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2015年01月26日00:13

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網戸・雨戸・青春

早いもので、「絵を描く=お金を稼ぐ」ようになって30年になる。
(在学中から稼いでいた)
最初は消しゴムかけなどやっていたが、日本画専攻だったありがたさ、公園の木立やちょっとした小道具、定規を使う家具や建物、車や飛行機、群衆(モブ)シーンなど、みるみる描けるものが増えていった。
漫画の線というのは、学校で習う美術の線でも、算数の線でも家庭科の線でもだめで、鉄のペン先に墨汁や証券用インクをつけて、ときにはぐいっと力をかけて、時にはわざと力を抜いて、時にはグッと力を入れたところから白く引き抜くように、描く。

日本の、現代劇だと、一戸建て、アパート、団地やマンションと高層化して行くが、これも不思議なことに、3階建てマンションの2階だと炊飯ジャーが出てくるが。38階建てマンションだと炊飯ジャーも子供部屋も出てこない。
読者がもとめる「らしさ」というのは不思議なものである。
時代劇で
「長屋=貧乏人」のように
「38階建てのマンション=大金持ち」なんである。
実際は38階建ての4階部分にふつうの、炊飯器も仏壇もあるお家があったりするのだが、漫画で描くと
「38階建て=最上階の大金持ち=炊飯器ない」になってしまう。

30年前必ず一戸建ての家・アパートに描いたのは「雨戸」だった。
そして、豪邸、高層マンションを除き、夏にはかならず「網戸」を描いた。
夏のシーンを描く、となると、5〜6月からである。(カラーは入稿が早い)
ハナシの始まりに、彩りもデザインもよいので

(風鈴の音・チリーン♪)

「すいかの切ったの」
が座卓か縁側にあって、
「ーなんだってぇっ!?」
から物語が始まる。

橋田壽賀子センセイには「日本イントロ大賞!」を差し上げたいくらいだ。

これが向田邦子になると、最初踏み台の上に背伸びする薄い白足袋、すーっとカメラがあがっていくと加藤治子が着物姿で、風鈴をぶら下げようとしている。そこへ通りかかる来る樹木希林。

…となる。

どちらが良いかは好みの問題だが、萩尾望都先生をもってして
「『リーン』と描いてあったら電話です。
『チチチ・チュン・チュン』と描いてあったら朝です。
不思議ですが日本の少女漫画のお約束です。」
と言わしめているあたり、日本の少女漫画描きは一度古典を勉強しといた方がいいぞ。

変ったのは「主人公」、大人と子供の端境期にある不安定で夢に満ちた存在で、
「子供部屋・勉強中」となると、机の上にはパソコンではなく、開いたノートや右側に鉛筆・シャープペン」など、お約束があった。が、いまはもう通用しない。

網戸よりも、雨戸よりも、移ろいゆくのは「『青春』、この不確かなるもの」の様式である。

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