぁし昔のちょっと昔、こんなお話が、あ・り・ま・し・た。――

ナンバー「スイッチ・ポン」【M2】

ゴミたち ♪町はずれに 海があって
 海には 島が浮いていて
 島には 夢がいっぱいあって
 夢には 終わりがないんだって

洗濯機  ぼくは洗濯機 よごれたツナギは
 ドンとおまかせ
 スイッチ・ポン ゆび一本で
 すぐに解決

冷蔵庫  わたしは冷蔵庫 買い物どっさり
 まかせておくれ
 ブンブンうなる ふとっぱら
 なんなく解決

ゴミたち  町はずれに 海
 海には 島
 島には 夢
 夢には 終わり

テレビ  おいらはポータブル・テレビ 人気者
 スイッチ・ポン ゆび一本で
 世界にひらく窓

アイロン  あたいはアイロン ちんまり座ってる
 ジンジンこげる 熱い胸
 とおくを見ている

ゴミたち  町はずれに 海
 海には 島
 島には 夢
 夢には 終わり
 夢には 終わり

アイロン あたいたち、もうずいぶん長いこと、ここにいるよね。
テレビ いつまでいればいいんだろう?
冷蔵庫 ずーっとさ。
みんな ずーっと?
洗濯機 いつまでも。
みんな いつまでも?
洗濯機 そう。色んなやつがここに来るけど、出ていったやつは見たことがない。
アイロン ふーん…。でもさ、もう、満員じゃない?
テレビ あ、あそこ、また来たよ!
運転手たち (花道で)俺たちはトラックの運転手だ。運んでるのはゴミだ。毎日、町から長ーい橋を渡って、ゴミ島まで捨てにくるんだ。

ナンバー「俺たちのマッコウ」【M3】

運転手たち ♪大都会の海が ザザザと割れて
 顔をだすのさ
 マッコウ 2トン積み
 マッコウ マッコウ 俺たちのマッコウ

 青いボディに みがきをかけよう
 たよりにしてるぜ
 マッコウ 2トン積み
 マッコウ マッコウ 俺たちのマッコウ

 荷台にのぼれば 世界がみえる
 連れてってくれよ
 マッコウ 2トン積み
 マッコウ マッコウ 俺たちのマッコウ

運転手たち ブルルルル…ガタン、ゴトン…キーッ…ブロロロロ。
声 (荷台で)うーっ、苦しいじゃないかぁ!
テレビ プレスちゃん、今の、聞いた?
アイロン うん、なんかいってる。誰が乗ってるんだろう。
声 あたしだよ。
みんな あたしって?
声 どこのうちにもあるやつ。
みんな どこのうちにもあるやつ? なんだろ。お箸とお茶碗? タンス? ちゃぶ台? ものほし竿?
声 ちがう。ちょっとホースに穴があいて、ガムテープでとめてあるのさ。
みんな ホース? ああ、お風呂のシャワーだ。
声 ちがうちがう。電気ではたらくのさ。
みんな 電気で? ああ、電球。蛍光灯。
声 ちがうちがうちがう。ちょっとモーターがすりへって、ごほごほ音がするけどね。
みんな モーター…??? モーター、電気、ホース…うーん…(間)…あ、分かった。掃除機だ!
声 なんだい、掃除機だって?
みんな ちがった?
声 …大当たり!

ナンバー「掃除の極意」【M4】

クリーナ ♪あたしはミス・クリーナ!
 天下無敵のお掃除おばさん
 ごはんなんかは軽ぅくちょっぴり
 100ヴォルトで沢山
 「さあーみんな、働くよー!」
 はじめは畳のものをどけて (どけて?)
 全部どけて (どけて?)
 そうじゃない全部よ ぜ・ん・ぶ (ハイハイ)
 そしたらほっかむりして (ハイハイ)
 今度は窓を全部あけて (ぜんぶ?)
 そうじゃない全部よ は・や・く (ハイハイハイ)
 ハタキをかけて (ハタキをかけて?)
 ハタキをかけて (ハタキをかけて?)
 かけた? (かけた!)
 かけた? (かけた!)
 かけた? (かけた!)
 かけた? (かけた!)
 かけた? (かけた!)
 そしたらあたしの出番さね
 しなやかな首 がっちりした腰
 ハスキーヴォイスで
 ガガガガー ガゴガガー
 畳をすべる 床すべる
 そうして長いこと
 そうして10年も 生きてきた
 生きてきたのさ

