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2015年06月03日08:20

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005 ざりがに盛衰記 全

ざりがに盛衰記





時 夏と、その次の夏

場 学校と川原

人 ぼく
  みそちゃん
  秀ちゃん
  のいばら
  よしきり
  どんてん坊(ナマズの妖異)
  先生
  用務員さん
  校長先生
  ざりがにたち


第一場   八歳

曖昧な野原…。
ぼく、寝巻きで歩いてきた。

ぼく あれ、ここはどこだろう。おかしいな。
よしきり ひゅひゅひゅひゅひゅ!
ぼく わっ。だれ?
よしきり おまえこそ、だれだい。
ぼく ぼくはぼくだよ。きみはきみ?
よしきり かかか。すすきのあいだのじめじめが、ひゅひゅひゅとないたらそれがわたし。わたしとなかよくしなけりゃあ、この川原にははいれない。
ぼく 川原? それじゃここは川なのかい?
よしきり かかか。そんなことよりじぶんのしんぱいをするんだね。よくもまあ、まぎれこんできたものだよ、ふくもきないでさ。
ぼく あ、ほんとだ。パジャマで、はだしだ。それにどうしてぼく、ここにいるんだろう?
よしきり まよってきたのさ。まよってこころがあるいてきちまったのさ。かか、ひゅひゅひゅ、かかかか、ひゅひゅひゅひゅひゅ…。
ぼく ううん、あれ、なんかへんだぞう…。

ぼく、ふらふらして倒れた。
遠く…、キーンコーンカーンコーン、と学校のチャイム。
教室。先生が話している。

先生 えー、というわけで、今年はひでりです。ひでりってなんだか知ってますか。ぼくちゃん。
ぼく ええー…?(ぐずぐず)
先生 じゃ、秀くん。
秀 ハイ。天気がよくて、雨がふらないこと?
先生 そうです。雨がふらないとどうなるの? ぼくちゃん。
ぼく ええー…?(ぐずぐず)
先生 (タメイキして)じゃあ、秀くん。
秀 ハイ。あつくて、のどがかわく?
先生 そう。あついとだれでも、水がのみたくなりますね。でも、水道の水もはじめは山や野原にふった雨です。 だからひでりになると、地面の下にたまった水がだんだん足りなくなって、水道の水もちょっとしか出なくなってしまいます。
秀 そしたら、水、のめないじゃない。
先生 そう。でも人は水をのまなかったら、生きられません。だからかわりに、おせんたくやお風呂の水をへらさなくちゃなりません。
秀 ああ、そうか。
先生 ですから今年の夏、うちの学校はプールを中止することにしました。
ぼく えっ。(思わず、立った)
先生 どうしたの、ぼくちゃん。
ぼく プール、入りたい!
先生 あら、おおきな声。だめよ、きいてたでしょ?
ぼく でも、入りたいもん。
先生 (笑って)困ったわね。
秀 ぼくちゃん、そんなこというけど、泳げないじゃない。
ぼく ゲンゴローがいるもん。
先生・秀 え?
ぼく ミズカマと、タイコウチもいる。
先生・秀 ええ?
先生 (秀に)ミズカマって、なんのこと?
秀 虫のことです。
先生 ぼくちゃんは、プールで虫とりするの?
ぼく うん。
先生 まあまあ、まーあ!
秀 ばっかだなあ。虫なんか川にだっていっぱいいるよ。
ぼく あ、そうか。でもプールがいいんだよなあ…。
秀 じゃ、今日、学校ひけたら川、いこうか。
ぼく (喜んで)うん。
先生 あぶないところへいっちゃだめよ。それから、ひとりでいかないでね。
ぼく・秀 はーい。

