今回は細く、補足ね
＞話を元に戻しますと、必然的に鎌倉期の日本刀は突くか、水平に薙ぎ払う…この2パターンしかないことになります。馬上で行いますのでさもありなん…と言ったところでしょうか。だから鎌倉期の鎧には右手にしか籠手が必要なかったんですね。一騎駆ではお互い右側を交差するわけですから。
ここですよ。右手にしか籠手が無いと書いてありますでしょ。逆ですよ逆。左にしか無かったんです（後期になると両方付いている場合がある）。
しかし、一体何ででしょうか？
初期の大鎧の籠手を見ますと、守っている面積が小さいし装甲は薄いしで、とてもとても弓矢から守れるとは思えません。
ん？ 何で弓矢限定なのか？
弓手である左手で撃とうとすれば必然的に、騎馬武者は敵に対し左を前面に向けるからですよ。なので肩に付いている大きな小札が盾代わりとなった訳です。これは中々に便利で、体面積の一番少ない体勢の主要な部分をほとんど守ってくれつつ、手を必要としないので、体の転換だけで防御が可能という便利な盾でした（下半身防御は除く）。因みにこの技術、遥かな未来にも採用され、宇宙世紀0079年にザク�兇�ロールアウトされた際、慈恩軍によって制式採用されています。
さて左手の籠手は何を守っているのかという問題ですが、弓矢のダイレクトな攻撃にはまるで無力だというのは間違い様の無い事実です。では剣を左手に持っていたのか？
いえ、馬術に関して詳しくはありませんが確かに剣を右手に持っている絵巻はあれども左手に剣を持っているシーンは皆無です。右手に剣を持つ以上、一騎駆には右側が相対することが間違い様の無い事実です。だって右手に持ってて左側同士で突撃したら、体の前で手が交差するのでお互いに致命傷を与える事が出来ないでしょう。
すると籠手は剣戟から身を守るためでも無かった訳ですね、では乱戦から身を守ったのでしょうか？
まあこれも書き出すと長くなるので、結果だけ書けば違います。そういう乱戦が発達するのは鎌倉期以降で、それに対し大鎧は平安期からあった訳ですから。
となると、もう考えられるのは…弓矢の射撃で伏射から身を守るという事なのでしょうか。伏射…鉄砲では跳弾といいますか。要は射った側も防御する側も予期しない跳ね返りの矢があり、それ防ぐために籠手があった…という考察です。
今考えうる中ではこれが一番まともな説に思えますが、詳しくはこれからの研究を俟ちましょう。…若しくはもう確固たる説があるのかもしれませんので、あーしが日本に帰って資料を探してくるのを待ちましょう。
そもそも不思議でしょうがないのは、古代から大鎧の時代を経て、足に関する防御がなされていないことです（小脛を除く）。致命傷に至らないのは分かりますが、一種足は攻撃してはいけないとでもいう不問律でもあったんですかね？
そして脛だけ守るというこの不思議さもこの後ずっと継承されていきますが、これに関する疑問も誰も考察していない気がしますね。徒歩ならまだしも、馬上にあって足を守らないというのは致命的なんじゃないでしょうか？
「将を射止めんと欲すれば、先ず馬を射止めよ」ていうことわざがありますが、馬は後々高く売れます。だったら馬を攻撃するより、将の足を射止めるのが普通なんじゃないですかね？ そしてこれを読む限りでは、馬と足の違いはあれども、武者の下半身を狙うのは兵道の基本であると武士達に認識されているという事です。
とにかく不思議です。誰かこれに対する明確な答えを用意して欲しいもんです。
ともかく、一種牧歌的であった戦場に綺羅星のごとく現れたのが源義経でした。しかし彼は一過性で消えていきます。もし彼が長く生きて戦乱が続いていたら、日本の戦術は大きな変換点を迎えていたのかもしれません。しかし、そうはなりませんでした。
その後100年近くノホホンとした時代が続きますが（一説には冷害続きで戦争どころではなかったという説もある）、そのあと否応なく日本は世界とコミットすることになります。そう、元寇です。
元寇後の吹き返しを中心とした兜などの変遷が、どうパラダイムシフトしていくのか、第2章では取り上げていきたいと思います。
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