クリーナ やれやれ、そうして、さすがにちょいと疲れたねえ。
みんな なんだ、オバハンかぁ!
クリーナ オバハンじゃない、お姉さまとお呼び。
みんな やだぁ。
クリーナ じゃ、クリーナおばさんでいいや。で、あんたたちは?
アイロン あたいアイロンのプレスちゃん。
テレビ おいらはミニ・テレビのポータ。
冷蔵庫 わたしは冷蔵庫のドアーズ。
洗濯機 ぼかぁ洗濯機のザブリエ〜ル。
その他 その他、大勢です。
運転手たち 自己紹介はすんだかい。それじゃあ俺たちは行っちまうぜ。元気で暮らせよおっ母さん、バイバイね、バイバイね。(去る)
洗濯機 ――行っちゃった。
冷蔵庫 また静かになるなあ。
クリーナ なんだい、あの連中。
テレビ 気はいい人たちなんです。
アイロン ちょっとアホだけどね。
運転手たち 誰がアホだ。(すぐ引っ込む)
みんな まだいた!
クリーナ で、あんたらはなんなんだい?
アイロン だから、あたいはアイロンのプレス。
テレビ テレビのポータ。
冷蔵庫 ドアーズ。
洗濯機 ザブリエ〜ル。
その他 その他もろもろ。
クリーナ そうじゃなくて、ここでなにしてんのさ。
みんな なにって…え?
クリーナ な・に・を、やってんの?
洗濯機 いやぁ、別に。
冷蔵庫 あえていえば、お昼寝、かな。
クリーナ お昼寝って、もう夕方だよ。
テレビ あ、夕方には夕方で、夕方寝をします。そのほか、朝は朝寝。夜は夜寝。
アイロン 春寝、夏寝、秋寝に冬寝。ね。
みんな うん。だって、やることねーんだもん。
クリーナ あきれた。なんなんだい、あんたら。
アイロン だからアイロン。
テレビ テレビ。
冷蔵庫 冷蔵庫。
洗濯機 ザブリエ〜ル。
クリーナ で、やってることは?
みんな 昼寝。だって、やることねーんだもん。
クリーナ あっきれた、どーしょーもないね。気合い入れてやろう。おい、ザブ。
洗濯機 ザブじゃないです、ザブリエ〜…
クリーナ ザブで充分だ。あんた洗濯機だろ、洗濯しなさい。
洗濯機 えぇ? それじゃ、つもりだけ…グイングイングイン。(やる気なし)
クリーナ そしたらアイロン、プレスして。早く。
アイロン はぁ、じゃ、一応。カチリ、ジーン、シュー。
クリーナ そら、これがあんたらの仕事だろ。昼寝しに生まれてきたんじゃないだろ。
テレビ そうだけどさぁ、洗濯物がないよ?
クリーナ え?
みんな そうそう。
テレビ 電気もないし。
クリーナ え?
みんな そうそう。
冷蔵庫 わたしだって働きたいさ。初めは、バタンバタンバタン、スリー・ドアの最新式だったんだ。でも次の年にもっと最新式の冷蔵庫が出てきて、たちまちお払い箱。どうしようもないよね。
クリーナ 壊れてないのかい?
冷蔵庫 とんでもない! 一年しか使われてないんですよ。あーあ、誰か、ハートに火をつけてよ。
クリーナ で、ほかのみんなも?
洗濯機 おんなじ境遇。
テレビ 似たり寄ったり。

ナンバー「そんな夢」【M5】

アイロン ♪遠くへゆきたい 駆けてゆきたい
 草はらの彼方へ まっすぐつづく道
 野ウサギになって 駆けてゆきたい
 そんな夢ばかり みてる

アイロン あたいたち、もう、いらないんだって。
テレビ 誰もおいらのことなんか、おぼえてないよ。
クリーナ (懸命に)そんなの変だ。あたしだって、まだ働けるよ!
冷蔵庫 ま、あんたもそのうち分かるよ。ここは気楽な夢の島さ。
洗濯機 やあ、星が出てきた。やれやれ、きょうも一日が終わった。(牧師のように)みんな、星座っていうのは、いつもおんなじ形をしてる。決められた場所から動かない。そうして、空ぜんたいは大きくぐるりと回ってる。ぼくらもまた、決められた場所にこうしてじっとしてるけど、もしかしたら自分で気がつかないだけで、大きな空みたいなものの上で、ぐるりと回ってるのかもしれない。運命の大皿の上でさ。だから心配することはない、こうしてひっそり生きていこうよ。空からみたら、ぼくらはチラチラ光ってる、そう、ぼくらは地上の星座なんだ。