先生と秀、消える。

ぼく (ひとりで)だけど放課後になると、秀ちゃんはそんなことけろっと忘れて、ほかの子と帰っちゃったんだ。なあんだつまんない。ぼくは、なんとなくぼんやり、うちに帰ろうとした。
みそ えーん、えーん。
ぼく あれ、あの子はとなりのみそちゃんだ。みそちゃん、どうしたのよ。
みそ 靴かたっぽ、どぶに流しちゃった。
ぼく え、どれどれ。ああ、どぶ板のしたに入っちゃったのかあ。とれないよ、これは。トンネル、ずーっと続いてるんだもん。
みそ えーん、えーん。
ぼく しょうがないなあ、おぶっていってあげる。のっかりなよ、ほら。
みそ (おぶさって)靴はどこにいったの?
ぼく 川だよ。
みそ 川、遠い?
ぼく ぼくなら遠くない。とりにいこうか。
みそ うん!
ぼく あ、でもはいていくものがないのか…。
みそ うちにサンダル、ある。
ぼく よおし、じゃいこう。急ぐぞ。わっせ、わっせ。わっせ、わっせ。

走って去る。秀、ひとり来る。

秀 忘れてた。ぼくちゃん、怒ってるかな。あれ、いない。…まあ、いいか。しょうがないもんな。(去る)

すすきを分けて、ぼくとみそ、川原にきた。大きなたも網を持っている。

みそ お兄ちゃん、あみ、なんにするの?
ぼく 決まってら。すくうんだよ、これで。
みそ 靴を?
ぼく 靴とか、みいんな。
みそ みいんな?
ぼく そう、みいんな。
みそ へええ、すごいんだ。
ぼく うん、すごいんだ。
みそ あいたっ。
ぼく どうしたの。
みそ これ、ススキ、痛いよ。
ぼく サンダルだから、切り株があぶないんだね。ゆっくりいこう。
のいばら ざわざわざわざわ。
みそ お兄ちゃん! なんか、いる。
ぼく (耳澄まして)いないよ、なあんにも。
みそ そう?
のいばら さわさわさわさわ。
みそ ねえ、なんだかくもってきたよ。
ぼく (藪をすかして見て)あっちかな、川は。

風が吹く。

のいばら おまえはだれだい。
ぼく・みそ うひゃーっ。
ぼく だ、だれ?
のいばら だあれもいない藪かげで、白いものがちらっとうごけばそれが私。私となかよくしなけりゃあ、この川原には入れないのさ。
ぼく 白いもの…。分かった、のばら?
のいばら さささささ。ほほほ、当たりだ。
ぼく じゃ、通ってもいい?
のいばら まあね。だけど、ぜひにとはいわないねえ。帰って、町にいた方がいいんじゃないのかい。
ぼく 靴をなくしたんだ。それに虫とりにきたんだ。
のいばら どうしてもっていうんなら、無理には止めないけどね。気をつけてお行き。
ぼく うん、気をつけるよ。(みそに)見た、今の?
みそ ウン。こわかった。
ぼく 大丈夫。あれっ。

景色、開ける。

みそ ああ、川だ。川だね。
ぼく うん…。でも、これはあんまり広すぎるなあ。あみ、とどかないや。ね、みそちゃん。ちょっと待ってて、あっち見てくるから。これ持ってて。(網わたして、去る)
みそ あーあ、いっちゃった。(川の方みて)あ、あれ、あすこ流れてるの、おみその靴じゃない…?

どんてん坊、ヌッと現れる。

どんてん坊 ヌッ。
みそ あ、お坊さん。あの靴、とって。
どんてん坊 …。(ナマズ髭をひねっている)
みそ あああ、流れていっちゃう。
どんてん坊 (突然、噛みつくように)帰れ。
みそ (驚いて)えっ?
どんてん坊 とって食うぞ。
みそ え…?
どんてん坊 帰らぬか? されば、とって食う。

どんてん坊、みそをさっと抱えて、ザンブと水に入る。ふたり消える。
ぼく、戻ってくる。

ぼく やっぱり、あっちの方があやしいよ。土管から水、流れだしてるからさ。…あれ? みそちゃーん。(網、拾って)変だな、帰ったのかな。
のいばら さわさわさわさわさわ。
よしきり ひゅひゅひゅひゅひゅ。
ぼく ああ、雲が…、光ってる。

