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2010年03月19日13:37

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「マツダランプ」 の由来。

  




電球 東芝が白熱電球の生産を中止したそうだ。

   …………………………

電球 アッシは知らなかったが、昔の東芝の白熱電球は、

   マツダランプ

と言っていたそうだ。

   …………………………

電球 この 「マツダランプ」 の名は 1911年 (明治44年) にさかのぼるらしい。

電球 東芝の創業者のひとり (後述) である 「藤岡市助」 (ふじおかいちすけ) は日本の電気・電球の普及に尽力した人物で、1886年 (明治19年) には、日本初の電力会社 「東京電燈株式会社」 の創立に加わっている。

電球 1890年 (明治23年)、電球を製造する合資会社 「白熱舎」 を創立。1896年 (明治29年) には、「東京白熱電燈球製造株式会社」 に社名変更。さらに、1899年 (明治32年) には、「東京電気株式会社」。

電球 1911年 (明治44年)、前年より、エジソンのゼネラル・エレクトリック社からタングステン・フィラメントの技術を導入していた同社は、日本産の真竹をフィラメントに使用していたカーボン電球にかわる 「タングステン電球」 の生産に成功した。
電球 その名が 「マツダランプ」。

電球 「東京電気」 の三浦順一が、その後、タングステン電球の改良に成功し、その電球は、米国では、

   Edison Mazda Lamp 「エディソン・マズダ・ランプ」

として販売された。

   …………………………

電球 ちなみに、であるが、「からくり人形」 の発明で知られる “からくり儀右衛門” こと 「田中久重」 (ひさしげ) は、1875年 (明治8年) の銀座に、「田中製造所」 を開業。
電球 養子の田中大吉 (二代目久重) は、1882年 (明治15年)、芝浦に田中製造所を移転する。1893年 (明治26年)、これを 「芝浦製作所」 と改名。

電球 時代はずっと下る。
電球 世界中にキナ臭い雰囲気が垂れ込める昭和14年、ノモンハン事件 (ハルハ川会戦) が起こった直後に、

   重電メーカーの 「芝浦製作所」 と
   弱電メーカーの 「東京電気」 が合併して、
   「東京芝浦電気」 が誕生

する。これが 「東芝」 の由来。
電球 略称である 「東芝」 が正式名称 「株式会社東芝」 になるのは1984年 (昭和59年)。

電球 「マツダランプ」 の商標は 1962年 (昭和37年) に廃止され、「東芝ランプ」。

   …………………………

電球 で、この MAZDA 「マツダ」 という商標だが、カタカナで 「マツダランプ」 と書かれていたこともあって、みな、一様に 「松田」 のことだと思っていたらしい。

電球 実は、広島に本社を置く自動車メーカー 「マツダ」 のほうも、創業者 松田重次郎 (じゅうじろう) の姓であるとともに、「マツダランプ」 の “マツダ” と同じものを “かけことば” にしているという。

電球 それは、古代ペルシャ人の宗教である 「ゾロアスター教」 の最高神 「アフラ・マズダー」 の名前である。
電球 現在のイランでは、イスラーム勢力の圧倒的な伸張により、ゾロアスター教の “火” は、ほぼ、消えてしまっている。現在のイランでは、ゾロアスター教に対する弾圧はおこなってはならないタテマエとなっているが、人口7千500万人になんなんとする大国家で、ゾロアスター教徒は、国の中心部のヤズドを中心に数万のみである、という。

電球 ゾロアスター教は、むしろ、インドなど海外へ移住した人々のあいだで受け継がれている。この宗教を国教としたサーサーン朝ペルシャがイスラーム帝国に滅ぼされると、ゾロアスター教は、差別・迫害を受けるようになる。
電球 こうした弾圧から、主として、東どなりのインドへ逃亡した人たちがいる。民族名を 「パールシー」 と名乗るが、これは “ペルシャ人” という名、そのものである。

電球 初期のパールシーは、イランと隣接するグジャラート州へ逃げ込んだ。しかし、もともと農民だったパールシーも、異国では土地を持たないため、その多くが、もっとも近い大都会である 「ムンバイ」 (旧名、ボンベイ) に移り住んで、商才を手に入れた。
電球 インドの財閥、ターターはパールシーだ。


電球 クイーンのフレディ・マーキュリーもパールシーである。彼のバイオグラフィを見ると、たいてい、「ザンジバル島生まれ」 ですませているが、そんなことではバイオグラフィにならない。
電球 彼の一家は、パールシーのインド人で、イギリスに役人として登用された父親の都合で、英領のザンジバルに出向させられていたのである。くわしいことは以前書いている。

   http://mixi.jp/view_diary.pl?id=297610272&owner_id=809109

   …………………………

電球 で、“マツダ” なのだが、これは、ドイツ語読みである。明治時代の知識人は、英語以外の外国語も学んでいたハズである。とりわけ、当時の知識人にあっては、

   『ツァラトゥストラかく語りき』 1885年 (明治18年)
     »Also sprach Zarathustra«
     [ ' アるゾー シュプ ' ラーは ツァラ ' トゥストラ ]