みんな ♪hmn――

 遠くへゆきたい 遠くへゆきたい
 ほんのひとあし 歩きはじめたい
 羽虫になって 飛びたってみたい
 そんな夢ばかり みてる

 遠くへゆきたい ララ ララ ラララ
 いかだに乗って こぎだしてみたい
 クラゲになって 流れてゆきたい
 そんな夢 そんな夢

クリーナ (つぶやく)ちがう…夢なんかみてる場合じゃない。なにができるのか、なにがしたいのか、どうやったらやれるのか…大事なのはそのことなのに。
ナレーター ――と、そのとき突然。
みんな ピカッ、ピカッ、ガラガラガラガラ、ドッシャーン!【M6】
洗濯機 なな、なんだ?!
冷蔵庫 世界の終わりか?
テレビ 爆撃か?
アイロン そうじゃない、イナヅマだよ、カミナリだよ。(急にシビレて)あああ…!
クリーナ いいい…
テレビ ううう…
冷蔵庫 おおお…
洗濯機 わわわ…体に…電気が…
みんな みなぎってきたぁぁぁ…!

ダンスナンバー【M6つづき】
電化製品それぞれによるパフォーマンスがくり広げられる。ひとりひとり順ぐりに見せるので、けっこう長い。

運転手1 (遠くで)ありゃりゃ、なんだありゃ。夜だってのに、ゴミ島が光ってるぞ。
運転手2 火事かな。
運転手1 分からん。でも、えらく騒がしいよね。
運転手2 ネズミの盆踊り大会かな。ネズミ多いからなあ、あそこ。
運転手1 なんかヤバそう。帰ろうか。
運転手2 ウン、帰ろう。
ふたり バッハハーイ。(去る)

まだ続くお祭り。やがて疲れて終わる。

洗濯機 いやはや、ヘトヘトだぁ。
冷蔵庫 いい汗、流したよ、冷蔵庫なのに。
テレビ さたでー・ないと・ふぃーばーってやつですか。
アイロン ああ、クラクラする。(バッタリ寝ころぶ)
クリーナ なんだい、みんなけっこう元気じゃないか。
アイロン でもさぁ…(間)…なんか、もの足りなくない?
みんな うん。
テレビ ただ映ってみても、しょうがないっていうか。
みんな うん。
冷蔵庫 おなかに入れるものがないのに、ただ冷やしてみても、ねえ。
みんな うんうん。
洗濯機 ガタガタ、ビービーいってるだけじゃねえ。
みんな そうそう。
洗濯機 なにが足りないんだろう。
みんな なんだろう…なにが足りないんだろう。お客さんに聞いてみようか。ねえ、僕たち、なにが足りないと思いますか?(見物に訊く)
クリーナ なにが足りないかって? 仕事だよ。
みんな ――あ。
クリーナ お祭りだけじゃ、ダメなんだ。お祭りは、すぐ終わるもんだからね。
みんな そうか…。
ナレーター ――と、そのとき突然、テレビが。
テレビ (画面ついて)ビビビ、ガガ、ザザザ、ヅーッ。臨時ニュースをお伝えいたします。東京湾のゴミ島で、捨てられた電気製品が勝手に動きだしました。危なくて近寄れなくて大変です。では、国会から中継いたします。

セミたち、議員になって集まってくる。

議長 うおっほん、私が議長のクスノキです。この事態をどうしたらいいと思いますか。では、まず与党の、みんみん党から。
みんみん党 たぶんあれは、ただの対岸の火事ですね。ほっとけば消えるでしょう。
野次 なにー、無責任だー!
議長 次に、つくつく党。
つくつく党 わたくしどもも与党と同じで、ほっとけば消えると思います。
野次 なにー、こっちはもっと無責任だー!
議長 えー、中身のある意見をいってください。では、にいにい党。
にいにい党 えーと、いらないからって、ただ捨てたから、こういうことになったんだと思います。ものは大事にするなら大事にする、しないんなら、きちんと分解して捨てるべきですね。ただちにゴミ島にスクラップ工場を作って、これからはちゃんとぶっ壊してから捨てるようにしましょう。
しゃあしゃあ党 ちょっと待った。
議長 手をあげて発言するように。では、はい、しゃあしゃあ党。
しゃあしゃあ党 あのですねえ、皆さん、ありゃあゴミなんですよ。なんでゴミをまたわざわざ、お金かけて工場まで建てて分解しなきゃならんのか、私にゃ分かりません。
にいにい党 にぃにぃにぃ! じゃ、どうしたらいいんだよ。
しゃあしゃあ党 名案があります。そのまんま海にドブドブ沈めちゃえばいいんです。
みんな おおー!
しゃあしゃあ党 これならタダですよ。にやり。
みんな おおおー!(拍手)
ひぐらし党 異議あり! 日本ひぐらし党です。あんまりもったいないですよ。なんだって、使えるうちはきっちり使うのが一番いいんじゃないんですか?
議長 あんたには聞いてません。これにて閉会。みーんみんみんみんみん…。