ぼんやりする。恐ろしいようなうす曇り。

ぼく (ふと)あれ、なんかいるぞ…。あっ、ざりがにだ。しめた。でも、網じゃ逃げちゃうなあ。よし、素手で。そーっと、ちゃぽ、と。(水に入る)気がつくなよ、ようし、ようし…それっ。(大きなざりがにが獲れる)やった! えーと、入れものがないから…網にしまってと。あ、まだいるじゃない。ちょっと黒いぞ。ようし…それっ。ハハ、また獲れた。そうか、ひでりだから水が少ないんだな。…あ、あっちのは、うわあすごくでかくてまっ赤だ。あれ、気がつかれたかな。そろーり…せえの、ていやっ。(転ぶ)あああ、逃げられた! こんにゃろう、今度こそ…。

しばらく後。あみ一杯のざりがにが獲れた。

ぼく うはは。やったやった。やあ、こおんなにいるんだなあ。ひでりもいいもんだなあ! さあてこれ、どうしようか。うちに持って帰っても母さんに「放してきなさい」っていわれるに決まってるし…。あ、そうだ! いいこと考えた。(去る)

下校のチャイム。夕方のひかり。先生、さようなら、バイバーイ、等の声。

先生 はい、さようなら。気をつけてね。寄り道しないのよ、もう夕方だから。あら、秀くん。ぼくちゃんは?
秀 遊ばなかったんです。
先生 じゃあ、ひとりで川に行ったのかしら。
秀 そうじゃないかな。じゃ、さよなら。
先生 気をつけてね。…しょうがないわねえ、ぼくちゃんたら。

ふたり去ると、こっそりぼく、出てくる。重そうに網を引きずっている。

ぼく だあれもいない、学校。そうしてぼくは忍びこむ…学校のプールに忍びこむ、と。よっこらしょ、ふう。今年はプールはありません、か。しめしめ。そんならつくるぞ、ざりがに牧場!(獲物を水に放す)おほ、泳いでる泳いでる。水もいっぱいあるし、タマゴ生んだらふえるだろうなあ。すごいぞ。来年の今ごろは、五百匹くらいになってるかな、ハハハ…!

その空想のざりがにたちが大勢で、赤とんぼのように背景のそらを通りすぎる…。
暗転


第二場   九歳

ぼく やがて秋になって、冬になった。冬のプールはひっそりとして、落ち葉が沈んでいて、ざりがにはどこにも見えなかった。それから春になって、ぼくは四年生になった。みそちゃんは、あの日、先にうちに帰っていた。靴は見つからなかったのでごめんとあやまったら、いいのといってくれたっけ。だけど次の日からみそちゃんは熱を出して、一週間くらいで死んじゃった。破傷風っていうこわい病気で、かかると大人でも助からないんだって。

ミンミンゼミの声。教室。

先生 昨日の夕立、みんな、どうしてた? すごかったわねえ。土手の一本松に、カミナリ落ちたのよ。
ぼく うちなんか、停電になったもん!
秀 テレビで洪水のニュースやってた。
ぼく うちなんかすごいよ、雨もりするもん。
秀 へええ!
ぼく たらいで受けるの。夜じゅう、カーンカーンって音するんだぞ。
秀 ふーん、いいなあ!
先生 (ニコニコして)ぼくちゃん、このところ活発になったわね。
ぼく え?
先生 ううん、何でもないわ。…さて、去年はお天気がよすぎて水不足だったので、プールを見合わせました。ことしは梅雨にちゃんと雨がふったし、昨日は梅雨あけのカミナリ様も鳴ったから、お水がたっぷりです。そこで、来週はプール開きをします。
ぼく・秀 やったあ!
先生 水着、準備しておいてね。
ぼく・秀 はーい!
先生 ぼくちゃんは今年も虫とり?
ぼく (ひとり)あ、まずい…。
先生 え?
ぼく なんでもない。こっちのはなし。(ひとり)どうしよう、見つかっちゃうなあ、ざりがに牧場。
秀 よし、さっそく帰って水着、出しとこうっと。