を通して、ゾロアスター教が知られたのかもしれない。さすれば、「アフラ・マズダー」 も、

   Ahura Mazda [ ' アフラ ' マツダ ]

として諒解されたかもしれない。

   …………………………

電球 自動車メーカーのマツダは、ながらく、社名を、

   東洋工業株式会社

と言った。だから、「広島東洋カープ」 なのであるね。社名を 「マツダ株式会社」 としたのは1984年 (昭和59年) のことにすぎない。
電球 ただ、社名を変える以前の 1975年から、ブランド名として 「マツダ」 “MAZDA” を使用していた。

電球 この 「マツダ」 の “MAZDA” も、創業者の 「松田」 に 「アフラ・マズダー」 がかかっているという。マツダ株式会社の公式ページにいわく、

   ――――――――――――――――――――
   社名「マツダ」は、西アジアでの人類文明発祥とともに誕生した神、
   アフラ・マズダー(Ahura Mazda)に由来する。
   この叡智・理性・調和の神アフラ・マズダーを、東西文明の源泉的シンボル
   かつ自動車文明の始原的シンボルとして捉え、また世界平和を希求し
   自動車産業の光明となることを願ってつけられた。
   それはまた、創業者の松田重次郎の姓にもちなんでいる。
   ――――――――――――――――――――

電球 雑学ライターの中には、「マツダ」 という単語が “ありふれた氏” であり、商標登録できないので “MAZDA” にした、という説をとなえるムキがある。確かに、商標法には次のようにある。

   ――――――――――――――――――――
   第三条  自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、
   次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

   四  ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する
      標章のみからなる商標
   ――――――――――――――――――――

電球 確かに、これに牴触するかもしれない。しかし、だとすると、HONDA、SUZUKI、TOYOTA はどうして可能だったのだろうか。

   ……………………………………………………

電球 アフラ・マズダーというのは、アヴェスター語である。このアヴェスター語というのが説明しづらい。

電球 アヴェスター語というのは、ゾロアスター教とともに存在してきた言語である。

電球 言うなれば、ユダヤ教のヘブライ語、イスラームの正則アラビア語、仏教のパーリ語・サンスクリット、ローマンカトリックや学術語としてのラテン語などと同様である。
電球 これらの言語は、“生きた話しコトバとしては存在しない” という状況にいたっても、なおかつ、その言語体によって成り立つ 「宗教」 や 「科学」 といった “威厳を持った文化” が存続しているために、いわば、延命を続けているわけだ。

電球 アヴェスター語というのは、ペルシャ語の一種であるが、古ペルシャ語とか、中世ペルシャ語などとは違う地方の言語であった。その故地は、現在のイラン東部とみなされている。インドと近い地方だ。そして、サンスクリットのもととなった、聖典ヴェーダの言語である、「ヴェーダ・サンスクリット」 に酷似している。

電球 アヴェスター語は、生きた言語としては、少なくとも、紀元3世紀には消滅した。

電球 アヴェスター語のおそるべきは、ここからで、ザラスシュトラ (ツァラトゥストラの本来の読み方) がアフラ・マズダーに語りかける 『ガーサー』 Gāθā と呼ばれる、アヴェスター語による最古の文書は、紀元前1000年にさかのぼる、とも言うのである。

電球 しかし、アヴェスター語が文字で書かれるようになったのは紀元後である。この言語を記す文字、アヴェスター文字がつくられたのは、サーサーン朝時代の4世紀である。ならば、なぜ、最古の文書が紀元前1000年にさかのぼる、などというのか、というと、それまで口承で伝えられてきたからだ、という。
電球 このアヴェスター文字で書かれたアヴェスター文書が、ヨーロッパ人に “発見” されたのは、古いことではない。18世紀なかごろのインドで、フランスの東洋学者 アンクティル・デュ・ペロン Anquetil Du Perron が発見したのだ。すなわち、パールシーが持ち出したアヴェスター文書なのである。

電球 もっとも、紀元前10世紀以上にもさかのぼる文書が、紀元3世紀まで伝わるというのもむずかしいハナシで、アケメネス朝ペルシャの宮廷図書館にはアヴェスター文書が存在したが、アレクサンドロスによる東征で灰燼に帰した、とも言う。

   …………………………

電球 いずれにしても、アヴェスター語というのは、古代ペルシャ帝国 (アケメネス朝) で公用語とされた古代ペルシャ語とは、親戚関係の言語であり、同じ地域で使われることがあったとしても、「用途のちがう別言語」 であった。

電球 アフラ・マズダーは、

   ahura mazdā

と転写される。アヴェスター文字はPCでは扱えない。

電球 ahura は印欧祖語の

   *ansu- 「神」

にさかのぼる。ギリシャ語やペルシャ語では、しばしば、 s が h となる。

電球 この語は、意外に日本人の目の前にある。

   Oscar 「オスカー」 (男子名)
     ← 古英語 Ōsgar ← ōs 「神」 + gār 「槍」
     ← ゲルマン祖語 *ansu-
     ※単独の語としては現代語に残っていない