セミたち、散らばって消えた。

テレビ ガガガ、ザザザ、ヅヅヅ…プツン。(消える)
アイロン ――やっぱりあたい、ゴミなんだ…。
クリーナ (必死で)ゴミじゃ、ないったら…!
ナレーター ――と、そのとき突然、またカミナリが。
みんな ピカッ、ピカッ、ピカッ、ガラガラガラガラガラ、ドッシャーン!【M7】
洗濯機 忙しいなあ、今度はなんだ?!
冷蔵庫 どうかしてるね今日は。

カミナリおばさんと仲間のカミナリたち、ハデに登場。

カミナリ ハァーイ、みなさん! サワディ、ナマステ、アユボーワン、あたしはカミナリ国のカミナリおばさんよ。よろしくね、チュッ(投げキス)。
みんな うへぇー。
テレビ また変なのが出たぞ。
アイロン オバハン、誰さ。
カミナリ オバハンじゃない、お姉さまとお呼び。
みんな やだぁ。
カミナリ じゃ、カミナリおばさんでいいや。で、なるほど、あんたたちが――
アイロン アイロン、
テレビ テレビ、
冷蔵庫 冷蔵庫、
洗濯機 ザブリエ〜…
カミナリ (さえぎって)いいっていいって、分かってるよ。フンフンどれどれ、フーム、なんだい、まだみんな使えるじゃないか。
クリーナ なにジロジロ見てんだ、いやらしいねえ。冷やかしならお断りだよ、とっととお帰り。
カミナリ なんだいあんた。
クリーナ あんたこそなんだい。
カミナリ あたしが聞いてんだよ。
クリーナ あたしだって聞いてるさ。
カミナリ 生意気だね。
クリーナ あんたこそ生意気だよ。
カミナリ …ムーッ。
クリーナ …ヌーッ。(にらみ合い)
洗濯機 なんだかこのふたり、似てるなあ…。
みんな にらめっこしーましょ、にらめっこしーましょ、にーらめっこ、にーらめっこ、にーらにーらにーらにー…
カミナリ (笑いだす)ブハハハハ。
クリーナ なにがおかしい。
カミナリ 顔がおかしい。
クリーナ にゃにおう?!
カミナリ まぁ、落ちつきなって。こんなとこで腹立ててる場合なのかい、あんたは?
クリーナ だってさ、どうすりゃいいのさ。掃除しようにも家もなけりゃゴミもないんだよ。
カミナリ それどころか、今じゃあんたがゴミだもんね。
クリーナ あたしはゴミじゃない! 仕事さえありゃ、いっくらでも働いてみせる。
カミナリ あっそう。じゃ、仕事をあげよう。
クリーナ え?
カミナリ カミナリ国で働きな。あんたらもだよ。
みんな え?
カミナリ カミナリ国は電気の国さ。電気はいっくらでもあるし、仕事だっていっくらでもある。でも機械が足りない。あたしら、機械が必要なんだ。どうよ、来るかい?
みんな えー…どうする…どうしよう…(ザワザワザワ…)
カミナリ なんだい、しょぼくれやがって。のらくら夢ばっかりみてるから、そんなフヌケたツラになるんだ。ま、いいや好きにしな、この威勢のいい掃除機だけ、もらっていくからさ。(いきなりクリーナにまたがる)ハイヨー、ピシッ。
クリーナ あいたっ、馬じゃないよ!
カミナリ 魔女はホウキにまたがるんだよ。
クリーナ ホウキでもないったら。下りろ。(振りおとす)
カミナリ いてて、なにすんだ、この。
クリーナ 行ってやる…。【M8、フィナーレ】
カミナリ え?
クリーナ 行ってやるよ。ただし、行ったからにはあんたのうち、もういいってほどピッカピカにしてやるから、覚悟しな。(ツナギの上を脱ぐ。と、カラフルな普段着が現れた)さ、案内してもらいますよ。
カミナリ ようし、よくいった。じゃ、行こうか。
アイロン ――連れてって。
カミナリ あん? お前さんなんか、いらないっていってんだろ。
アイロン そしたらあたい、ひとりでも行く。なにができるのか、なにがしたいのか、考えたいんだ。あたいアイロンだけど、ぼんやり座ってるアイロンだった。世界にはきっと、もっと色んなアイロンがあるんだ。あたいは誰なんだろう。あたいはこれから、誰になるんだろう。(ツナギ脱ぐ、同じく明るいTシャツ。以下同じ)
テレビ うん。おいらはこれから誰になるんだろう。これから先、どんな世界を見て、どんなことばを話すんだろう。行くよ。(脱ぐ)
冷蔵庫 そうだねえ。あーあ、すっかり腰が重くなっちゃったけど、まぁつまり…ハートに火がつきましたよ。(脱ぐ)
洗濯機 ぼくは、ザブリエル。面白いのは名前だけ。やだなぁそれ。
みんな なにいってんだ、あんた。
洗濯機 すんません…。(脱ぐ)
カミナリ おやおや、はなやかなこと。おそろいで、どこまで行くつもりなんだか。いっとくけど、あたしを頼りにしないでよ?
クリーナ もちろんだよ。どこへ行くって、決まってるじゃないか。ねえ、みんな。
みんな うん。色とりどりの、未来へ。おーい、ゴミ島ぁ、あ・ば・よーっ!