秀、去る。別の声。

声 先生、先生!
先生 はあい。どうしたんですか用務員さん、そんなにあわてて。
用務員 (現れて)いやはや、どうもこうもねえです、まあ来て、見てやってくだせえ。
先生 見るって何を?
用務員 何ってプールの中でさあ。
ぼく どきっ。
先生 プールがどうかしたんですか?
用務員 いえね、来週から泳ぐってんで、ちょいと掃除でもしとこうかと思って、水を抜いてたんでさあ。デッキブラシかけとけば、ひと夏じゅう気持ちいいですからね。そしたら…、
先生 そしたら?
用務員 ざりがにでさ。
ぼく ぎくっ。(ひとり)ああ、早めにつかまえとけばよかった…。
先生 ざ・り・が・に?
用務員 ええ、ざりがにでがす! それも十匹や二十匹じゃねえ。うじゃうじゃです。
先生 うじゃうじゃ。
ぼく (ひとり驚いて)うじゃうじゃ!
用務員 んでがす! まったくありゃあ、何千匹いるんだか、見当もつかねえ。
先生 まあ、まあまあ!
ぼく (ひとりうっとりして)…何千匹! そうかあ、やっぱりなあ!
用務員 あんなのは、あっしも見たことねえですよ。とにかくプールの底いちめんに、ゾワーッてくれえ、いやがるんでさ。それが全部、死んでるんです。

間。

先生・ぼく え…?
用務員 ですからね、プールいっぱいのざりがにの死骸があるって、こう申し上げてるんでさ。
ぼく (ひとり)…なんだってえ?
先生 …何てことでしょう! だって、どういうことですか? どうしてざりがにがプールにいるんです?
用務員 あっしに訊かないでください。さしずめどっかのいたずら坊主が、ひと騒ぎやらかしたんでがしょう。まったくねえ、ふん捕まえて、とっちめてやりてえですよ! とにかく来てください。このまんまじゃあとっても、プール開きの段じゃねえです。
先生 はいはいはいはい。

ふたり、去る。やがて遠くで、「まーあ、まあまあまあ!」と先生の声。

ぼく (ひとり)死んでた? そんなバカなことってあるだろうか。だって、どうして死ななきゃならないんだろう…?

恐ろしいようなうす曇り。

ぼく ああ、雲が…、光ってる。

いつかぼく、寝巻き姿。

よしきり ひゅひゅひゅひゅひゅ。
のいばら さわさわさわさわさわ。
ぼく 教えて。何が間違っていたの?
よしきり 別に…、
のいばら 何も…、
ぼく 間違ってなかったの?
よしきり 間違ってたさ…、
のいばら 殺したんだもの、間違ってたさ…、
ぼく どうすればよかったの?
よしきり さあねえ…、
のいばら 知らないねえ…、
ぼく 友達だろ、助けてよ。
よしきり 助けるとも…、
のいばら 助けるさ…、
よしきり いつかね…、
のいばら いつか…、
ぼく いつか?
よしきり ひゅひゅひゅ…、
のいばら さささささ…、

ふたり、消える。

ぼく そして、次の朝には臨時の朝礼があった…。

校長先生が、マイクにしゃべっている。

校長 昨日、この学校のプールで何があったか知っている人がいますか? いない。では、お話ししましょう。プール掃除をしていたら、水の底から沢山の生き物の死骸が出てきたのです。エビガニでした。去年の夏から増えに増えて、プールいっぱいに増えてしまったのですね。食べ物がないから兄弟どうし親子どうし、とも食いをして生きのびようとしたのですね。それなのに冬、冬眠するためのあたたかい泥もなかったために、凍えて死んでしまったのですね。なんてかわいそうなんでしょう。(しばし沈黙)でも、だれかがわざと入れたのでなければ、プールにエビガニがいるはずはありません。もし、みなさんの中にやった人がいたら、手を挙げてごらん。怒らないから手を挙げて。…ふむ、なるほど、だれもいない。これは実に不思議ですね。(怒って)校長先生は、何よりも、命を粗末にすることが嫌いです。よろしい。今でなくともいいですから、やった人は名のりでてください。誰がやったか分かるまで、今年もプールは中止にします。
生徒たち ええー?
校長 何ですか? 先生たちは昨日、暗くなるまで死骸の片づけをしたのですよ。長靴をはいて、スコップですくってね。ひと晩たった今でもまだ、体がくさいのです。生き物をむやみに殺すのは、とてもいけないことなのです!
ぼく (ひとり)そうじゃないの、殺そうなんてしてないよ。だって、するはずないじゃないの、そんなこと。
校長 おや。(と、ぼくを見とがめ)サトウ先生、あの子は…?
先生 ぼくちゃん、顔色が悪いわよ…。
ぼく (ひとり)違う、違う、わざとじゃないの…!