   ásura- m.f.n. 霊的な、神の
     → ásuraḥ [ ' アスラふ ] m. 最高位の霊 → 悪霊 (転義)
        → 阿修羅 (アシュラ)
     → ásurāḥ [ ' アスラーふ ] m.pl. 戦士の部族の名前
     → ásurā [ ' アスラー ] f. 夜

     ← asu-
         → ásuḥ [ ' アスふ ] m. 息、命
         → asu [ ' アスゥ ] n. 悲しみ

電球 つまり、「オスカー像」 の “オス” と 「アシュラ」 の “アシュ” は同じものなのである。

電球 アヴェスター語では、

   ahū-, aŋhū- [ アフー、アンフー ] 「主人」
   ahura- [ アフラ ] m. 「神」

となった。世間一般では、ゾロアスター教の最高神を ahura mazdā だと言っているけれども、実は、こういう単語はない。これは、いわば語幹を並べただけである。つまり、サンスクリットの引用が、ほとんどの場合、誤って語幹の羅列であるように、この語も間違いである。

   ahura- 「神」 は a-語幹の男性名詞

である。よって、

   ahurō [ アフロー ] 「神は」 主格
   ahura [ アフラ ] 「神よ / 神によって」 呼格、具格
   ahurəm [ アフラム ] 「神を」 対格
   ahurāi [ アフラーイ ] 「神に」 与格
   ahurāt [ アフラート ] 「神から」 奪格
   ahurahe [ アフラヘ ] 「神の」 属格
      ※古アヴェスターでは ahurahiiā [ アフラヒイヤー ]

となる。「呼格 / 具格」 以外で ahura となることはない。主格ならば ahurō 「アフロー」 なのである。

   …………………………

電球 いっぽう、 mazdā というのは形容詞である。こちらは、現代語で日本人の知る単語にはなっていない。現代語に残るもので、日本人が目にしうるのは、次の2語くらいである。

   munter [ ' モンタァ ] 「生き生きした、快活な」。ドイツ語
   мудрый múdryj [ ' ムードルィ ] 「賢明な」。ロシア語

電球 とくに、ロシア語の мудрый は基本語である。

   *mendh- 「賢い、賢明なる」。印欧祖語

からの派生である。
電球 アヴェスター語の mazdā- は不規則変化をする。

   mazdå [ mazdɒ: ] [ マズドー ]
     「賢い(者は) / 賢い(者の)」 主格・属格
   mazdā [ mazda: ] [ マズダー ]
     「賢い(者よ)」 呼格
   mazdąm [ mazdãm ] [ マズダんム ]
     「賢い(者を)」 対格
   mazdāi [ mazda:i ] [ マズダーイ ]
     「賢い(者に)」 与格

電球 å は a とは異なる母音で、奥舌で、必ず長音である。現代ペルシャ語の ā と同じ音。

   米語の hot [ hɑt ] (唇を丸めない) に対する、
   英国語 hot [ hɒt ] に現れる “円唇母音”

である。 ą は鼻母音 [ ã ]

電球 アヴェスター語では、他の印欧語と同様、形容詞は名詞化する。なので、

   ahura mazdā “名詞+形容詞”

という組み合わせでなくともよいわけだ。すなわち、

   ahura- “名詞” 「神」
   mazdā- “名詞化した形容詞” 「賢き者」

である。

電球 ということで、 ahura mazdā という語句は存在しないので、こうなる。

   ahurō mazdå [ ahuro: mazdɒ: ]
     [ アフロー マズドー ] 「賢き神は」。主格
   ahura mazdā [ ahura mazda: ]
     [ アフラ マズダー ] 「賢き神よ」。呼格
   ahurahe mazdå [ ahurahe mazdɒ: ]
     [ アフラヘ マズドー ] 「賢き神の」。属格
   ahurəm mazdąm [ ahurəm mazdãm ]
     [ アフラム マズダんム ] 「賢き神を」。対格
   ahurāi mazdāi [ ahura:i mazda:i ]
     [ アフラーイ マズダーイ ] 「賢き神に」。与格

電球 偶然だが、世に言う ahura mazdā は 「賢き神よ!」 という呼格に一致する。これは、驚くほどのことではなくて、印欧語では、しばしば、呼格が語幹に一致するからにすぎない。

電球 つまり、

   「マツダ」 は、ゾロアスター教の mazda に由来する

というのは、こうした、中間のさまざまな事情をいっさい考慮に入れていないワケだ。まあ、それは置いておくとすれば、

   MAZDA = 賢い(者)、賢明なる (者)

となる。英語で言えば、 wise であり、ロシア語で言えば、まさに、 мудрый であり、単に 「賢い」 という形容詞にすぎない。そこに、

   何か “秘密めかした超自然的なもの”

を見出してはいけない。
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