×××


*本番におけるおもな異同

一.【M6】および【M7】に歌詞が加わった。


【M6】 捨てられちまった おいらだけど
しびれてみせるぜ 今夜だけ
(しびれしびれ しびれしびれ)

忘れられてる あたいだけど
しびれてみせるさ 夜明けまで
(しびれしびれ しびれしびれ)


【M7】 むこうの小島にひかるもんなぁ何じゃ
星かほたるかエレキテル

恋にやぶれて鳴くセミよりも
鳴かぬほたるが身をこがす

なお、後に付けられた曲名一覧は次の通り。
【M1】序曲 びよよん節
【M2】スイッチ・ポン
【M3】俺たちのマッコウ
【M4】掃除の極意
【M5】そんな夢
【M6】電動演舞
【M7】らいとにんぐ音頭
【M8】終曲 のたりの海へ

二.プロローグが差し替えになった。


プロローグ台本

18:01、役場の屋上の塔に現れて、尾関、語りだす。

尾関 「祝詞 しばてん」

夏の近づく田園の夜明けだった
おれはふと 目をあけた 草の茎の上で
イネ科らしいそのまっすぐな鋭い葉にも
五月のぬるい空気と
空気の底の糸のような
冷たい気流とが絡みついて
見えなかった妖精どもの囁きが
ようようおれを目覚めさせたのだ

そうだ おれは
いっぴきのアマガエルだった
少し黄色みがかった葉の上で
同じく黄みがかった萌葱の肌をして
いつから眠っていたのだろう

空は広く
気の早い積乱雲が
もりもり灰色に立ちあがろうとしていた
おれのぼんやりとした脳の奥
いや なんだかくすぐったいような
胸のひだの裏側
やっぱりそこにもひとりの妖精がいて
おれのかわりに雲の入道に呼びかけるんだ

おおい!
世界よ!
おれを
子どもたち (どこかで)こいつを!
尾関 連れてってくれよお!
寝ぼけまなこのこいつを
子どもたち (どこかで)おれを!
尾関 おまえのところへ引っぱりあげておくれよう!
ゆうと クリーナおばさーん!
子どもたち カミナリおばさーん!!

音楽にのって、ロボットたち登場。以下、本編へ。










上演記録

みやしろ演劇パーティ・ジュニア/二〇〇四年八月八日/宮代町進修館中庭/演出・高野竜/音楽・酒井康志/出演・石川さやか、石川ゆうと、石塚ありさ、今井あや、亀山あやの、斉藤ひなこ、宍倉しのぶ、遠山ひとみ、船川ゆうな、吉田ももか、石川稀月、尾関佑乃、酒井康志、高野竜/協力・鈴木あかね







top→ http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1940803010&owner_id=63544184
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する