放課後、職員室。カラス、鳴く。

先生 もう、みんなうちに帰るよ。いいかげんにして、謝っちゃいなさいよ。
ぼく (首をふる)
先生 いくら黙っててもね、先生、みんなちゃあんと分かってるんだから。
ぼく (うなだれる)
先生 わざとじゃないんでしょ? 広いところへ放してやったつもりだったのよね。結果が悪かっただけなのよね? 分かるなあ、その気持ち。でも、ここでちゃんと「僕がやりました」っていっておかないと、もっと悪くなるよ。みんな、ぼくちゃんを嘘つきだと思っちゃうわよ。
ぼく (キッと見上げるが、またうなだれる)
先生 ぼくちゃんがわざとざりがにをいっぱい殺して、その上、自分がやったんじゃないっていいはってるって、みんなに思われてもいいの?
ぼく (うつむく)
先生 (タメイキして)…先生、ぼくちゃんはもっと素直ないい子だと思ったんだけどなあ。そんならいいわ、いいたくなるまでそこにおいでなさい。(去る)
ぼく (ひとり)悪いことしたら…怒られる…。悪いことした相手に怒られる…。それは当たり前…。だからばくはざりがにに怒られるはず…。でもざりがにはもう死んじゃったから、かわりに先生に怒られる…。でも、先生はざりがにのかわりになるかな…? 先生とざりがにはどこか似てるか…? 僕とざりがにの方が、なんだか似てるかもなあ…。

用務員さんが入ってくる。

用務員 残されか。だいぶしょぼくれてんなあ。
ぼく …。
用務員 日が暮れるなあ。
ぼく …。
用務員 (しばらくして)もういいよ、帰(ケエ)んな。
ぼく …え?
用務員 いつまでこうしてたって仕方がねえ。いいから帰(ケエ)れ。
ぼく でも、ここにいろって先生が…。
用務員 あやまっといてやるから、早くお帰りっていってんだ。
ぼく (がた、と立つ)あ、あの…、
用務員 さっさと行けよ。戻ってきちゃうぞ。
ぼく うん。(慌てて出ていく)
用務員 もう悪さすんじゃねえぞ!…へへ、行っちまった。

夕焼け。

ぼく ありがとうのひとことが、どうしても出なかった。赤いような青いような夕焼けが、そらいっぱいだった。…それからどのくらい経ってからだったろう、もしかするとあれも夢だったのか…、ぼくはまた、あのススキの川原に立っていた。川はゆらゆら流れていた。夕焼けで川面はぎらぎらに燃えていた。その遠くのみなもに、ふと、死んだ隣のみそちゃんが立った。小さな田舟にのって、ゆっくり川を下っていった。

遠くに、そのおみそが見える。

みそ (手をふり)お兄ちゃあーん。
ぼく おおーい。どこに行くのー?
みそ お兄ちゃあーん。
ぼく また、会うねーえ?
みそ お兄ちゃあーん。先にいってるねえー…。
ぼく ああ…。

ぼく、見おくる。風景ゆっくり暮れて…











上演記録

みやしろ演劇パーティ/二〇〇六年七月三〇日/宮代町郷土資料館旧加藤家住宅/演出・高野竜/出演・ゆうた、れき、はるか、ひなこ、アヤ、アヤカ、ナツキ、ユーナ/記録・志村佳奈子







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